2
どれもが毎回というわけではない。
ごく、たまの1回。
されど1回だ。
恥ずかしい話だが、私のほうは出逢ったときから最近まで妻に首ったけだったので、その1回が恐ろしく大きな出来事なのだ。
この悩みを相談してみた友人には「世間一般の夫婦とは、そういうものだよ」と笑われた。
だが、私は全く「ああ、そうなのか」と納得する気持ちにはならなかった。
妻が私から離れていってしまうような気がして、心が落ち着かなかった。
そのうちに妻のおかしな態度が2回、3回と増えていった。
私の悪い予感は当たった。
そして決定的な事件が起こった。
夜の生活においてだ。
私たち夫婦はある特殊な趣味、そう、性癖を持っており(このことについては詳しく語る必要はないだろう)、お互いの合意の上で、とても充実した「夜の営み」を続けていたのだが、その行為の最中に妻の反応が良くなかったのだ。
これに私は大きな衝撃を受けた。
彼女の私への愛情が冷めているのが、はっきりと証明されたのだ。
そして次に私が抱いたのは、妻に他の男が居るのではないかという疑いだった。
これは誰しもが1度は考えることだろう。
私は、自分が仕事で家を空ける時間の妻の行動が気になり、プロの探偵を雇うことにした。
そうして雇ったのが今、私の足元に横たわる大柄な男、中田だった。
中田はかなりの金額を経費として要求しただけあって、仕事が早かった。
依頼した2週間後に仕事先の近くの喫茶店で待ち合わせると、すでに妻の不貞の全容を掴んでいた。
「大原さん、非常に残念ですが」
中田は大げさに、悲しそうな顔をして言った。
「奥様はクロ。それも真っ黒でしたよ」