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暗闇  作者: もんじろう
19/23

19

 私は驚いた。


 ナイフは取り出していたが、小野の予想外の動きに反応できなかった。


 それでも何とか、ナイフの刃先だけは前に向け、小野を迎え撃とうとした。


 が、小野は、あっという間に私の横を通り過ぎ、ランタンのある場所へと走り去った。


 坑道に残された私は唖然とした。


 やられた。


 まんまと逃げられた。


 いや、落ち着け。


 小野は自ら行き止まりへと逃げ込んだ。


 妻の死体のある場所からは、どちらの通路に行っても出口はない。


 ナイフを持っている私が絶対的に有利だ。


 私は油断なく周囲に気を配りながら、ランタンのある場所まで戻った。


 小野は居なかった。


 これで、どちらかの坑道に逃げたことになる。


 私は中田と使ったほうではない、すなわち小野が入ってきた通路へと向かった。


 右手にナイフを構え、ライトで前方を照らしながら慎重に進む。


 不意を突かれないように気をつければ大丈夫だ。


 そう、大丈夫だ。


 どのくらい進んだろうか。

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