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「そ、そうですね…」
どもりながら小野が答えた。
「彼女は僕を『愛してる』と言ってくれました。僕の優しさが好きだって」
小野は私の質問には答えず、妻の話をし始めた。
「夫が嫌いだと言ってました。その…あれです…」
小野は言うのをためらっているようだった。
「あれとは?」
私は訊いた。
妻が私をどう思っていたかは気になる。
まあ、今さら知ったところで、どうにもなりはしないのだが。
「夫の趣味が…その…性癖が変わっていて…自分の身体を細いロープで縛らせて彼女に…鞭で叩いてくれと頼むそうです。あまりに真剣なので断れなかったと。身体の縛りかたを練習させられたりもするらしくて。それが本当に苦痛だと言ってました」
私の顔は怒りと羞恥で真っ赤になった。
やはり、妻は私を裏切っていた。
あれほど楽しいと言っていた2人の神聖な夜の営みを、心の中では嫌がっていたのだ。
それどころか秘め事の具体的な内容を浮気相手に話すとは。




