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暗闇  作者: もんじろう
14/23

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 当然の質問だ。


 私は答えに窮した。


 まさか「君の火遊びの相手の夫だ」と言うわけにもいかない。


 しかもこの場には、妻の絞殺死体があるのだ。


 私の素性を明かすのは抵抗があった。


「探偵の中田という者だ」


 気がつくと、私は嘘をついていた。


 真実を告げ、男が逆上し、もしも私を襲ってきたら今の疲労ぶりでは、ひとたまりもなく倒されてしまうだろう。


 とにかく、体力を回復する時間が欲しい。


「探偵?」と男。


「ああ、大原夫人の浮気調査の依頼を受けてね。彼女の後をつけて、この廃坑に」


 私は、たたみかけた。


 中田が実在しただけに、すらすらと嘘が出てくる。


「君は大原夫人の浮気相手だね?」


 私の質問に男はハッとなった。


 妙な表情をしている。


 しばらくして意を決したように、こう言った。


「そうです。僕は小野といいます」


「私は夫人に続いてここまで来たが…すでに彼女は殺されていた。それで犯人がまだ、その辺りに居るに違いないと少し奥を探索していたんだ。結局、誰も見つからず、戻ってきたところで君と出くわした」


「そうですか…」


 小野は落ち着かなげだった。


 両手の指を組んで、視線をあちこちに走らせる。


「このかたのことはともかく」


 小野が言った。


 愛する者を「このかた」とは…死んだとはいえ、何と冷たい態度か。


 小野の妻に対する愛は、その程度のものだったのだ。


「どうにかして、ここから出ないと。携帯も通じません」


 小野が続けた。


 確かに生き埋めは、ごめん被りたい。


 殺人の罪を逃れるうんぬん依然の問題だ。


 私は小野が調べたという入口を自分の目で確認しようと思い、私と中田が使った道と違う通路へと進もうとした。


「無駄です」


 小野が私の前に立ち塞がった。


 そこから動こうとしない。


 私は諦め、壁にもたれかかって座った。


 立っているのがつらくなってきたからだ。


「2つの入口が塞がっているなら、奥に行くしかない」


 小野が言った。


「やめろ!」


 私は大声を出した。


 小野がビクッと震えた。

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