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男と見つめ合い、どれほどの時間が過ぎただろう?
ひどく長く感じたが、実際は1、2秒だったのではないか?
突然、ものすごい轟音が響いた。
私と男は、お互いが出会った驚きも忘れ動揺した。
何かが崩れるような音が、私と中田が入ってきた入口の方向から聞こえた。
天井からパラパラと砂ぼこりが落ちてくる。
「まさか!?」
私は思わず、そう言った。
嫌な予感がする。
音が次第に収まってきた。
私は2人の死体も妻の浮気相手も忘れ、上着を放り出し、ライトをつけて入口への道を走った。
やはり、恐れていた事態が起こっていた。
入口の天井が崩れ、完全に通路が塞がっていたのだ。
これでは外には出られない。
長い年月で坑道の天井が老朽化していたのだろうか?
そして、ついに崩れ落ちた?
何と運が無いのか。
何もこのタイミングでなくても良いだろうに!!
うなだれた私は、とぼとぼとランタンの場所へと戻った。
妻の死体が私を出迎えた。
死んだ妻は大人しい。
浮気相手の男の姿が見えない。
そう思った途端に男が現れた。
私と中田が入ってきたのとは別の坑道からだ。
すなわち、男が入ってきた入口に通じる道ということになる。
男の顔にも私と同じ疲労の色があった。
と、いうことは…。
「こっちはダメでした」
私の心を読んだかのように、男が言った。
何てことだ。
私とこの男は、廃坑に閉じ込められたのだ。
「こっちも塞がっていた」
私の言葉に男は落胆した。
男は妻の遺体と私の両方に距離を取っている。
当然だが、私を警戒しているだろう。
「ところで」
男が口を開いた。
「あなたは誰ですか?」




