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1番、重要なことを忘れていたからだ。
重要なこととは何か?
それは私が2人の死体を誰にも見つからないよう、隠すことだ。
そして、その作業の間、細心の注意を払うことだ。
にもかかわらず、死体もそうだが、何より自身の存在も隠さなければならなかったはずの私は、疲労によって全てが大雑把になり、只々、妻の死体を早く運ぶという一事のみに心を奪われ、何も考えずランタンが照らす場所へと、ふうふうと汗を拭いながら何の警戒もせず、無防備に入ってしまったのだった。
これは致命的なミスと言えた。
気づいたときは、もう遅い。
妻の死体のそばにしゃがみこんでいる人物と私は、完全に目が合ってしまった。
男は美男子だった。
年齢は若く見える。
妻と同じような、散策に向いた服装をしている。
しまった。
妻の相手の男だ。
当然だ。
そもそも2人は、ここで逢うのが目的なのだから。
犯行を露見させないという私の望みは、いとも簡単に砕け散った。




