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普段から、もっと身体を鍛えておくのだった。
ネクタイを外し、上着を脱ぐ。
暑さが限界だった。
ワイシャツは半袖なので、かなり楽になったが上着を持っていては死体を運べない。
かといって、上着を暗闇の通路に置けば、後でどこにあるのか分からなくなってしまう。
「くそっ!!」
私は思わず悪態をついた。
何故、こんな格好で来てしまったのか?
妻を殺す準備は万全だったのに、殺した後のことを軽く見ていた。
もっと動きやすい服装に着替えておくべきだった。
ああ。
そして、こんなことを考えている時間すらないのだ。
中田の死体はひとまずは、ここに放置して妻のほうへ戻らねば。
死体を移動させないと、浮気相手の男に気づかれてしまう。
ついでにランタンのあった場所の隅にでも上着を隠せば、後で回収するのは簡単だろう。
私は疲れた身体に鞭打って、妻の死体のある場所へと戻った。
私の疲労は相当なものだった。
何故、そう言えるのか?




