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慣れもあってか、中田のときよりも簡単だった。
妻は地獄に堕ちた。
当然の報いだ。
さて、嵐のような激情が去って、少し落ち着いてくると、やはりバカなことをしたなという気持ちが頭をもたげてきた。
妻を殺したことではない。
中田を殺したことだ。
ここに放置するわけにもいかない。
しかも時間が無い。
妻の不貞の相手が、ここにやって来るからだ。
2人の死体を廃坑内の誰も来ない奥へと移動するのが理想だが。
とにかく早く始めなければ。
私はまず、中田の死体へと取りかかった。
そう、こうして私は人を運ぶのが、こんなにも大変であると思い知ったのだ。
中田の死体の両脚を掴み(やはり背中に背負うというのは抵抗があった)、妻の死体のある場所を通り、奥の通路へと運び出したのだが、これが想像以上の重労働だった。
大柄な中田は、とにかく重い。
数m動かすだけで私はヘトヘトになった。
2人を殺したときの気力と体力は、どこに消えてしまったのか?




