84 早く拾って!
「な…っ!?なんだ!ここはっ?」
男達が狼狽えて叫ぶ…うるさい。
「どこって、森よ?わかるでしょ?ふふ。あんまり騒ぐと魔物が来るわよ。」
「何でだっ!俺らはさっきまで街の中にいたはず…?」
「…うわぁぁぁー!」
あ…そっちは…ってか、周り全部トレントだよ?動かない方が良いと思うけど。叫びながら、走って逃げた奴がいるみたい。
「もう!アンタ達は大人しくジッとしててねっ!」
そう、座り込んでフリーズしている残りの奴に言い放ち、トレントに攻撃されそうになっている奴の近くに転移する。
「多重結界。ファイアーアロー沢山。」
不本意ではあるけれど、その男を結界で守り、そこら一帯のトレント達を一掃した。穴だらけのスプラッタは見たくないんですよ。
あっ…ラッキー!葉っぱ、回収できるわ。
「ちょっと!アンタ腰抜かしてないで、アイテム拾って!早く!」
「は?…はいっ!」
「葉っぱは私に渡して!その他はアンタにあげるわ。だから、さっさと拾うのよっ。あ、あんまり奥まで行かないように。死にたくなければね!」
適当な麻袋を渡すと、男は言われた通り、慌ててアイテムを拾い、葉っぱは私に渡し始めた。うん。よしよし。
残りの奴らがいる場所に戻って、同じ様に麻袋を渡し、アイテムを拾うように言いつけた。皆、一様に顔を蒼ざめさせ、慌てて走って拾いに行く。
『ん…フィア?どうしたの?もりのにおいする…』
「あら、ハク。起きた?ごめんね。うるさかったから、起きちゃったのね。」
『ううん。まりょくまんたん。へんなやつらやっつけてきていい?』
「ええ、いいわよ。でも、すぐに邸に帰るから、少しだけね。いい?」
『うん。わかった。』
そう言ってハクは私の腕から降りて、元の姿?デカくなった。
「ひいいっ!化け物っ!」
いや…それは失礼じゃない?さっきアンタ達が欲しがってた超絶ラブリーな白いフワフワでしょうが。
確かにデカくなったら、ちょっとだけ強そうには見えるけどね。
「あれ?フィアちゃんまた来たの?それにこの冒険者らしき人達は?」
話しかけられてそちらを見ると、ギルドマスターのソレストさんだった。どうやら森の入り口方面からやって来たみたい。ギルドマスターが出掛けた先は魔の森で、今到着したのね。私は転移で一瞬だから、先に着いちゃった。
「はい。ソレストさん、この人達は…うーん、簡単に言うと強盗ですね。私の従魔のハクを奪おうとしたんですよ。だから、ちょっとお仕置きしようと思って、暴れても迷惑にならない場所に連れて来たんです。」
「ふむ。それは穏やかじゃないね。でも、あんな恐ろしい魔物を欲しがるなんて、正気か?俺だったら金になるって言われても手は出さないな。」
「えぇー?!あんなに超絶可愛い白いフワフワモフモフですよ?欲しくなるのは当然ですよ?」
私は見えないけど、後ろからドカーッとか、ドガガガッーっとか派手な音が聞こえる(多分ハクの攻撃音)。ソレストさんはそれを見ながらお話ししている。
まあ、とにかく後はギルドマスターであるソレストさんに任せよう。それにしてもごめんなさい。また、討伐の邪魔をしてしまったわ。勿論全員ギルドに送ってから、またこちらまでお送りさせて頂きます。
あ。ハンバーガーも付けちゃいますよ…ふふ。




