74 従魔
「グルルルッ!」
ハクが威嚇する。
『フィアをはなせ!』
私にはそう聞こえる。
「ハク!大丈夫よ。この人は私を迷子だと思って、保護してくれただけなのよ。何もしちゃダメよ?」
『ほんと?フィア、だいじょうぶ?』
「うんうん。大丈夫だから、大人しく待っててね!」
「驚いたな。俺にはこれがフェンリルに見えるんだが…君の従魔なのか?」
「お友達です。可愛いんです。ハクって名前です。だから、攻撃しないで下さいね。」
「可愛いって…凶暴そうに見えるんだが。」
あ。ちょっとデカいからかもね?
「ハク。ちっちゃくなってくれる?」
そうお願いすると、すぐに可愛い子犬になった。あぁ…可愛い〜!モフモフしたい〜!金の瞳がまん丸でクリクリしてて、ちょっとキラキラウルウルしててて綺麗〜!デカくなると、鋭くなっちゃうからね。
「ああ。確かにこの状態ならば、可愛いと言えなくもない。だが、従魔でないとなれば、討伐対象になるぞ?いいのか?」
え。あ。そうね。これから冒険者がこの森に頻繁に来るようになれば、ハクは討伐対象として狙われてしまうかもしれない。そんなに簡単にやられる子ではないだろうけど、冒険者を傷つけたり、殺したりしてしまったらまずい。
「もし従魔になれば、私が側に居なくても討伐はされなくて済みますか?」
「うーん。基本的に従魔は主人と一緒にいるものだけど、冒険者ギルドで登録して従魔の印を貰って着ければ、討伐の心配は少しだけど減るよ。絶対ではないけどね。冒険者達にも色々なのがいるからね。」
そうか…一緒に居ないと安全とは言えないよね。
「ハク、この森を出て、私と一緒に来ない?この森はハクがずっと守ってくれていたけど、私の父様がダンジョン魔物対策をしてるから、ハクが見張っていなくても良くなるんだけど…私の従魔にならない?」
そして、これから、ダンジョン魔物は出てこないし、森に入って来る冒険者達が増えて、ハクを狩ろうとする冒険者も出てくるかもしれない事などを説明した。
『…ぼくのやくめ、もりにへんなやつら、ふえなくする。へんなやつらでてこないなら、フィア、めがみさまにてる。フィアといっしょ、うれしい。いっしょにいきたい。」
そして、従魔になってもいいと言ってくれたので、それをソレストさんに言った。
「それで、従魔にするには冒険者ギルドにこの子と一緒に行けばいいんですね?」
「そう。冒険者ギルドで登録申請を出して、ギルドマスターと副ギルドマスターの許可が貰えれば、従魔になれる。」
「ギルドマスター…会った事ないです。副ギルドマスターのクレストさんとはお話しした事ありますけど。大丈夫でしょうか。フェンリルって、魔王とか言われちゃってたでしょう…許可貰えるかしら。」
「大丈夫だと思うよ。俺がギルドマスターで副ギルドマスターが弟だから、申請してくれたら、許可出すからね。心配しないでね。」
やっぱりそうだった。ソレストさんとクレストさんは兄弟でした。そして、このイケメン兄さんはギルドマスターでした。薄々、そうじゃないかと思ってたよ。めっちゃ強かったし。




