70 ダンジョンの様子
昨日、ハクが戦っていた広場を過ぎ、あのダンジョンを囲った壁が見えてきた。
私の造った壁は高さ5メートルあるので、ハクに私達を乗せたまま大きくなってもらい、中を覗くと…あらら、真ん中の小山の入り口部分は、私が念入りに塞いだからか罅も入ってないけど、入り口がついてた所の丁度裏側に新たな穴が開いていて、昨日程勢いはないけれど、トレントやらが少しずつ出て来ていた。
…出て来なくなるまで、入り口で待ち伏せ、即討伐の仕組みを作らなきゃだめね。
取り敢えず今は、この檻の壁の中に出て来てしまった魔物を、リセットしといた方がいいかな。
「炎ちゃん、ファイアーアロー」
無数のファイアーアローに貫かれ、あっという間にトレント達が消滅する。
「父様、ダンジョンは入り口を塞いだだけでは、また他の場所に穴を開けて魔物が出て来てしまいます。良い方法は無いですか?」
父様に話し掛けたけど、答えが返って来ない。
「父様?」
「…フィア?今、魔法を使ったのか?魔物が消えた?何故消えた?本当にダンジョンがあったのか?」
「だから、そうなんです。ダンジョンの魔物なので、討伐すると、ドロップアイテムを残して消えてしまうのです。この魔の森の中にはまだダンジョンの魔物が沢山紛れています。ここからこれ以上溢れ出ない様に対策しつつ、それらを全て討伐出来れば、魔の森を縮小する事が出来るはずです。」
「それではない。いや、そうなんだが…何というか、フィアの魔法は初めて見たが、凄まじいな。初級魔法のファイアーアローでトレントを一瞬で殲滅するなど、聞いた事が無いのだ。」
「そうです。フィアルリーナ様の魔法は、普通の魔法と違う気が致します。そう、例えばこの壁は、フィアルリーナ様が造られた物ですね?よく見て下さい。魔物達は、壁に近寄っては来られない様に見受けられます。」
…あら、ホントだ。なんか、真ん中の小山の塞いだ方も避けられてるみたい。なんで?
「…フィアの魔法からは、微かだが聖属性の波動が感じ取れる。私も兵長も聖騎士だから、少しは感じ取れる。」
…そうなんだ。神聖魔法とか混ざってるのか、聖女だった頃の名残りなのか。魔物が避けてくれるんなら、もっと色々と造っちゃおうかな。
「まあ、それはいいとして、ダンジョンがあると確認出来た事で、かつて起こった魔の森の氾濫の原因だとほぼ確定した。魔物の発生源を抑える為の魔法士の手配をしよう。幸いこのフィア特製の壁は魔物が忌避するらしい。ここに交代で昼夜問わず魔物の殲滅を続ければ、溢れるのは無くなっていくはずだ。西の砂漠のダンジョンも最初は魔物が溢れていたらしいが、討伐し続けて、今の様になったのだ。まあ、魔物の強さも種類も違うんだが。何とかなるだろう。」
ハクにも協力してもらって、安全にここに駐在させる事ができると思う。
これを基に冒険者の為のダンジョン町、作りたいなぁ。




