67 父様と魔の森へ
眠い…もうそろそろ帰らないとね。
明日は、父様を魔の森に連れてかないといけないし。
明日また来ますと言って、ギルドを出ようとすると、お姉さんが、錬金が出来る事は他の人には話しちゃだめですよと忠告してくれた。変な奴に目を付けられたらいけないからと。
…そんな奴返り討ちにするよ?だけど、私のせいで家族とかが狙われても嫌だからなるべく、内緒にしておこう。
ギルド職員は秘密保持は当たり前だそうだけど、私の事はギルドマスター、副ギルドマスターだけには報告しますと言われた。
そして、今度こそ、ギルドの裏に素早く駆け込んで転移した。
◇◇◇
翌朝、起きて朝食を済ませ、いつもの黒づくめに着替えようと思っだけど、今日は父様と一緒に行動するんだから、マズいかな。
悩んだ結果、普通のお嬢様ワンピースに黒ローブを羽織って、今日は髪は隠さないでそのまま。
父様の所へ行くと馬車の近くで領軍の兵長とお話ししていた。やっぱり馬車で行くつもりだったみたい。
どうしようかな。先に様子だけ父様と2人で見に行くつもりだったんだけど。兵長も連れてく?
「父様、ちょっと宜しいですか。」
父様が兵長から離れて私のところに来たので、『馬車では時間がかかるので、安全確認の為に私の転移を使って、先に見に行きましょう』と、話したら、兵長も現状把握の為に、連れて行きたいが可能かと聞かれた。
何とかいけるんじゃないかと思う。そういえば、多人数の団体さんとか、馬車とか(馬はいけた)の大型の物の転移実験はしてなかった…。人数が増えても危険はないだろう。勘です。
では、今日は大人2人子供1人転移に挑戦って事で。
「では、行きます。転移。」
父様と兵長としっかり手を繋いでから呟くと、いつもの一瞬の浮遊感の後、あのグランダ皇国との国境の巨大な壁の前に転移出来た。
私は慣れてるから何ともなかったけど、父様達は転移の感覚にびっくりしたのか、体勢を崩して尻餅をついていた。
あ、兄様の時は抱きついてたから影響なかったけど、父様達は背の低い私と手を繋いでいたから、そうなったのね。ごめんなさい。次は私の肩にでも掴まってもらおう。
直接魔の森の中に行った方が良かったかな?だけど、トレントがまた増殖してないとも限らないからね。
そして、魔の森の方を見ると、白い犬が森の入り口辺りに座ってこちらを見ている。因みにトレントは増殖してなかったので、森は壁の場所よりかなり遠くにある。
だけど白くて目立つ…デカい!遠目だけど、多分体高3メートルくらいあるのではないか。昨日の子犬ちゃんの親かしら?
父様達が警戒して私の前に出る。
「ダルグレット様!あれは…フェンリル?伝説の魔の森の魔王では!?私では時間稼ぎにもならぬかも知れませんが、お二人はお逃げください!」
と、兵長が一番前に出た。
私は結界を全員に纏わせ、父様達をドーム型の多重結界で覆った。
だけど、私にはあのワンちゃん(デカいけど)に敵意が無いのが分かっているのよ。マップ展開してあるもの。赤くないの。むしろ…青。
「父様、あの子、敵じゃないみたいですから大丈夫ですよ。ちょっと待ってて下さい。転移」
私はでっかいワンコの前に転移した。
後ろから父様達の悲鳴に近い叫び声が聞こえたけど…大丈夫だと思うよ?勘だけど。




