64 夜の冒険者ギルド
冒険者ギルドの建物の裏に転移すると、真っ暗だったけど、かえって好都合ね。
私はギルドに入って、真っ直ぐ買取カウンターに向かう。
チラリと横目で右側を見ると、凄い賑わっている。やはり、昼間とは違う雰囲気だ。
昼間の酒場は比較的弱い冒険者がたむろしてたけど、夜の酒場は、一仕事終えた中堅冒険者が多い様だ。
だけど、今日、魔の森は立ち入り禁止だったから、この沢山の冒険者達は一体どこで狩りをしているのだろう?
お姉さんがびっくりした様子で私を見た。そして、小さな声で話しかけてきた。
「フィアルリーナ様…!大丈夫なのですか?もう夜ですよ?どうかなさったんですか?」
べつにどうもしないんだけど。
「買取、お願いします。」
「は?はい。かしこまりました。」
「また、多いんだけど…」
私はトレントの枝をカウンターに乗せた。
「…こちらへ。」
そして、また同じ部屋に通された。
麻袋に纏めた魔石。フォレスト系の魔物。トレントやソードリザードとかのドロップアイテム。因みにソードリザードは硬い皮や刃物の様な尻尾を残した。ワームは糸。スネークは皮や毒の牙。
あっと言う前に部屋のテーブルが埋め尽くされた。
お姉さんは、父様と同じ様な…諦めた目で積み上げられた物を眺め、『沢山ありすぎて、すぐには算出できないので、明日こちらに来られたら、お渡しします。』と言った。
討伐報酬はすぐに計算出来るので、明日カードを渡して、清算することになった。
そして、酒場からの視線を少しだけ感じながら、お姉さんに入り口まで付き添われて、冒険者ギルドを出た。
マップ展開。うん、ギルドの建物裏には人影なし。
転移する場所を確かめて、そちらに歩き出そうとすると、呼び止められた。しかも、『おい!そこの黒いチビッ!』よ?
…誰?私、知り合いなんていないわよねぇ。赤い点ね。テンプレかしら。にしても、冒険者って、あんまり良い人いないのかしら…。ちょっと、いや、かなり不信感が募るわ。子供とか女とか分かると絡んでくるの、何とかならないかな。
「何?私、忙しいんだけど。」
とりあえず、今後一切絡んで来ることが無いようにしとかないと。
男達は私の周りを取り囲んだ。
多重結界ドーム型展開はしたので、私に触れることすら出来ないだろう。とりあえず、私を呼び止めて囲んだ理由を知りたいね。
「で、何?」
「俺たち、こんな夜にふらふらしてるガキを見つけたら、捕まえて売り飛ばす事にしてるんだ。」
そう言うと、一人が私に飛びかかって来た。
はあ?何よそれ!
だけど、多重結界ドーム張ってるから、当然、顔面ぶち当たるよね。あらあら、鼻血出して…鼻折れてるよ。勢いが強かったみたいで、伸びちゃったね。
あ。それを見て、みんな武器出しちゃった。
それで、私の結界壊れるかな?どうなんだろう。保険にもう一枚下に張っておこう。
今度は一斉に斬りかかって来た。鈍器で叩いてる人もいるけど、やっぱりビクともしないね。結界凄い。
その間に精密鑑定をしてみたら、こいつらBランクからDランクの冒険者の称号がついてた。そして、奴隷売買、誘拐、盗賊とか…って犯罪者パーティじゃん。もういいわ…。
相変わらず、馬鹿みたいに私の結界を叩いている奴ら。
「エアハンマー。」
先ずは、Bランクの奴を吹っ飛ばす。
それを見て、Dランクの雑魚が逃げようとしたので、すかさず…全員に向けて、『ショック』を放った。もちろん、壁にぶち当たって倒れていたBランクの奴にもキチンとトドメをさしてあげたよ。
皆少し煙を出しながら気絶したわ。
ああ…それにしても、冒険者は犯罪者と紙一重なのかしら。幻滅よ!




