59 魔の森
「転移」
一瞬で目の前に巨大な壁が現れた。その壁を右手に見ながら歩いて行くと魔の森がある。
マップ、結界、多重結界は併用展開済み。多重結界はいつもなら半球形のドーム型だが、今回は私を中心に半径50センチ程の円柱型で、私の移動について来る仕様にして、森の中でも動ける様にしてみた。身体の表面に纏う結界だけでも充分だと思うけれど、ビビりなんで二重に結界を張ったの。地中から攻撃されたら嫌だから、もちろん足元も密閉してあるよ。
それをしてみた後疑問が出てきた。前から不思議に思ってた事がある…この結界、酸素は何処から取り入れているのだろう。普通に息が出来ているんだから、隙間があるのだろうか。毒の霧とかは防げるんだろうか?水は?今度、水の中に入って実験してみようかなぁ。お風呂さえあれば、すぐに判ったのに。
けど、毒の霧とかは実験出来ない…ヤバいかもしれない。防げるのだろうか。今から入るのは魔の森。毒とか持ってる奴いそう。
いつまでもここで、そんな事考えてても仕方ないから、即死とかがないのを祈りつつ、森の中に足を踏み入れた。
…え?
その瞬間、マップが赤で埋め尽くされた。
文字が重なり合って魔物の名前がわからない!
そして、何かが無数に私に向けて飛んで来た…が私の多重結界に弾かれる。
「なになにっ!?怖っ!何なのよっ!」
依然、何かが飛んで来てて、ばしばしと音をたてている。
周りを見ても『木』しか無い…だけど顔が付いてる。見ただけで呪われそうな不気味な顔だよ。
飛んで来たと思ってたのは木の枝だった。まるでムチのように私に向けて叩きつけてくる。中には先端で刺し貫こうとしてくる枝も…。ああ、これが有名なトレントって奴ですね。初めて本物見れたわ。めっちゃ睨んできてる。
こんなに沢山トレントがいたら、探検の邪魔でしょうがないよ。
殲滅するにはどうしたらいいかな。弱点とか知らないし…火で燃やす?切り倒す?うーん、とりあえずあの顔キモいし、狙ってみようかなぁ。
「炎ちゃん、ファイアーアロー」
炎の矢が顔に刺さり、その炎が一瞬で全体に広がり燃え上がるトレント。まさに『ボッ!』って感じで燃えた。しばらく燃えると、まるで崩れるように『消えた』。
…弱い?ってか、なんで消えるの?倒しても木材とかには出来ないの?
ま、いいや。バシバシ枝がウザいし、とにかく多いから片っ端からやっつける!そして…ふと、思う。他の冒険者見てないけど、魔の森には来ないのだろうか?後でギルドのお姉さんに聞いてみよう。
…ちょっとした広場が出来た。なに?この森は、トレントで膨れ上がってる森なの?確かに毎回見るたびに少しずつ広がってるなぁとは思ってたけど。
あと、トレントが消えたあと、丸太や葉っぱが残っている事に気付いた。これ…ドロップアイテム?売れるのかしら。薪くらいにはなるだろう、回収しとこう。
そしてガンガン、トレントをやっつけながら、進んでいった。私の通ってきた所が、街道の様になっている。これが、どれくらいでトレントで埋まってしまうのか、少し興味がある。
上手くやれば、簡単に魔の森の開拓ができるかも。
…ん?誰か戦闘してる?
森の奥から音が聞こえる。木に何かが当たる音や獣の声。とりあえず、マップを見てみると、少し大きめのオレンジ色の点が沢山の赤い点に囲まれてる。オレンジ色は状態異常の魔物みたい。何故かその魔物は、???になってて名前がわからない。赤い点の方はトレント、ソードリザード、キラーワーム、ポイズンスネイクって言う魔物だけど、数が半端ない。ここから更に奥深くの場所の様だ。だけど、激しい戦闘と思われる音は、かなり離れているにもかかわらず、ここまで聞こえてくる。一体森の奥で何が起こっているのだろう。




