57 ウハウハですわ
冒険者カードをお姉さんに渡して、その部屋を出て、しばらく兄様と待っていると、視線を感じる。密かにマップを展開。
うん。また居るね。スレドル。いつも敵意満々で、観てるだけなのかしら。すごい不気味な奴ね。威嚇しといた方がいい?でも、ここは他にも冒険者が沢山居るから、騒ぎになっても困るし。もし襲って来る様なら、お仕置きしてあげましょう。
お姉さん(名前はあるのよ。ミレーナよ。)が戻ってきた。呼ばれたので、買取カウンターに行くと、金貨、有りますね!
内訳は、ゴブ討伐で3万リル、ウサギ討伐で3万リル、ゴブ魔石が30個で3000リル、ウサ魔石が30個で4500リル。ウサギの魔石の方が1個150リルで少し高い。合計で金貨6枚、銀貨7枚、銅貨5枚となりました。
飲食スペースから観られてるから、急いで懐に入れるフリして万能庫に入庫した。
うん。これから毎日来よう。老後の為になるべく沢山個人資産を確保したいからね。
今日は締めて30万7千800リルになりました!
純粋な日給は6万7千500リルだ。ウハウハですわ。
…また姿が消えてるね。スレドル。どこに行ったのかしらね?
そして、私は兄様と冒険者ギルドから出て、転移せずに歩いて街を散策する事にした。
『マップ』『結界』はもちろん発動中よ。
ふふ。やっぱり来たわね。マップに沢山の…オレンジの点?あれ?赤い点かと思ってたけど。赤い点は少し遠くに一つだけ。
近づくオレンジの点の人達が、目視できる様になった時気付いたよ。皆、灰色のモヤが頭に掛かってる。
あー…そうなのね。スレドル。アンタはそういう能力持ってるんだ。
オレンジの点はスラムの人達で、リタがギルドから出てくる度に襲おうと狙って来た奴らだった。いや、リタが過去に酷い怪我をさせられた奴ら。
これで、こいつらがいつも虚ろな目をしてる理由がわかったよ。
スレドルは、酔っ払いやスラムの人達なら操りやすいのね。精神操作する魔法使いなのかも。だけど、意識レベルの低い人しか操れないんじゃないかな。
こんな方法でお金を稼ぐなんて、冒険者じゃないね。犯罪者です。
「兄様。こいつらはスレドルという魔術師に操られているスラムの者達です。私が全員気絶させますので、あの魔術師を確保してください。雷ちゃん、ショック。」
流石、兄様。素早い動きであっという間にスレドルの倒れている場所に到着し、担いできた。素敵。
この件をどうするか悩んだ結果、魔術師は冒険者ギルドに報告し、引き渡す事にして、同時に父様にも兄様が詳しく報告し、スラムの件も改善する事になった。
全く…父様は武闘派で、この街にスラムがある事さえ知らなかったらしい!ちゃんとしてください!魔の森の監視も大切だけど、街の中もちゃんと警備してください。あと、孤児院にも予算を振り分けてくれたらいいんだけど。
スラムは、怪我や病気で冒険者を続けられなかった人達の集まりだとリタに聞いた事がある。だけど、動けるし、歩けるのに、働かないのはどうにか出来るのだろうか?
具体的には何からするのがいいだろう。父様達なら考えつくのだろうか?
単に配給とか炊き出しでは、何も解決はしないだろう。
だけど、これでスラムを無くす為の一歩を踏み出す事が出来たよね。




