7覚醒。そして…
やっと プロローグ終了です
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「ん…」
突然、意識が覚醒して…何故か空が見える。
「ここは…?私は一体何を…」
仰向けに寝転がっている状態の私。
…はっ…首!…怪しいもの着けられた!?
首もとに手を持っていこうとしたが、力が入らない。
身体が動かない…あのシビレマッシュがまだ効いているの?
何とか顔を横に向けて周りを見てみると、そこはなんだか全て上の部分が吹き飛んだ建物の中の様に思われる。壁もなく、赤い絨毯が敷かれているだけで、かすかに壁の仕切りの跡があるだけで見える範囲は更地だった。
「な…に…コレ?怖いよ。誰か。いない?」
舌打ち王子でもいいから誰か来て欲しい。そして今の状況を説明して欲しい。
何と言っても現在進行形で体力が減って行くのが体感できるほど身体が弱っているのが何故かわかる。
その…体が沈み込んでいく様な感覚も怖い。
あの黄金のチョーカーを着けられた時からの記憶がない。
…という事は、ラノベとかの知識でいうところの隷属の首輪の様なものだったのかもしれない。
かすかに見える自分の服装は紅に金糸の模様の豪華なドレス?
あれからかなりの時間、いや、月日が経ったのではないかと思う…髪がこの状態で掌に触れるほどに長く伸びて床に広がっているのがわかるのだから。
確かあの時も長かったけれど、こんなお尻を隠すほど長くなかったと思う。
あ…「ステータスオープン…」
口の中でつぶやくのもしんどい。
ルリ・サイタニ(人族)
30歳
聖女
Lv99
LP (生命力) 4/18000
MP(魔力) 0/999999
AT (物理攻撃) 1300(300)
DF (物理防御) 10300(300)
MAT(魔法攻撃) 95000(85000)
MDF(魔法防御) 82000(72000)
魔法:
神聖魔法
光属性魔法
空間魔法
固有スキル:
精密鑑定
言霊創造
多重結界
全言語理解
万能庫
称号:
異世界からの召喚者・女神に愛されし者・治癒師・王子の隷属者・王子に愛されし者・王国の守護者
装備:
精霊石の聖杖
聖護のローブ
紅煌のドレス
瞬速のブーツ
隷属のチョーカー(主なし)
……。
…まず、どこから突っ込んでよいのかな?
さ…30歳って!どゆことっ!こっちに召喚された時28歳になったばかりだったのに、アレから2年以上経ってるの!?やだー…三十路になっちゃってる。
更にレベル?いつこんなにレベル上がったの…
レベル上がったんだから、ステも上がるでしょうが…上がり過ぎの様な気がします。他と比べた事はありませんけどね。
表示されるものが詳細でグレードアップもしてるし…
ああ、私のアイテムボックスの正式名称は万能庫だったのね。
それ以外のスキルも、ちょっとだけ名前変わってるみたいだけど、それより気になっているの…称号。
《王子の隷属者》はわかるよ。
でも、《王子に愛されし者》ってどういう事なのよ!
まさか…私が拒否出来ないのをいいことに、イロイロされちゃったの!?
…いやいやそれはないよ。王子なんだから女に飢えてるわけないし選り取りみどりでしょう。あの王子の年齢は20代前半に見えたし(下手すると10代後半)、私はかなりの歳上。
この世界の女性は揃って美人しかいないのではないかとへこんだくらい。敢えてあまり考えないようにしていた私。街の中の人だって私より綺麗な人ばかりでしたよ?あの服屋のおばちゃんでさえ整った顔立ちをしていたのよ?
だから私みたいなのは対象外だと思う。
隷属のチョーカー…主なし?
主は多分、舌打ち王子だったはず。
無理矢理腕を動かして、首もとに手を当ててチョーカーに触れてみた…外れてる…?
触れた拍子にカシャンと音を立てて横に転がり落ちた。
…はっ。LPが3に!?腕を動かしたから減った?それともチョーカーとれたから減った?
MPに至ってはゼロのまま。MPが無くなると死にそうになるって本当なのかもしれない。
え。今また減ったよ?LP2になっちゃったよ?
か、身体が更にキツくなって、もう声出すのも無理っぽい。
やだーまるで死へのカウントダウンだ。
治癒師の本領、回復を唱えたいのに、肝心のMPがゼロで無理です。
ふと、地響きに気づいた。地震?…違う。音も聞こえてくる。
倦怠感がすごいし、苦しいが顔を横に向けてそちらを見ると…
あ…ヤダヤダ!怖い!怖いよっ!怖すぎるよっ!
魔物?初めて見たよ?だけどワカル。あんな二足歩行の恐ろしい顔した生き物、魔物でしょ。怖くて泣きそう。だって結構まだ遠くなのによく見える。大きいから。でっかい豚っぽいのが剣持って二足歩行してるんだから。
大小様々な魔物が地響きを立てながらこちらに向かって来るのが見える。
このままだとあの魔物の群れに巻き込まれて死んじゃうよ。もうすでに瀕死ですが。
…LPがまた減って、1になったんではないだろうか。もう瞼が重くて…とても眠い。
死ぬのも痛いのもやだなぁ。
この異世界で頑張って、治癒師で稼いで、安定した生活を手に入れて、孫とかに囲まれて、穏やかな老後を過ごすはずだったのになぁ。
もう一度空を見上げて見ると、雲ひとつない綺麗な水色の空が見える。
…?。なんだろう。かすかな心の痛みを感じた。
そして、私は瞼を閉じて意識を手放した。




