52 冒険者見習い登録
ビスラが酔ってる状態だっていうのを、私の《真実の瞳》が灰色のモヤで視せてるのかな?
…ふふ、それにしても、この人いっつも同じ事してるんだ。怒られてシュンとしちゃったビスラ。お酒飲み過ぎよ?
仕方ない。指治療してやるか。
「ヒール」
唱えると、金色の光がビスラの手を包んで瞬く間に治る。
「「え?」」
受付のお姉さんとハモった。
あれ?今まであんまり気にしてなかったけど、ヒールの光って緑じゃなかったかしら。今の金色だったような?
「ヒ、ヒールでそんな骨折治せましたっけ…。」
お姉さんが呟いた。
え…。治らないの?かな?普通にいけたけど。
「治癒魔法がお使いになれるのなら、教会で登録した方が宜しいかも。本当に冒険者で良いのですか?あ、その事も含めて、少々お話がございますので、一緒に来て頂いて宜しいですか?」
いえ。教会は結構です。嫌な思い出がありますので。
「えーと…長くなるのは困るんですが。もうそろそろ帰らないと家の者がきづ…いえ、心配しますので。」
そう、昼食時に私が居ない事がばれてしまうのだ。
「いえいえ、簡単な確認だけなので、すぐに終わりますよ。」
と受付のお姉さんと一緒に来た男の人が言った。
仕方なく了承して、男の人の後についていく。お姉さんは私の後ろを歩いている。
ビスラは、酔いが覚めた感じで、首を傾げながら飲食スペースの方へと戻って行った。頭の灰色のモヤも消えて無くなっている。やっぱり酔ってる状態だったから?だけど…うーん…飲食スペースで酔ってる人達の中で、他にはいないみたいだけど。
あれ?さっきの赤い点は無くなってるわね。もうどっかいっちゃったみたいだけど、何だったんだろね。少し気になるから憶えておこう。
◇◇◇
真ん中の通路に入り、奥の部屋に案内され、まあ、それなりな普通のソファに座った。
「私は副ギルドマスターのクレストと申します。フィアルリーナ様は、ディラント新侯爵家のお嬢様で宜しかったでしょうか。」
「そうですけど…冒険者になってはいけないんですか?」
「いえいえ。冒険者になるのは貴族の方々でも普通にあります。ですが、冒険者見習いから登録される方は殆ど、いえ、全くと言って良いほど、いらっしゃいません。何故かと言いますと、貴族の方々は10歳で王都の学校に通われます。その時、同時に冒険者登録をするのです。もちろんしない方もいらっしゃいますが。」
ええーっ!?入学と同時に冒険者登録するの?知らなかったよ…。




