46 婚約式でもうわの空な私
アレスト王子にエスコートされ、踏み入れた広間には、王都中の貴族が招集されてるってくらいの人が溢れていた。実際そうだったんだけどね…たった数日でこんなに招集できてしまうなんて、やっぱり王様ってすごいのだと、改めて思った。
私は人の多さに気圧されながら、王様と父様がいる場所まで、王子と共に進んだ。
ちょうど、父様の新侯爵への陞爵が終わったところのようだった。
皆の好奇の眼差しが突き刺さるようでちょっと怖い。
ここに来ている人達は、私の事をどう見ているのだろう。
田舎娘とか思ってんだろうな…。
っていうか、私の事知らない人多いんじゃないかな。
…早速私の事を、めっちゃ睨むような瞳で見つめている人達がいますよー…コワイ。
金髪の男の子と薄茶色の髪の女の子。
見たことないし、そんな睨まれる覚えもないんだけど。
あとは、私の事を値踏みするように観るおじさんやおばさん達。
「そんな不安にならないで。私がいるから大丈夫だよ。」
私の顔をのぞき込む様に顔を寄せて囁く、アレスト王子…優しくってとっても素敵なのだけど、その至近距離なのが一番緊張するんですが。
それにしても、アレスト王子、今10歳ですよね?なのにすごく大人っぽい…。
こちらの世界の人々は、寿命が比較的短いせいか、早熟の様だ。
寿命が短いのは、大抵は魔物にやられちゃうとかで、人生60年で長生きと言われるらしい。
私も、こちらの世界の身体なのだから早熟のはず。きっと、色んな所もその内成長してくれるでしょう。今はペッチャンコのまな板だけど。8歳だからね、まだまだ…。
とにかく、老後と呼ばれる歳が、50歳からみたい。
私は、目標100歳で頑張ってみよう。そしたら、楽しい老後を50年も満喫できるのよ。
だからこれから、やりたい事もたくさんあるのよ。なので、隣の王子様にこっそり聞いてみた。
「私、冒険者になりたいんですけど、お許し頂けますよね?もし、駄目なら婚約破棄して頂きたいのですが。」
王子様は一瞬びっくりしたみたいだったけど、すぐに優しい微笑みで…言った。
「では、私も冒険者になりましょう。」
え?王子様も冒険者する?大丈夫ですか?第一王子ですよ?次期国王なんじゃないんですか?
私の私的な趣味と実益を兼ねた案件に王子様を巻き込んで良いのだろうか。
…でも、ちょっとそれも楽しいかもしれない。
王子様とエリーとリタと私で…冒険者。
魔の森探検。開拓。
私の転移があれば、王都とディラント領だってすぐだし。
はは…やっぱり無理だよ。絶対止められる。周りの大人たちに。
王子様は確実に参加は無理だから、私の夢の為に、婚約破棄はこれからもお願いしていこうと思う。
別にアレスト王子の事が嫌いなわけじゃないけど、迷惑かけちゃいそうだからね。
皆に婚約のお披露目が終わったんだけど…ほら、やっぱりご馳走食べれないじゃん。
ああ…お腹すいた。
この婚約式はどこか他人事みたいで実感がなくて、とにかく早く屋敷に帰りたい。
いいや、早くディラント領に帰りたい。




