閑話 王城編
王族達の密談
「なんと…ルーデンス前公爵である叔父上の屋敷にも、あの呪いの女神像を贈っておったとは。ううむ、バルト侯爵め。最初から我ら王族を狙っておったのか?そもそも、あやつの一族は王族でもないのに、いつからこの国の侯爵だったのだ?」
「確か、私のお祖父様、陛下の曽祖父にあたられる、ダグラス王の時代にバルト家が侯爵となったのだ。なんでも、当時王太子だったダグラス王に、素晴らしい魔道具を献上し、それを使って国家に多大な利益をもたらしたとか。」
「義父上、その利益とは一体なんなのか、ご存知なのですか?」
「うむ、何やら、伝説の聖女に関する事だったとは伝え聞いておるが、詳しくはわからぬのだ…我が兄上である前国王が生きていらっしゃれば、もっと詳しく……っまさか、前国王もバルトの企みで亡くなられたのではっ!?」
「…!そういえば…我が父上はある日突然お倒れになり、日に日に衰弱していった…息子のアレストと同じ。いや、かなり急激に衰弱していった。そう…確か父上はバルト侯爵を少々疎んじていた。あの侯爵の性癖の所為だとばかり思っていたが、父上は何かを知っておられたのかもしれぬ。」
「今回の件も魔道具が関係しております。娘のフィアルリーナの話によれば、息子のエルドレットに隷属の首輪なる物が着けられていたそうです。それは、グランダ皇国が関与していたとも言っておりました。」
「そうだ。そなたが侯爵の屋敷で捕らえた者の中に、グランダ皇国の間者が多数紛れ込んでいた。」
「昔からバルトの一族は、魔道具に精通しておったのだな…もしかしたら初代バルト侯爵は、グランダ皇国の間者だったのかもしれんな。兄上はそれに気づいて、バルトめを遠ざけておったのか?だが、確たる証拠でも無ければ、爵位剥奪はできん。そうこうしている内にバルトにしてやられたのだな。我が妻のアウリーナも私の代わりに…。2人とも、さぞ無念だっただろう。」
「「………。」」
「そうだ…ダルグレットよ。明日、新侯爵への陞爵と共にそなたの娘フィアルリーナと、我が息子のアレストとの婚約式を執り行うぞ。これは決定だ。そなたには言っておらんかったが、フィアルリーナに瀕死だったアレストが命を救われたのだ。アレストがそなたの娘に惚れてしまってな。我も、フィアルリーナを王家に正式に迎え入れたいのだ。」
「フィア…いつのまにそんな事を…?」
「それは、誠、慶事ですな。孫のフィアルリーナは素晴らしい娘ですからな。聡明なアレスト王子にお似合いでしょう。私も大賛成ですぞ。いや、めでたい!」
「で…ですが、誘拐騒ぎがあったばかりですし、準備なども全然…。」
「大丈夫ぞ。もう、既に手配済みだ。そなた達家族は明日城へ来れば良いのだ。わかったな。」
「…はい。承知致しました…。」




