44 女神像
青い絨毯の敷かれた廊下を歩く。
黒い呪いのモヤは一つの部屋へと続いていた。
私はその扉の前に立ち、ドアノブを引いたけれど、鍵が掛かっているようで開かなかった。
「開かない…。」
鍵を開けてもらおうと後ろを振り返ると、お祖父様が目を見開いて震えている…。
「…どうかなさったのですか?この部屋は?」
「そこは…亡くなったお母様の部屋よ。いえ、あなたのお祖母様の。」
母様が教えてくれた。
「開けて…頂けますか?お祖父様。お願いします。」
ショックを隠し切れないお祖父様は、とても気の毒に見えたが、呪いの元を断たねばお祖父様の命が危ない。
「この部屋には、亡くなったアウリーナが大切にしていた物が保管してあるのだ…。」
そして、執事が持ってきた綺麗な小箱の中から、鍵を取り出して、それで扉を開けてくれた。
中はカーテンが閉まり真っ暗で、まるで倉庫の様な匂いがした。
…あった。
やっぱり、あの女神像が。
あの男の子の家も貴族みたいだった。多分、同じ奴が配って回ってるんじゃないの?
「…お祖父様、これは、誰かからの贈り物ですか?」
「そうだ…が、何故贈り物だとわかったのだ? まさか!?これが呪いの魔道具なのか!?」
「そうです。呪いはこれから出ています。」
「これは…バルト侯爵が持ってきた物だ…そんな、まさか…。」
バルト侯爵って!…侯爵ってバルトって名前だったんだね。
「そのまさかです、お義父様。実は昨日、バルト侯爵は何らかの罪で、陛下によって既に捕縛、投獄されておりました。きっと、これも何かの企みでお義父様に贈ってきたのでしょう。事実、お義母様はこれのせいで、亡くなられた可能性があります。」
既に捕縛されてたとは聞いてたけど、私とエルドの誘拐未遂の前に、なんか色々と悪い事やってたから、それでもう捕まってたんだね。
「…そうだ…最初、バルトの奴は、この女神像は儂の部屋に飾ってほしいなどと言っておった。本当の狙いは儂の命だったのを…あれが…アウリーナが気に入ったと、自分の部屋に飾るのだと言い張って…。」
豚侯爵め!こんな事まで…!これのせいでお祖母様は亡くなったの?私がもっと…いいえ。もう死んでしまったらどうにも出来ない。
とにかく、この女神像ぶっ壊す!
女神様に恨みはないけれど、ほんとこれを作った奴は罰当たりね。悪意が込められてるよ。
いつか、作った奴見つけたら、お仕置きってか、二度と変な魔道具作れない様に、再起不能にしてやる。
部屋に入り、女神像に向けて手をかざす。
「解呪!」
するとバシッと音を立てて、女神像の額が大きく割れた。
そして、黒い呪いの蛇が消滅したのを確認した。
もちろん、お祖父様に絡みついていたものも、同時に消滅した。
悲しみにくれるお祖父様を慰めながら、小さくハイヒールを唱えて、回復しておいた。
父様が、この件も陛下に報告に行ってくると言うと、お祖父様も一緒に行くと言い、2人で王城へ行ってしまった。
残された私達は、先に屋敷に戻る様に言われたので、また改めて、ここにお邪魔することにしたのだった。




