43 公爵家
翌日目を覚まして1階の食堂へ行くと、父様と母様、そして、エルドの他にもう1人いた…。
「…アルにいさま…?」
濃紺の髪にアップルグリーンの瞳のイケメンがいた!
今年13歳になり、今は王城の王子達全般の護衛隊にいるらしい。
侯爵の件がほぼ解決したので、これからはディラント領にも頻繁に帰ってくる予定だそう。
そして、まだ決定した訳ではないし、公にもなっていないのだが、王様からのうち内の打診で、父様が新侯爵となり、すぐに兄様がディラント領を継ぐ事になりそうだと聞かされた。
もちろん13歳の新米領主では、防衛の要のディラント領主は荷が重いから、父様が兼任しながら、兄様を教育していくという。
新侯爵は以前の侯爵を考えると解るように、大した役目がないので、最初はほとんど今まで通りディラント領にいて、王都でのお仕事は、兄様に領主のお仕事がしっかりと引き継げたら、第一王子の騎士団長に就任し、次期国王の土台を作っていく役目をするのだという。
父様、文官苦手みたいだから…脳筋系希望なのね…。
だけど…うう…次期国王…私の未来の…?
昨日、あの事件で王城へ行くのが延期になり、あまり自領を空けるのも良くないと、日程を少しでも短縮させる為に、先に前公爵(お祖父様)にご挨拶しに行く事になった。
家族全員が揃うのも3年ぶり(私は憶えていない)で、しかもお祖父様にお会いするので、凄く緊張してます。
公爵家別邸の門をくぐると、なんか覚えのある嫌な感じがした…そう、あの黒い蛇のような気配。
やはり、出迎えてくださったお祖父様は、お顔の色も悪く、痩せて具合が悪いのを、体力と気力で持たしている感じだった。
まさかとは思っていたけど、やはり、あの黒い蛇のようなモヤがお祖父様に絡み付いているのが視えた。
あの金髪イケメンの男の子みたいに、全身に絡み付いている訳ではないので、あの女神像のようにベッドサイドに置かれてるんじゃないだろうけど、このままでは、お祖父様の命が危なそう。
まずは、この呪いの元凶がどこなのかを確認したい。
一通りご挨拶が終わったのを見計らっって、父様にこっそりと耳打ちした。
『…父様。お祖父様に呪いがかかってます。それを解いたらお祖父様は元気になります。協力してほしいです。』
父様は一瞬驚いた顔をしたけど、私が神聖魔法を持っているのを知っていたので、微かに頷き、母様に耳打ちし、お祖父様に話しかけた。
母様もお祖父様のお身体の具合が悪いのを心配していたので、私に任せてくれるようだ。
お祖父様は父様の話を聞いて、まさか呪いの魔道具がこの屋敷内にあるなど、信じられないと言っていたけど、とりあえず探すだけでもという事になった。
でも、私には確かに視えるの。
あの黒い蛇がお祖父様に繋がっているのが。
それを辿って行けば、呪いの魔道具に行き着けるはず。
私はお祖父様の許可を得て、その黒いモヤの蛇を辿り、歩き出した。




