42 自業自得?
「フィア…起きて…フィア…。」
「ん…。かあさ…ま?」
体を揺すられ、母様の声で目を覚ました。
ハッとして、横を見ると天使の寝顔でエルドは眠っていた。
…よかった。エルド、ちゃんといる。
「フィア…心配したのよ。父様は今まだ王城にいるけれど、その内大急ぎで帰ってくるわ。そしたら…全部話してもらいますからね…。」
母様が怖い…。
ちょっとだけ弁解を…。
「母様。あの時急がなければ、エルドがグランダ皇国に連れて行かれそうだったの。だから…。」
「それは、父様が帰ってきたらお話ししましょう。…とにかく無事で良かったわ。ところで、あの厩舎にいる怪我人はなんなのかしら?」
「あれは…エルドを攫った犯人です。グランダ皇国の盗賊です!3年前、父様を刺して殺そうとした男なのです!とりあえず父様に引き渡そうと捕らえてきました。」
「……。」
母様は額に手を当てて頭痛を堪えるようにして、黙ってしまった…何故?
私は自分の大切なものを守りたい。だから、出来る事があれば全てやるの。後悔しないように。
◇◇◇
父様が帰って来た。
そして、捕らえた男の話をすると、父様は直ぐに王城へ使いを出した。しばらくすると兵士が男を連行していった。
いつの間にか、夕食の時間になっていて…皆疲れ切っていたのか、とても静かな夕食となった。
「さあ、フィア、色々と話さなければならない事があるな?」
父様がそう切り出し、私はどこまで話すのがいいのか考えた結果、神聖魔法、空間魔法、精霊魔法が使えるとだけ話した。
前世とか聖女とかの話は荒唐無稽な話だと思われると考え、言えなかった。
そして、父様からは、王城での事を聞かされた。
侯爵が既に捕まっていた事。処刑が決まった事。
えぇー…豚別荘送致のお仕置き(結界付き)が出来ないなんて。
侯爵の屋敷で、隷属されていた数人の幼女が助けられた事。
侯爵が飽きたら、各地教会付属の孤児院に子供達を捨てていた事。
貴族達から出されている、捜索依頼の行方不明の子供達は10人に及ぶ事。
その子達を探すべく、既に王様が手配した事。
グランダ皇国が侯爵と結託していた事。
そして、私がこの国の第一王子と婚約すると言う話。
…は?
学院入学後に自由恋愛ってのは、どうなったの?
私の力が王家にバレたらしい。どうしてバレたのかしら?
ああ、侯爵に狙われた事や、父様が刺された時の事を話したからね。
だけど、第一王子ってことは次期国王なんだよね?
とてもじゃないけど、私王妃とか無理だよ?絶対務まらない。どんなことするのか知らんけど。
こんなにガサツだし。前世の庶民感覚が抜けてない。
それに…私は冒険者になりたいのよ!
あと、なんかの商売もしたいなぁと考えてた…私はお金儲けもしたいのよっ!
…王妃ならお金の心配なんかないんだろうけど。
断れないんだろうな…貴族の務めとして。
相手がどんな人かも気になるし。
自業自得…な所もあるけれど…どんどん夢が遠ざかる…。




