5王城からの招待(強制)
実は…まだプロローグなのです…
うーん…それにしてもお腹すいて死にそう。
さっきの串焼きとか、すぐに食べられるものを庫内に沢山ストックしてしまえば、旅に出ても食事に困らないね。
私の魔法は水も出せないし…飲み物もどこかで買えるのかな?
私のアイテムボックスの容量はわからないけど、とにかく手持ちのお金ギリギリまで使ってでも買いだめしてから、この王都を出て行こう。
住みやすい国がすぐに見つかるといいな。
そんな事を考えながら、教えてもらった履物店を目指して歩き、ようやく目当てのお店を見つけて入ろうとして、後ろから誰かに呼び止められた。
「ルリ・サイタニ様でございますか?」
え…。誰?どうして私の名前を知ってる?
嫌な予感を感じながら振り向くと、お城の兵士と供に執事の様なおじいさんがいた。
うわぁ…これあかんわ。
結界を発動させてるのにしっかり認識されているの?能力が上の人には結界の隠蔽が効いてないのかもしれない。
「失礼致します。私、王城からの使いとして参りました、王子の配下でセラドと申します。」
やっぱり王城関係者か…私ではとても逃げられる気がしない。ここで転移したら、すぐに指名手配されそう。
…私の個人情報を漏らしたやつ誰よ…ってか解ってるよ白ローブ達で間違いない。
依頼云々の話でもしかしてと思っていたが、案の定王城に報告されてた。
うかつな自分が悪いのだ。
やはり教会はやめて冒険者ギルドの方がよかったのかもしれない。
「王子が今朝のお詫びも兼ねて、ぜひお食事をご一緒したいと仰せなのです。今から私と共に王城までお越し願います。」
お越し願います…か。拒否権ないのね。
この場は言う通り王城へ行き、誰も見ていない時に転移すればいい。しばらくは王城の中を探すでしょ。
王城から出された時、私の顔なんて街の人たちに見られてもいないし、私は召喚された時、名乗ってもいない。
なのに私が召喚された女だとピンポイントで声をかけて来た。
気がつかなかっただけで、ずっと監視されていたの?
…転移したのは…見られてないよね?
まあ、確かに食事は魅力的。はっきり言って食べたいです。
「お召し物もサイタニ様のお力にふさわしいものをご用意させて頂きます。」
…白ローブめ。魔力の事も全て筒抜けね。
仕方ない。油断せずに、いざとなったら転移で速攻逃げましょう。服貰って、食事食べたら、さっさと王城からオサラバしてしまえばいいのよ。
あー…さっさと食料と水買っとけば良かった。
逃げる時の転移先はあの王都の外の草原一択しかないのだから。
だが…やはり旅に出るのに食料と水がないのは危険すぎる。まず街中に転移して追っ手がかかる前に食料と水を調達後、すぐ草原に転移する。これしかない。
「わ、わかりました。参ります。」
仕方なく返事して王城へと向かった。
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ああ。またここへ戻って来てしまったよ…王城に入り、最初のとき案内された部屋とは全く比べ物にならない良いお部屋に通され、着替えるように言われた。
本当は着替えさせられるところだったが、恥ずかしいので、自分で着替えると断固お断りしたのだ。
メイドさんが持ってきた服は、真新しい真っ白なワンピースにフード付きの白ローブ…金色の刺繍が豪華さを主張している。足元は皮の編み上げ紐のブーツだった。
メイドさんに持っていかれないようにさりげなく…今まで身につけていた物はこっそりと入庫で収納しておいた。オサラバする予定なので例え見られてたとしてもアイテムボックスも使える、みたいに思うだけだろう。
今度はまた違う部屋に案内された。大きめのテーブルがあるので、今度こそ食事が食べらるはずだ。すっごく腹が減って、お腹が鳴るのを押さえるのに必死だった。
しばらく待つと、男性が現れた。
えー…こいつ、あの舌打ちした騎士だ。
まさか、王子とか言わないで欲しいんだけど。
そんな願いも虚しく、そいつが王子だった。どうりで騎士にしては態度がデカいと思ったよ。
こいつの事は舌打ち王子と呼ばせていただきます。
この舌打ち王子、濃い金髪、水色の瞳で彫りが深く、はっきり言って顔がケバい。
ガッシリした体格、まるっきり騎士だ。顔つきも王様に似ている気がする。金ピカ鎧で派手なとことかも似てる。
私の好みではない。
舌打ち王子は私の向かいの席に座った。
一言も喋らない。やっぱり嫌な感じ。
すると、食事がすぐに運ばれてきた。




