36 早く戻らないとね
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魔方陣らしきものが一際激しく輝いて、その一瞬後には周りの様子が変わっていた。
「…ここは…?」
どこか別の場所に強制転移させられたのか…な。
「ようこそ、いらっしゃいました。ディラント家の精霊魔法士様。」
そこには、あの時父様の執務室前で見た、名前は覚えてないけど、暗殺者の職を持つあの男が居た。
…ここは侯爵家?
「貴女様を捕らえるのに何度失敗したことか。本日ようやく成功致しました。貴女はどうやってか、攫ってきてもいつの間にか消えていて、私は主に何度叱責を頂いたことか…。今度は簡単には逃れられない仕掛けをご用意しました。」
早く戻らないと、エリー達が心配するよね。さっさとこいつ黙らせて帰ろう。
「今日は特別な魔方陣で貴女様を繋いでおりますので逃げられませんよ。後ほど、我が主が直々に、貴女様に…この特別な魔道具を着けて差し上げますので、それまで、大人しくお待ち頂けますでしょうか。」
そう言って、男が持ち出したモノは……。
《隷属のチョーカー》
忘れもしない…あの黄金の首輪。あの時見たのとは形が同じモノだけど、今回は紫色の鎖が巻きついて視える。とても嫌な感じ。
何故アレがここに?…いいえ…前世で私に着けられた物とは別のものなのかもしれない。
前世の二の舞はごめんなのよ?
「らいちゃん…『ショック』最大で。」
この男がこれで死んでも構わないと思う。
前世で感じた怒りと悲しみが湧き上がってきて…心が痛い。
「なっ!?ぐはっ!」
…辺りに焦げた匂いが漂う。
男は隷属のチョーカーを床に落とし…崩れ落ちた。
残念なのか幸いなのか…男は死んではいないようだ。全身火傷は負っているが。
らいちゃんは『ショック』は気絶させる技というのを、忠実に守ってくれているようだ。もちろん、『最大で』とつけたので、かなりの衝撃と火傷になってるだろうけど。
この男の治癒などはしない、したくもない。再起不能になればいい。
この人達は完全に《実害のある敵》と認識したから。
このまま野放しには出来ないね。
もちろん…侯爵本人も。
まあ、ひとまず皆の所へ戻らなくては。エリーが心配してるでしょうし。
お仕置きの方法は後でじっくりと考えよう。
「転移」
…うん。その男の言った通り、駄目みたいね。転移出来ない。
この魔方陣のせいか…。
「闇ちゃん…限界ギリギリまでの距離に安全と思われる場所、どこかないかな。探して。あったら…『ムーブメント』」
闇ちゃんは暗闇のある場所になら移動が出来る。あまり遠くには無理だが。
今はお昼頃だけど、安全な暗闇なんて…近くにある?大丈夫?
闇ちゃんから、肯定の意思が伝わってくると同時、浮遊感と共に周りの様子が一変した。
やっぱり、魔方陣は私の魔法を封じるもので、精霊を封じるものではなかったみたい。そのおかげで、なんとかあそこから脱出できたね。闇ちゃんありがとう。
あとは…転移で戻るだ…け…?
闇ちゃんが運んでくれた場所は、昼間のはずなのにとても薄暗い部屋の中だった…。
ブックマークありがとうございます。
不定期更新です。
遅筆で申し訳ありません。
本業の合間に少しずつ頑張って書いてますので、これからも、読んで頂けたら幸いです。




