閑話 リタ
〜貧しい女の子の独り言〜
あの日、不思議な女の子に出会った。
いつものように上手く逃げられず、無理矢理稼ぎを奪われた日だった。
お金を渡すのを拒んで抵抗したので、強く殴られ酷く痛めつけられた。
つぎは抵抗せずにすぐに渡そうと後悔しながら、気を失ってしまった。
あのままだったら、わたしはあの場所で死んでいたかもしれない。
気がつくと、目の前には心配そうに見つめる綺麗な黄金の瞳。光輝いているようなすごく美しい女の子だったので、女神様の使徒様じゃないかって思うくらい。
その女の子は『フィー』という名前。
見ただけで貴族様だとわかってしまうのだけど、わからないふりをした。知られたくなさそうだったから。
あんなに酷い怪我をしていたはずなのに、今はもうどこも怪我してない。
フィーは凄い治癒魔法を使ってくれたのに、お礼に街を案内するだけでいいと言ってくれた。
おまけにクリーンの魔法までかけてくれた。
フィーはそのつぎの日から一緒に薬草採りのお手伝いをしてくれる様になった。
不思議なことに、フィーは薬草採りがとても早くて、今までよりも早くたくさん薬草が採れた。
だけどフィーは、なぜか、とても気配が薄い。そこに居るのに、まるで景色に溶けてしまう気がして、すごく心配になる。
だから、フィーを絶対に見失ったりしないように、いつも気にしながら、過ごしている。
そのおかげか、ゴブリンはすぐに見つけられるようになって、上手く逃げられる。
街の中では相変わらず、スラムのその日暮らしの人達が、わたしの少ない稼ぎを狙ってついてくる。
とにかく、逃げるだけしか方法は無い。
でも、すごいことが起こった。
フィーがまた、すごい魔法を使ってくれたから、遠くのいろんな場所に一瞬で移動できちゃうんだ。
やっぱり、フィーは女神様の使徒様に違いない。
わたしの幸運は、フィーに出会えたこと。
この優しいフィーと一緒にいるだけで幸せ。
ずっと、側にいて、フィーの役に立ちたい。
だから、女神様。お願いします。
フィーといつまでも一緒にいられるように、わたしに加護をください。
フィーを守れるように、強くなりたいから。




