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3早くこの国を出たい

 

 服屋らしきお店はなんか…古着屋さんっぽい。あんまり綺麗な服は売ってないようだ。


 とりあえず店に入ってみると、おばちゃんが店番していた。店の中の雰囲気は茶色。シャツとかチュニックみたいな物はほとんど生成りで、茶色ズボンが主流の様だ。男女兼用なのか、可愛くない。


 歩きながら街の人々を観察はしていたが、闘う系の人は鎧やローブで下に何を着てるのか見えなかった。中には裸に一部鎧のムキムキマッチョなおじさんや女性もいたが。


 屋台のおじさんは黒いエプロンで前のほとんどが隠れていたし、目の前のおばちゃんも茶色のエプロンを着けている。


 サイズは大中小くらいしかなく、チュニックの中サイズのものと茶色のダボダボズボン(ウエストを紐で縛るタイプ)を手に取った。


 試着したいし、そのついでにここで着替えて行こうと思い、結界を解除した。


「これ、いくら?」


「…えっ?に…2枚で2000リルだよ。ってかあんた、いつ店に入ってきたんだい?いきなり目の前にいてびっくりしたよ。」


 いつと言うか、結構前に入ってきたし、ずっと近くに立ってたんだけどな。


 …そういえば、街の中でも絡まれたりするテンプレ無かった。…もしかして結界の効果かな?防御だけじゃなく、隠蔽効果有り?結界マジで使える。


「ここで着替えたいんだけど、いいかな?」


「ああ、そっちの隅で着替えられるよ。」


 衝立があり、そこで着替える事が出来た。


「あと、下着はある?」


 そう聞くと、おばちゃんは白っぽい短めのキュロットを出してきた。これもウエストを紐で縛るタイプ。


「全部で2500リルだよ。」


 麻袋小の中に手を入れて、銀貨3枚をこっそり出庫する。その時、さっきの小さな黒い硬貨が鉄貨7枚と確認できた。入庫リスト見たらすぐに名前が判る事を忘れていた。うっかり。


 それを渡すと、やはり銅貨5枚が返ってきた。お金の単位はさっきの考えで確定ね。


 次は、身分証を手に入れないと。でも、冒険者ギルド怖いなあ。


「私、今日王都に来たんだけど、故郷が田舎過ぎて身分証がないの。冒険者になれば作ってもらえるのかな。」


「ああ。冒険者や商人、教会、薬師、錬金。どこのギルドでも作ってもらえるはずだよ。あんた、冒険者になるって、戦えるのかい?弱そうだけど。」


 うん。確かに無理かも。聖女って戦えるの?…戦える気はしない。スプラッタは苦手。戦争映画も好きじゃなかった。


「…教会?」


「教会は聖職者だけじゃなく、回復治癒師の登録もしてるんだよ。登録すれば治癒院で雇ってもらえるし、冒険者ギルドの斡旋もある。…回復使えるのかい?」


「ええ。少しならなんとか。試しに行ってみるわ。ダメだったら、冒険者になるよ。」


 聖職者になるとかは面倒だけど、回復治癒師になればなんとか稼げるかも。


「おばちゃん教えてくれてありがとう!」


「ああ。頑張って立派な治癒師になって、あたしが怪我した時は治しておくれよ。」


「うん!頑張るよ!」


 店を出て…冒険者ギルドの前を通り過ぎおばちゃんに教えてもらった教会への道を歩く。ギルド近くだからか冒険者が多い。数人の冒険者と目が合ってしまった。嫌な予感。


 すれ違う瞬間にわざとだろう、ぶつかって来られて転んでしまった。痛い。膝と手のひらに擦り傷ができて、血が滲んでいる。その冒険者の男達はニヤニヤしながら謝りもせずに行ってしまった。何も言えなかった。むしろ何も言わなかったから、これだけで済んだのかもしれない。


 …自分の容姿は、はっきり言って美人じゃなく身体も貧相。しかもこの世界では子供がいてもおかしくないくらいの年齢のようで、おばさんの部類に入るのだろう。最悪な絡まれ方されなくて良かったのだろうが、微妙。若くて美人じゃなくて良かったような残念なような…。


 回復の練習にちょうどいいと思い直して、立ち上がり埃を払うフリをしながら…小さな声で「ヒール」と呟くと、膝の痛みが消え、表面に付着している血を拭うと傷も綺麗に消えていた。手のひらも同時に治せた。一度で済むようだ。


 あ。結界かけ直さなかったから絡まれて怪我したんだよ。失敗した。


 …それにしてもお腹すいた…のども渇いた。


 もらった携帯食料があるけど…あんまり美味しそうに見えない。はっきり言って固くて不味そう。口の中の水分みんな持っていかれそうで、ますますのどが渇くだろう。


 でも、早いとこ教会で登録して先に身分証を手に入れないと宿屋に泊まれないかもしれないし、明日にでもこの街…いや、この国を出たい。


 治癒師なら、きっとどこの国に行っても暮らしていけるだろう。


 うん、今度は忘れずに結界を。


 そして教会へと歩き出した。


 試験とかするのかな…それともお金?もしお金が足りなかったら、冒険者ギルドの方も行ってみよう。


 教会だろうか、割と大きめの白い石造りの建物があった。


 扉を開けて中を覗いてみると、正面に女神の像があり、信者らしき人達数人が膝をついて祈る姿が見えた。


 …ここじゃなさそう。登録する場所とかないし。誰かに聞いてみるしかないよね。


 白いローブの女性を見つけたので、聞いてみた。


 すると、目的の場所は正しくは教会の敷地内に併設されている治癒師ギルドの事だった。


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