17 襲撃
「ん…。」
お腹空いて目が覚めた。夕食食べそびれたみたい。いつもなら誰かが起こしに来てくれるのに…。
部屋の中は真っ暗で、なんか寒い。どうしてかと思ったら、ここは、自分のベッドの上じゃないし、自分の部屋でもなかったから。
まだ、寝ぼけて…る…?
違う。どこかの小屋の中みたい。少し埃っぽい。
精霊達がいつもの様に近くにいるから、その優しい光で周りがぼんやり見える。
いつの間にこんな所に?
…誘拐された?
ふふふ…だけど、私には転移があるのよ?5歳児だと侮らないでよね!誰か見張ってるわけじゃなさそうだから、さっさと逃げよっと。
「転移」
私はすぐに自分の部屋のベッドの上に戻れた。だけど…
……なにっ?この惨状は?窓は壊され、私の部屋がめちゃくちゃに荒らされてる!
やっぱり、私攫われたのね。
…はっ!とうさま達はっ!?
私は慌ててベッドを降りて、部屋の外に飛び出すと、廊下には沢山の倒れた人達がいた。
し、し…死んでないよね?とにかく回復しておかなきゃ!
慌てて近寄ると、眠ってるだけ?外傷もないし、息もしている。ちょっと安心した。毒かもしれないから…
「キュアヒール」
本の知識が役に立ったよ。だけど、治癒師の本。神聖魔法の本は教会が秘匿してるらしくて、とうさまの書斎にはありませんでした。
念のため片っ端から回復かけながら、とうさまのいるであろう執務室を目指す。
1階に降りると、更にめちゃくちゃだった…血を流している人も…ああっ!
「とうさまっ!」
それは、とうさまだった。
すぐに駆け寄り…息が微かにある!まだ!まだ救える!
私の目の保養。イケメンとうさまを死なせてはならない!
私は素早く、この瀕死の状態から回復するための魔法を考えた。これはハイヒールじゃダメだ。治癒師の本にはハイヒールまでしか載ってなかった。
言霊創造さんにお任せします…これしかないと思った。
「完全回復!」
魔力は多めに減った様だけど、倒れるほどじゃない。寧ろまだまだ余裕な気分。
傷だらけだったとうさまの身体は、みるみるうちに治り始め、お腹の一番深い傷も、まるで逆再生映像の如く塞がっていった。
切られた服は戻らないし、流れた血はそのまま残ってるけど、なんとかなったみたい。
まだ、意識は戻らないけど、大丈夫だろう。
生きてさえいれば、私が治せるのはわかった。
そして、眠らされていた者達が起き始めて、こちらに走ってくるのが見えた。その中にかあさま達もいたのでホッとした。
もう一つ、可愛い天使のエルドが間違って誘拐されなくて良かった。更にホッとした。
う…魔力、ゼロではないけれど、結構使ったから疲れたのかな。また眠くなってきた。所詮5歳児の身体なので、眠気にはめっぽう弱いのです。
後は、他の人がやってくれる…
そう思い、気絶するように眠りに就いた。とうさまに寄り添う様に。生きているとわかる暖かいその体温を感じながら。




