140 皆んなを助けよう
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一瞬で格子の外に出て、真っ暗な通路を歩きながら、地上への階段を探す。
驚きに目を見開きながらも、冷静に行動するこの皇子様は凄い。
流石、次期皇帝という感じ。
しかもかなりのイケメンよ。早くもっと明るい所で観賞たい!
まだ、少しやつれた感じがまた残っていて、なんかお世話したくなる感じがまた良いね。
おっと、階段見つけた。
それにしても、広いのね、この地下牢。閉鎖された国家の闇の部分が垣間見える。
ウチの王都の牢屋もこんななのかしら。
階段を登りきると、アーチ型の木の扉。鍵がかかってて開かないね。
マップを展開すると、扉の向こうにも人っ子ひとり居ないのがわかった。牢番や衛兵もいないなんて。
まあ、誰もいないのなら、好都合。鍵壊すのも面倒だから転移しちゃう。
「…何故誰もおらん?宮殿の兵達は何処へ行ったのだ…。」
あ、やっぱりおかしいんだ。そうだよねー。もう嫌な予感しかしない。
思い出したのは、砂漠ダンジョンで捕まえて連れ帰ったあの黒と白のローブの奴らだ。
もしかして、この宮殿の中で働いていた人達は、既にアンデッドにされてしまっている可能性がある。
皇子様に先導されながら進んでいると庭らしき所に出た。
「あ!」
思わず声だしちゃった。
人が大勢固まっている場所がある!
「ん?どうかしたか?」
「はい。あちらに沢山の人の気配を感じます。」
「あちらは皇都衛兵隊の…。」
うん、マップを見る限り隷属や状態異常にはなってないから、普通の人が立て籠もってる感じね。
その建物に赤の点が群がってる。
「助けに行きましょう。」
近くまで転移すると、黒ローブと鎧達が扉を壊そうとしていた。
うん。先ずは雷ちゃんのショックで行動不能にしてから浄化かしらね。
「雷ちゃんショックね。」
一斉に雷が落ち、敵は崩れ落ちた。
やっぱり、これは中身の無いリビングメイルと違う。
「解呪…浄化。」
あれ?浄化されて消えたのは黒ローブ達だけね。
じゃあ、他の鎧達はまだアンデットじゃなかったって事ね。
「皇子様、あの鎧の方達は…」
「ロイでいい。」
「は?」
「私の事はロイと呼べ。」
「あ、ええっと…ロイ皇子様。」
「皇子はいらん。ロイだ。」
それって愛称ではないですか…確かにロインベルト皇子様って長いけど。呼ばなきゃだめですかね。馴れ馴れしすぎないですかね。
「はあ…ロイ…様?」
「まあ、いいだろう。あの鎧は神殿騎士団の鎧だな。」
うわぁ…緊張するよ。
『ロイと呼べ』だなんて、イケメンに言われちゃうと特別な感じがして恥ずかしいわ。
きっと皇子様って呼ばれるのが好きじゃないんだろうね。
男同士なら友情が芽生えたってとこなんだけど。
アレスト様相手なら、あの美麗な顔をどアップで見ない限りこんな緊張しないんだけど。
まあ、いいや。
怪我人とかいるかもしれないし、行きましょう。
あ、あと、皇都の教会にあの侵入者達の家族が人質に取られてるって言ってたっけ。そちらも助けないとね。
うん、それはロイ様達にお願いしようかな。
私は…ちゃちゃっとボスとかダンジョンマスターみたいなの倒しに行かないとね。マリアナちゃんの皇帝陛下も心配だし。
私の浄化が効けば、一発なんだけど。
上手く行けばいいなっ。




