15 外出禁止
「邸からは出ちゃ駄目」
とうさまも、かあさまも、口を揃えて言う。
何か理由があるのかしら。
5歳児だから?それはあるかもしれない。
ある日、1階のとうさまの執務室の前を通った時、とうさまらしくない、荒げた声が聞こえた。
「その件はすでにお断りしたはず!我が娘はまだ5歳なのです。侯爵様のお年は50を越えていらっしゃる。もう、話は終わりです。侯爵様には何度申し込まれても困りますとお伝えください!」
…なんだろう。私の事よね?
執務室の扉が開く気配を感じ、素早く角に身を隠す。
そっと覗くと、出てきた人物は鋭い目つきで扉を睨んでいた。正確に言えば、扉の中のとうさまを睨んでいた。
その人を素早く鑑定する。
グロル(人族)
38歳
暗殺者
Lv30
…ヤバ。これ裏の人だ。
気づかれたらまずい気がして、その場を素早く離れた。
これは、私に関係してる事は間違いない。とうさまと、かあさまにはきっちり話していただこう。
だって、お庭にさえ出られない外出禁止令なんて、絶対これが関係してる気がする。
さっきの男が居なくなってから、執務室の扉をノックして、返事はなかったが、緊急なので中に入った。中には、かあさまも一緒にいて、二人とも深刻な顔をしていた。
「とうさま、かあさま。先程の男は誰ですか?私に関係してるのはわかっております。どうか、教えてください。何も知らされなければ、対処も出来ません。」
そう言うと、二人はびっくりした様子でこちらを呆然と見た。
…ちょっと、5歳児っぽくないけど、仕方がないのよ。結局、どうしたら幼児の会話になるのかわかんないんだもの。
とうさまは、かあさまと顔を見合わせた後、こちらに向き直り話してくれた。
要は、私に婚約の申し込みが殺到していて、その中でも特に、先程の侯爵家がしつこく申し込んで来るのだそう。そして、その侯爵はなんと53歳のおっさんらしい。
…5歳だよ?ロリ好きにも程がある。犯罪よ?ってか無理。
とうさま、断ってくれてありがとうございます。
何故、そんな事態になってしまったのかは、王都へいって、精霊魔法士の職を授かった件が、大きく関係しているらしい。
だが、そのロリ侯爵は別の理由。王都の大教会で私を見てからしつこいらしい。キモい。
そして、王都からの帰り道、襲われたのはあの魔物の時だけじゃなく、私が気絶した後、盗賊と思しき者たちの襲撃を受けたとの事。それが、必ずしも侯爵の手の者とは限らないのだが、怪しい前例があるそうで、警戒しているのだと。
もし、迂闊に邸の外に出て攫われでもしたらいけないので、可哀想だが、外出禁止令を出していたのだと教えてくれた。
うん。魔法の練習は邸の中で出来るものだけやろうっと。
だけど…あの男の目。嫌な感じだった。気をつけよう。




