132 あぁ…色々ままならないなぁ
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私は兄様を伴い、砂漠ダンジョンの村の付近へと転移した。突然私達が村の中に現れたらびっくりされるし、騒ぎになったら面倒だから。
上手く街道から少し離れた岩陰に転移できた。本当は小さな林とかがあったら木に隠れられるんだけど、端っことは言えもう砂漠の中なので、岩とか枯れ木のような低木の植物しか生えて無い。
砂漠ダンジョンは既に元の賑わいを取り戻したようで、ディザの町へと繋がる街道は商人の馬車や冒険者達がたくさん往き来している。
…人が多すぎる。
こんな衆人環視の中で外壁を造ったら…まずいかな。まずいよね。
はぁ…これならあの事件の時に造ってしまえばよかった。父様に外出禁止を食らっていた時間も惜しかったな。
「…兄様、領都の冒険者ギルドに行きましょう。今は人が多過ぎてこの村の外壁は造れません。」
「フィア、そう気を落とすな。ちゃんと父様に外壁を建造したいと言ったのか?父様は反対しないと思うぞ。俺が領主ならすぐに許可してやるんだがまだ領主見習いだからな。父様の領主命が出されれば、周りの目も気にしなくても良くなる。例え、一晩で外壁が出来上がったとしても、領主がやったことだから大丈夫だろう。皆驚くだろうがな。」
うー…結局、国境壁も村の外壁も造れなかった。
ままならないなぁ…。
そして、私達は領都の冒険者ギルドに転移した。
転移先のギルドマスターの部屋には、珍しくソレストさんとクレストさんの兄弟が揃っていて、沢山の書類を前に忙しそうにしていた。
「こんにちは。お邪魔します。魔物の換金に来たんですが。お忙しそう…ですね。」
「ああ。こんにちは。うん、ちょっとだけ。冒険者ギルドの支所の新設の件でね。えーっと…もしかして、魔物はあのサンドワームかな?」
「はい。アレはでっかいのでいつものお部屋でも入らないんですが、どうします?」
そうだ。よく考えてみたら、アレはデカすぎる。まさか引き取ってもらえない?それは困る。いや、別にこのまま、箪笥の肥やしならぬ万能庫の肥やしにしても困らないとは思うけど。私の万能庫の容量は多分無限だから…。
「あーっと…うん。じゃあ、地下の修練場に行こうか。あそこくらいしか無理だから。クレスト、解体の手続きを。あと、討伐証明も更新するから、ミレーナも呼んで。」
「良かった。買い取ってもらえるんですね。」
「アレは滅多にと言うか、殆ど討伐されてない稀少な魔物だから、当然引き取るよ。魔法や物理両方に強いから、防具として需要があるだろう。」
え。思ったほど強いと思わなかったんだけど…。
ま、いっか。みんなの役に立つんなら、サンドワームは全部出そう。
ダンジョンで手に入れたのも売ろうと思ってたけど、何かに使えるかもしれないから、やめておく。
もちろん、高級キノコは食べるよ。




