閑話 アレスト・バルディア
お読みいただきありがとうございます。
本日2回目の投稿です。
〜王子の願い〜
「何故ですか!」
「…ならん。これは決定事項だ。本当は解っておるのであろう?お前はこの王国の第1王子なのだぞ。万が一にも何かあってはならないのだ。」
「恐れながら、私は次期国王を辞したいのです。今のまま…第2王子のブレストが次期国王となるのが要らぬ争いを起こさずに済むのです!私は…」
「それは、お前の病気、いや、あの忌まわしい呪いの所為で、一時的な国家の安定の為、第2王子のブレストを次期国王に据える検討をしていただけだ。ブレストは次期国王では無い。今何ら憂いの無い第1王子のお前の次期国王は決定しているのだ……話が逸れてしまったな。とにかく、今回ディラントの国境線警備の指揮は公爵家のベルクリフ・ルーデンスに任せる。」
…やはり、私の次期国王は辞すことが出来ないのか?だが、私は彼女の希望を叶えたい。一緒に冒険者になると…。
「それでは、私から提案させて頂いた学院のディラントへの移設は検討しても頂けないのでしょうか?」
「うむ…確かにあの娘が魔の森の脅威の正体を暴き、封じ込めたと報告を受けたが…。」
「では!魔の森の開拓を私に任せて頂きたいのです。王都から騎士学院、魔法学院をディラントへ移し、学院生の能力向上の訓練が魔の森で行えれば戦力増強になり、王家の悲願である旧王都を取り戻す日も近くなる筈です。」
「…それは、まだ次期尚早だ。新たな報告でグランダ皇国から我が国に対する干渉があったとギルドを通して報告が来た。現在ディラント領軍による作戦が実行されておる。詳細はまだ報告待ちだ。」
「まさか…またフィアルリーナを狙って?」
「いや、現在ディラント西の砂漠ダンジョンで何事か起きているとしかわからぬ。」
「父上、いえ、国王陛下、私がベルクリフ次期公爵とは別に増援部隊を指揮してディラントへ行く事をお許しください。私が直接…」
「ならん。それならば、第2王子のブレストに行かせる。よいな。この話はこれで終わりだ。」
「陛下!…父上!」
今のディラントはそんなに危険な状況なのか?彼女は大丈夫なのか…。
「アレスト。そんなにあの娘が心配か?…会いたいのであろう?ならば、堂々と会いに行けば良い。ディラントの戦闘に参加する事は許さんが、お前が婚約者に会いに行くのは許可しよう。我もお前があの娘を繋ぎとめておく事には賛成だからな。」
「は…はい。ありがとうございます!父上。」
「だが、学院はどうするのだ。」
「もちろん、私はまだ病み上がりですから、今年は休学致します。場合によっては来年もですね。」
あんなうるさい女共に追いかけ回されては、鍛錬にも集中できぬし、彼女が学院に入学するのは2年後、出来れば彼女との学院生活が増える方が良い。
「ふ…我儘な奴だ。まあ良い。我の調べでは貴族の中には、いまだあの娘の力を諦めておらん奴らもいる。気をつけよ。フィアルリーナによろしくな。」
「はい。畏まりました。父上。」
父上に冒険者になりたいとはまだ言い出せなかったが、貴女のいるディラントに行くことを許して頂けた。
すぐに逢いに行きますから。
待っていて下さいね。私の愛しい姫。
と…忘れられていないと良いのだけれど…ね。
王都から辺境ディラントまでは約一週間程かかります。
第1王子、第2王子、次期公爵達がディラントに到着するまでにグランダ皇国を落ち着かせたいなぁなんて思ってるんですが…。
どうにも言うことを聞かない主人公なので…。




