13散歩がしたい
エリーちゃんにお風呂についてや、他のことも色々聞いてみた。
エリーちゃんをちゃん付けで呼んだら、使用人は呼び捨てにしないといけませんと窘められた。
エリーの答えは、端的に言えばどっぷり浸かれるお風呂はないという。庶民は水浴びをしたり、身体を拭くだけ。
お風呂にゆっくり浸かれる大きな湯船があるのは、王族や大貴族くらいだそうで、普通の貴族は深めのたらいのようなものにお湯を沸かし、お風呂の代わりにするのが多いのだそう。悲しい。
いつか、ほっこりお風呂を実現させる事も目標にいれた。
うちは辺境伯爵家で、特に貧乏貴族とかではないのだけれども、王都から少しだけ遠くて、魔の森に近い領地のディラント辺境伯爵領。
イケメンとうさまは、ダルグレット・ディラント辺境伯。聖騎士の職業を持っていて、そこそこ強いらしい。王様からの信任を得て魔の森からの防衛を任されている。
超絶美女かあさまは、シルリーナ・ディラント。精霊術師で、私の職業の精霊魔法士とはちょっと違う。精霊術師は精霊の助けを借りて、魔法を使うのは同じだけれど、攻撃力がないのだそう。
そして、精霊魔法士の私は、攻撃特化型魔法使いでした。好戦的になってしまったのは、職業のせいかしら?
顔を良く覚えていないのでわからないが、多分イケメンではないかと思われる兄様の名前が、アルフレット。魔法剣士。現在王都の騎士学校にいる。
弟はエルドレット。まるで天使のように可愛い。まだ2歳なのであと3年もしたら、職業が判る。かあさまの家系が強く出れば、魔力が多くて、精霊を冠した職になる可能性が高く、とうさまの家系ならば剣士系の職が多いらしい。
職業に士が付けば攻撃系、師が付けば非攻撃系か生産系だということだ。
かあさまが、弟のエルドレットを連れてよく私の様子を見にくる。
とうさまは最近特にとても忙しくてなかなか会えない。
王都からの帰り道、私達の馬車が襲われた事からもわかるように、領地周辺の魔物が増えているのではないかと、たくさんの報告が寄せられているそうで、その対応に追われている。
このディラント領は魔の森に近いので、定期的に魔の森の魔物を間引いたり、この前襲ってきたオークやゴブリンが集落を作ってないか調査を行い、衛兵の手が足りなければ、冒険者ギルドに依頼を出すように対策を取らねばならない。
…エリーは若い女の子なのに、以外と情報通であった。てっきりドジっ子属性メイドだと思いきや、見た目ほんわかのしっかり諜報系だった。もう少しレベルが上がれば、私の護衛の為のバトルメイドに転職したいのだそうです。恐るべし。
今日も天使が来ている。エルドとかあさま。
「ねえしゃま、はやくげんきになって?」私のベッドの端に両手を掛け顎を乗せるようにしてこちらを見ている。ふわふわのプラチナゴールドの髪で前髪の一房が濃紺の髪。かあさまと同じアップルグリーンの大きな瞳。大きくなったら、さぞやモテるでしょう。
おいでと言うと、ベッドに一生懸命よじ登るようにして上がって私の所に来るの。そしてぴとっと私にくっついてくる。
ふあぁ…可愛い。エルドが可愛いすぎる。
そして、実はエルドの周りにもかあさまの周りにも精霊達が舞っています。
だから、多分エルドも精霊系の魔法使いになるだろうと思っている。
私はとっくに元気なのよー?
翌日、私はようやくベッドから解放されることとなった。




