113 送りました。
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「こんな物を全員が持っておりました。…一体何でしょう。それと、リグトス子爵様の仰るには、グランダ皇国の者ではありますが、ガルダート信者特有の気配は感じられないそうです。身形から盗賊でもなさそうです。」
気絶した侵入者達の身包みを剥がし、調べていた兵士からガダン兵長が受け取り父様に見せる。
「皆、腰に着けていた物です。中身は粉の様な物だそうです。まさか…毒でしょうか?」
あれ?なんかむかーし見た記憶がある小汚い小袋…似てるだけかもしれない。けど、そうなら持ってたら良くない物なんだけど。
…魔物寄せだろうか?
「迂闊に扱ったら危険な物かもしれません。厳重に保管して、領都に戻って調べた方がよろしいかと。」
「父様。私、それが何なのか調べられます。」
万能庫に入れれば名前が分かる。もし魔物寄せなら持ってたら不味い。迂闊に持って歩けば魔物を引き寄せてしまう。毒かもしれないし、良くない物なら私が万能庫に永久封印する。
「あ!フィア!」
半ば引っ手繰る様に奪い、入庫した…すると。
『魔物避け』…?
前世のあの時持ち物に忍ばされた、魔物寄せとは反対の物?
『魔物寄せ』が作れるんなら、『魔物避け』も作れるのかもしれない。
『隷属の首輪』も『呪いの女神像』もガルダート教皇一族が作ってあの豚侯爵に渡してたのよね。
改めて考えるとホントろくなもん作らないわね…。魔物避けは…役に立ちそうだけど、密入国に使うなんて最低ね。
ん?じゃあ100年前、私に渡した荷物に魔物寄せ(と呪いの剣)を入れたのがグランダ皇国の息のかかった者?当時のバルト侯爵とか…。
「フィア…調べるとは?だが危険な物かもしれんのだ。早く返しなさい。」
「ごめんなさい父様。でも判りました。これは『魔物避け』と言う物です。一瞬、効果の違う物と勘違いしてしまいました。直ぐに調べなくては運搬するにも危険な物でしたので…」
「…魔物避け?そんな物があるのか?…では、この賊はコレの効果で砂漠を越えて来たのか!リグトス卿は魔物を操る魔道具があるらしいと言っていたが、このことだったか。確かにコレを持っているだけで魔物に襲われないのは有用だな。」
「そう思われます。私は魔物寄せの方だと思ってしまって、慌てて確かめたのです…ごめんなさい。」
「ま…魔物寄せ?そんな物を持ち歩けば忽ち魔物に襲われるぞ……まさかディザの町が魔物に囲まれたのは魔物寄せを運び込まれているからではないのか!?」
その可能性はある。砂漠のダンジョンを手に入れる為、ディザの町の周りを魔物だらけにしてディラント領から分断し、ディザの町を拠点にしようとでもしたのかしらね。もうこれはバルディア王国に対する侵略でしょ。
んー…でも、ダンジョンから出た物資をどうやってグランダ皇国まで運んでいたのかしら。
冒険者達は、ディザの町に冒険者ギルドが無いから、ディラントの冒険者ギルドまでドロップアイテムを運び換金している。
そうね…冒険者ギルドの無いディザの町なら潜みやすいだろうから敵の拠点があるかもしれない。何と言ってもグランダ皇国には転移魔法陣の技術がある。ディザから砂漠の国境の向こうに転移させるくらいの魔法陣を設置してあるかもしれない。
「ガダン!ディザに早馬を!アルに知らせ至急町中を隈なく調査させるのだ。もし、本当に魔物寄せが運び込まれていたら不味い。それにそこに敵が潜んでいるかもしれんから注意しろと。」
「父様、伝令を送るだけなら私が。」
「そうか、フィアがいたな。助かる。直ぐに頼むぞ。」
そして、伝令の兵士を馬ごと転移させた。…多分、ディザに送れたと思う。
「…は?」
「送りました。」
「……そう…か。わかった。」
何?そんな呆れた顔で?便利でしょ?それでいいじゃない?
だって、私、ダンジョン潜るんだもん。エリー探しに行くんだもん。
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