閑話 グランダ皇国
〜ガルダート教皇の密談〜
「皇女と近衛兵長は確実に仕留めたか?」
「…何故か突然出現していた壁を越えるとアンデッドの大群が犇めいており、すぐにそれらに埋もれてしまい確かめ様がございませんでした。申し訳ございません。ですが、その前に負わせた傷は回復魔法やポーションで治癒出来ないほどの深手でございました。最早助からないと確信しております。」
「ふむ…まあ良い。もしアレらが生きていたとしても何も出来まい。バルディア国内に潜伏させている者どもに始末させれば良い。」
「しかしながら、バルト侯爵とは何故か連絡がつきません。何かあったのやも知れません。他の者からの連絡も途絶えておりまして…。」
「…何故それをすぐに報告しなかったのだ。」
「申し訳ございません。現バルト侯爵は少々悪癖がございまして、以前から度々同じような事がございました。今回もそうと考えていましたが、早急に配下を送り込んで調べさせます。」
「……バルディアに気取られたか…?」
◇◇◇
〜配下の独り言〜
「クソッ!何なんだこれは!」
こんな壁などすぐに越えてさっさとバルディア王都にいるバルト侯爵と接触しなければならないのに、先に壁を乗り越えた者達は、突如湧き出した大量のアンデッドの群れに叫び声を上げながら呑まれてしまった。
とてもではないが、こんな侵入用の軽装備ではアンデッドに囲まれれば一溜りも無い。神聖魔法を持つ魔法士でも連れて来なければ先へは進めん。
他に侵入出来る場所はないかと探し、試しに壁の無い魔の森に入り込もうとした者は、突然動き出したトレントに貫かれ息絶えた。
そして、反対側の壁の無い砂漠地帯には入れない。何故か?サンドワームが地中で獲物が来るのを待ち構えているからだ。砂漠に足を踏み入れたら最後、全長10メートル程もある巨大なサンドワームに丸呑みされる。ここは罪人の処刑にも使われる場所なのだ。
「至急、皇都へ戻り魔法士を連れて来い。」
ガルダート教の者が到着し、順調に歩を進める事が出来たのだが…。
「何なんだ!この馬鹿高い壁は!」
行き着いた先に見たのは美しく聳え立つ真っ白な壁だった。確かに初めから見えていた壁だったのだが、こうして改めて目の前にするととても跳躍で越えられるものでなく、よじ登ろうとしたが誰も登れる者がおらず、途方にくれた。
何処か越えられる所は無いかと壁伝いに行くと…大量のオークが待ち構えていた。この小数の兵ではオークの群れを殲滅するのは不可能だ。慌てて亡者の原に引き返すとオークはそれ以上追っては来ず皆一様に胸を撫で下ろした。
反対側も調べてみたが、この壁で塞がれていて行き止まりとなっていた。
「…一体…何なのだ…この地獄は…戻るしか、無いのか…?」
そして、我らは叱責される事を覚悟して、新たな指示を仰ぐべく皇都に戻る事にした…。




