94 ハクのお気に入りの場所
思いついた事がある。
父様なら、また変な事じゃないだろうな…とか言うかもしれない。でもね、そんな事はないよ!ディラント領都の為になる事しか考えて…無いですよ。
そう、スラムを無くす事に関係しているのよ。
あのスラムの人達は明らかに怪我や病気で働けないのが見て取れた。まあ、中にはそれに紛れて盗賊とか犯罪者も紛れていたけどね。
健康ならば、お年寄りでも働く気力が出る筈よ。
だけど治癒師に頼むと料金がかかって、それを払えないから治せないんだもの、悪循環よね。まあ、治癒師も生活かかってるからね。
ならば…私が治せばいいのよ!
私は領主の娘で恵まれてるから衣食住の心配は無いんだもの。貧しい人達から料金なんて取る必要はないわよ。稼ぐなら他で稼ぐわ。
治癒院を構えて無料とかにすると、治癒師ギルドから横槍が入る可能性があるから(お金の無い人を治さない癖に勝手よね)、不定期にスラムに現れる謎の人物…って感じで通りすがりにさりげなく治したりすれば良いかな。勿論、目を付けられる前に短期で終わらせるけど。
父様に頼んで職安的な所をスラム近くに開設してその人の適正を調べてお仕事を斡旋したり、領軍(所謂公務員ね)にスカウトしたら、スラムを無くす事が出来るかもしれない。
なんて考えながら、ハクのいる東に向かって歩く。本当は目視できる範囲に行ける転移を何度も使ったら早いんだけど、森のお掃除(魔物退治)をしつつマップの空白部分を埋めながら歩いている。
魔物は炎ちゃんと雷ちゃんが、いつもの様に自動で片付けてくれているので、私はのんびりと考え事しながら歩いている。
ハクやソレストさんがダンジョン魔物をかなり頑張って消してくれたみたいで、此方の東側方面も大分拓けてきた。
あれ?…これは…遺跡?
なんだか崩れて原型を留めてはいないが、確かに何か建造物があったような痕跡がある。それにかなり広く石畳みが敷かれている。
…ここに町があった?
そしてマップを見るとこの先にハクが居る様だ。
ハクはその遺跡の様な場所でまるで日向ぼっこをするみたいに寛いでいた。周りに魔物は全く居なくて、ここは安全な場所なのだろうか。
「ハク…寝てるの?」
ピクリとハクの耳が動いてこっちを向いた。
『フィア。ぼく、まりょくへったらここでねる。いつもそうしてた。ここがおきにいりのばしょ。ここ、フィアとおなじ、かいふくする。』
「そう、ここが前に言ってたハクのお気に入りの場所?ここで眠ると魔力が回復するの?すごい場所なのね。だけど、ここは一体何が建ってたのかな。もしかして、教会とか神殿かしら…。」
「違うよ。ここは旧王都、王城があった場所なんだよフィアちゃん。」
「ソレストさん…。」
「君の獣魔がここで寝てるってことはフェンリルの住処だったのか。」
じゃあ…ここは…この場所は…前世の私が…!
私は慌ててハクの近くまで駆け寄り周りを見渡した。
一瞬、自分の遺体の一部、骨とか残ってるんじゃないかと思ったんだ。だけど何も残ってなかった。悲しい様な、ホッとした様な…魔物に食べられちゃったのかな…うう。
「ねえ、ハク。ここに何か残ってなかった?」
『ううん。なにもなかった。ぼく、ここでうまれた。めがみさまのまりょく、たくさんあるだけ。』
「フィアちゃん、ここは何故か魔物が近寄らない場所なんだ。約100年前、伝説の聖女が護った場所と伝えられているんだよ。でも、聖女様を見つける事は出来なかった。それにしてもフェンリルがここに住んでたなんて知らなかったよ。俺が昔ここを見つけたんだけど、その時鉢合わせしなくて良かったよ。」




