90 魔法士
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翌朝、ハクを抱っこして父様の執務室に向かうと父様、兵長、5人の魔法士らしき兵士がいた。
「おはようございます。父様、ここにいらっしゃる方々で全員ですか?」
「おはようフィア。すまないが早速頼むよ。」
「はい、父様。それでは、皆様私の周りに集まって頂けますか?近くに寄るだけで大丈夫ですから。」
「フィア、触れていなくても本当に大丈夫なのか?」
大丈夫ですよー。ちゃんと実証済みです。マップって本当に便利なのですよー。
「大丈夫です。でも先に冒険者ギルドに行きますね。転移。」
一瞬の浮遊感。周りの様子が変わり、執務室からギルドマスターの部屋に転移した。
「「「「「おおーっ!」」」」」
うおっ!びっくりしたー…。今日初転移の新顔5人組の雄叫びだった。
…まあ、気持ちはわかるよ。だけどそんなキラキラした瞳で8歳の女児を見るのはヤメテ。
「おはようございます。ソレストさん。お迎えに来ましたー。」
「おはよう。フィアちゃん…おはようございます。ディラント侯爵。まさかご一緒にいらっしゃるとは思っておりませんでしたが、魔の森まで宜しくお願い致します。」
「いや、フィアが色々世話になっているそうで、感謝している。冒険者ギルドにはこれからも協力してもらわねばならないのだ。宜しく頼む、ソレスト殿。」
そして、私達は魔の森の中、あのダンジョンの壁近くに転移した。
「ここがダンジョンのある場所ですか。」
「そうです。ちょっと見てみますか?ソレストさん。トレントの攻撃が飛んでくるかもしれませんが、防御しつつ壁の上に乗れば大丈夫ですよ。」
私がそう言うと同時にソレストさんは一瞬で跳躍し、壁の上に乗った。
私も続いて転移で壁の上に移動し、中を覗くとダンジョンの穴の外に出ている魔物は昨日よりも減っていた。大分流出速度が落ちてきた様だわ。スタンピードが収まってきたのかもしれない。
「数は少ないから大丈夫そうですね。まずは魔法士さん達に攻撃してもらいましょう。父様よろしいでしょうか?」
「ああ、やってみてくれ。」
けど、領軍の魔法士は壁の上に乗る術を持っていない様で私やソレストさんの様には登れず…。
「壁の外側に階段をつけますね。」
土ーちゃんに頼んで円形の壁の外側に沿う様に階段をつけてみた。
また、魔法士さん達のキラキラした瞳が私に向けられて、居心地が悪い。あまり観られると緊張します。さっさと攻撃テストしちゃって下さいね。
そうだわ。後で父様にエルドのレベル上げの話をしなきゃ。ここの安全性が確保されたらエルドをここへ連れて来たい。
魔法士さん達が炎魔法を放ち始めた。
ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアーランス、ファイアーストームという具合に初級、中級炎魔法を放った。中級魔法までしか普及してないから。上級魔法が使える人は数少ないので、王都の宮廷魔法士になってしまうらしい。
うーん…なるほど。やっぱり一般的に一撃では無理なのね。一撃で倒す私とソレストさんが異常なのが理解出来た。
大体、初級魔法ファイアーボールなら10回、中級魔法ファイアーランスなら5回くらいでトレントを倒せる様です。
初級複数魔法ファイアーアローは5本程当てられればトレント1匹、中級範囲魔法ファイアーストームを3人同時で放てばトレント5匹を倒せた…けれど、そこで彼等は力尽きた(死んでないよ!)。
おお!ここで昨日の夜せっせと創ったオレンジジュース…もとい、美味しい魔力ポーションの実験台に…まぁいいか。早速飲ませちゃお。
でもどれくらい飲ませたら効果が出るのかわからん…どうしようかな。




