87 お夕食の後で
自分の部屋に転移すると、人影が…。また兄様かと思いきや、エルドレットだった。まあ、兄様は私のベッドの上には乗らないね。
エルドは私のベッドの上で天使の寝顔で眠っている…可愛い。
私を待っていて、疲れて眠っちゃったんでしょうね。何かご用でもあったのかな?最近忙しくて遊んであげられないからかもしれない。
だけど、エルドはまだ5歳。魔物の討伐に連れて行く訳にはいかないし。ごめんね。
ハクをベッドの上にそっと降ろし、眠っているエルドの可愛い顔を見つつ頭を撫でると柔らかな白銀の髪がふわふわで心地よい。
「ん…ねえさま?お帰りになった?僕、ねえさまに聞いて欲しい事があったの。だからお部屋で待ってたの。勝手にお部屋に入ってごめんなさい…。」
エルド、お話が上手に出来る様になってきたわね。姉様は嬉しいわ。
「ただいま。エルド。良いのよ。待ち疲れて眠ってしまったのね?私にお話ししたい事が何か凄く楽しみだけれど、もうお夕食の時間だから、先ずはご飯を食べてからね。さあ、食堂に行きましょうね。」
「ねえさま、この生き物はなに?白くて柔らかそう。…触ってもいい?」
ハクに気付いたエルドが私に聞いてくる。
ああ、なんて良い子なの?考え無しにいきなり触ったりせずに慎重に行動するのは良い事よ。今日会った大人たちに爪の垢でも煎じて飲ませたいわ。もう、いい男になるのは間違いないわね!将来が楽しみです。
「この子はハクって名前でフェンリルっていう生き物よ。今日姉様が従魔にしたの。今は眠ってるから、後でね。いい?」
「はい。ねえさま、お夕食の後でまたねえさまのお部屋に来てもいい?」
「ええ、じゃあその時にハクを撫でてあげてね。エルドのお話も聴きたいわ。」
そして、私達が食堂へ行くと入り口の所で兄様が腕組みをして立っていた…。どうかしたのかと思ったら、なんだかムッツリして、拗ねてる?
「兄様、ただいま帰りました。…どうかなさったのですか?さあ、座りましょ?」
兄様の手を取り、にっこり笑顔で手を引いて歩く。
「ぅ…あ、ああ。お帰り。…遅かったな。」
あー、私の帰りが遅くて心配させちゃったのね。ごめんなさい。だけど、兄様もお仕事あったでしょ?それにそんなに心配しなくても大丈夫なのにね。心配性ね。
父様と母様は既に席に着いていた。
「フィア、後で執務室に来てくれるか。これからの予定を話す。」
え、どうしよう。エルド…うん、ハクに相手してもらおう。
「わかりました。後で執務室に参ります。」
そして、エルドを見るとガッカリした様子が見えた。
「エルド、食べ終わったらすぐに姉様のお部屋に来てね。ハクを紹介するわ。良かったら姉様が父様に呼ばれている間、ハクと遊んであげてくれる?」
すると、忽ち笑顔になった…可愛い…。
「はい!ねえさま。僕、あの子のお相手しながらまってる!」
そして、夕食を食べ終わると、父様と母様はすぐに執務室へ何事か相談しながら行ってしまった。母様は父様の秘書の様な事もしているのだ。主にスケジュール管理ね。




