9メイドさん
振り向いた先には、こちらをガン見して固まってるメイドさんがいた。
緑の瞳、明るい栗色の髪を後ろで三つ編みにしている。
鑑定したいけど、人相手だと声に出して唱えるのは難しい。目の前で『鑑定』なんて言ったらばれてしまう。誰だって、個人情報を勝手に見られるのは嫌だろうし。
でも、この世界は危険がいっぱいあるようだから、鑑定は必須になっていくと思う。
私が安全に生活して行けるように。
何か口に出さなくてもいい方法はないだろうか。
例えば、無詠唱とかってスキルはないのかな?そしたら、発動したのを悟られる危険が減ると思う。
落ち着いたら、方法を探してみよう。
今は、このメイドさんの名前を知らなければならないのよっ!ピーンチ!なんとか記憶にないだろうか?
なぜか思い出せない…記憶にはないみたいだ…
…仕方ない。私はにっこり笑顔を作りながら、
ちっちゃく掠れるような声で「かんてい」っと、まるで腹話術のように言ってみた。
おお…成功したよ。
エリー(人族)
13歳
メイド
Lv2
…え?これだけ?自分のステータスは細かく見れるけど、他人のものは名前、種族、年齢、職業とレベルだけなのかしら。
まあ、そんな詳しく見せられても情報で頭パンクしちゃうしね。
こんなに気まずい空気の中、エリーちゃんは固まったままで…
「あの、エリー…ちゃん?」
「は…?はいっ!エリーですっ!よろしくお願いしますっ!」
…しまったっ!もしかして、初対面のメイドさんだった?!
「旦那様がたを呼んで参りますっ!」
エリーちゃんはそう叫んで部屋を飛び出して行ってしまった。
うん。さっきのイロイロな私の奇行は気づかれていない。取り敢えず良しとしよう。




