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仲間になってくれますか?

改稿、順番の入れ替えを行いました。




「皆さんがここに入学してからもうすぐ一年が経ちます。そろそろ仲のいい友達や、中にはパーティ組んで連携を学び始めている人たちもいるでしょう」




校庭には1年生と2年生がクラス関係なく勢揃いしている。

今日この場で講義を担当しているのは、槍使い《ランサー》であるフレイヤ先生だ。



見た目はどうみても20代にしか見えず、スタイルも抜群の彼女は、大人でありながら性格も気さくとあって、男子はもちろん女子にも一番人気の先生である。


旦那さんと一人の子持ちであるこの先生は、結婚と同時に冒険者を引退。

その後、講師として指導する事を選び現在に至るそうだ。




「そこで、本日は先輩である2年生たちにも来てもらい、合同訓練をしてもらおうと思います。組み合わせは自由、これなら勝てると思った人同士で即席パーティを作りましょう。・・あっ、でもソロは駄目だぞっ♡」




何故か可愛く締めるフレイヤ先生、3◯歳。



うぉぉぉおおおおおおぉっ!!



やっと実践的な訓練が出来る。


今までが基礎的なものばかりで、退屈していた生徒たちは大いに喜び、早速仲間たちで集まり始めた。




「やべぇ、俺親しい奴なんていないぞ?」




しかし当然例外はいるわけで、それがここにいるソロ代表のクルス君である。


彼にとってこれは、最も難易度の高い条件だ、・・・だって友達がいない。




慌てて周りを見てみると、同じクラス内だけでなく、魔法科の生徒や魔物使いなど他のクラスの連中とも、仲良く話している姿があちこちで目についた。




「いったい、いつの間に知り合ったんだ?」


「それはみんなが仲間の大切さを良く知っているからよ、クルス君」


「え、だれ?」




一人でオロオロしていたクルスは、まさか自分に話かける者がいるとは思いもせず、ビックリして振り返った。




「・・・フレイヤ先生」


「はい、フレイヤ先生ですよ、お困りのようですね?」




そこにはこの現況を作り出した張本人が、ニコニコと人のいい笑みを浮かべていた。




「はい・・実は俺、声をかけられそうな友達がいなくて・・って、先生は俺の名前を?」




その笑みに負けて、つい弱音を吐いてしまったが、ふとさっき自分の名前を呼ばれた事に気がついた。




「ええ、よく知っていますよ、一年生でソロの活動を続けているのでしょう?」




その一言で理解した。


この人は最初からクルスが孤立するのがわかっていたのだろう。

だから真っ先に声をかけて来たのだ。


だけど、何故だ。




「そんなに警戒しないで、別に責めているわけではないのよ。ただね、こうして見ればわかると思うけど、集団戦をソロで切り抜けるには限界があるわ。それがダンジョンだったら尚更よ。例えばあそこのグループを見てみて?」




先生に言われてそちらを見ると、確かに。


うちのクラスでもトップを競う二人が勝つためにチームを組んでいた。

他にも魔法科でよく成績上位に入っている生徒の姿も見えた。




彼らとは、日頃の訓練で何度か手合わせをした事があるが、1対1でも勝った事などないのに、あのメンバーを揃えた彼らにソロで挑むのは、無謀以外の何者でもないだろう。




「普段はいいかも知れないけどね、モンスター相手にこの状況になったらまず生きて帰れないわ」


「俺も少しは誰かと協力する事を知らなくてはならない、そういう授業なんですねこれ」


「正解」




詳しく聞いて見ると、これから冒険者になる者たち同士の横の繋がりを強くする事も、この学校の設立目的に含まれているそうだ。




「話はわかりましたが、以前僕に知り合いがいない事は変わりません。まさか先生が、組んでくれるわけではないですよね?」


「あははー、流石にそれはないかな。それだと勝負にならなくなっちゃうし、そういう口説き文句は若い子にしてあげてね?」




クルスは今更になって、自分が誤解されるような事を言ってしまった事に気付き、かぁ〜〜っと顔に血が昇るのを感じた。


しかしこの先生、今サラッとこの中で最強であると言い切った。




「ふふふ、からかい過ぎてしまったわね。ではお詫びと言ってはなんですが、そんなクルス君に華を添えてあげましょう。・・ヘンリエッタ、ちょっとこっちに来てくれる?」


「え?・・・何、どうしたの、お母さん?」


「こらっ、学校ではお母さんと呼んではいけません」




なんですと?


まさかこんな近い所に噂の娘さんがいたとは、思いもよらないクルスだった。




「今日はこちらのクルス君を入れてチームを組んでもらいます、出来ますね?」


「え、ええ、もちろんです。よろしくお願いしますね、クルスさん」


「え、いや俺は・・・」




いきなりヘンリエッタを紹介されたクルスが、戸惑いながらフレイヤ先生を見ると、彼女は目論見通りに事が運び、満足気な顔をしていた。



つまり、今の一連のやりとりは全て彼女の計画のうちで、しかもお詫びにと紹介されてしまっては、断れる雰囲気ではなかった。




「失礼しました。こちらこそよろしくお願いします、ヘンリエッタさん」


「うんうん、素直でよろしい」




ご機嫌そうなフレイヤ先生を横目に、クルスはもはや考えるのを諦め、ヘンリエッタへと右手を差し出したのだった。








「まずは自己紹介からですね、といっても同じクラスだから知ってるよね。でも一応、私はヘンリエッタ、志望役職はフレイヤ先生と同じランサーよ」


「じゃあ次はあたしっ!名前はチェルシー16歳、志望役職はスカウトだよっ!見ての通り獣人族だね」


「オカリナ、重戦士(ウォーリアー・・ドワーフ族よ。仲間としては認める・・だけどエッタに変な色目使ったらぶっ殺す」




初めて名前を知ったオカリナさん。

いきなりのぶっ殺す宣言に、クルスはいきなり不安になってきた。




「よ、よろしく、せいぜい気をつけるとするよ。俺はクルス、神官剣士だ」


「もう、オカリナはすぐにそうやって・・」


「神官剣士って何?神官なのに剣士なの?」




真面目なヘンリエッタがオカリナを注意している横で、好奇心旺盛なチェルシーがクルスに質問をした。




「あぁ、逆だよ。俺の場合は戦士だけどヒーリングが使えるって事。攻撃魔法が得意なら魔法剣士だね」




敢えて言わないが、ソロでは回復くらいできないと、ただの猪と変わらない。突っ込んで怪我をしたらそこまでなのだ。



それこそ剣聖クラスであるなら、そもそも怪我すらしないだろうが、まだ学生の彼には夢のまた夢である。




「なるほど、クルスは器用貧乏・・覚えておく」


「今日のオカリナは辛口だね!理由はわかるけどさ」


「はいはい、そこまで!グループが出来たなら、模擬戦の受付始めるから急いでね」


「「は〜〜い!」」




見かねたフレイヤ先生が急かし、クルスたちは作戦会議をする為に移動を開始したのだった。




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