私の日常③
お待たせしております。
もう間も無く、ダンジョンに潜りますので、お待ちください。
もしかしたら、シルヴィアの秘密の一部が明らかに?
しばらく窓際の席でウトウトと過ごしていると、休憩に入らせてもらったハンナさんが、こちらへやって来た。
「お待たせしました。ここ座ってもいいですか?」
どうやらハンナさんは、私を待たせたことを申し訳なく思っている様子。
うんうん、実に礼儀正しくていい子だ。
「気にしてませんよ、それより何かお話しましょう。あ、お腹空いてない?」
「うん、実はそうなの。もうお腹ぺこぺこです」
「えへへ〜」と笑うその笑顔はまさに天使。
よし、もう何でも好きなものを頼むといいのです。このお姉さんが許可しよう。
何がいいですか?
クラブサンド、ホワイトシチュー?あ、お子様ランチなんてものもあるではないですか!
私のおすすめは、このロベルタ牛の特級肉を使ったローストビーフですが・・・。
私がオーダーしようと手を上げると、それを見たローズさんが即座にやって来た。
「はい、ご注文をお伺いさせて頂きます」
「では、私はこの迷宮キノコを使ったクリームパスタを、そしてハンナさんには特製お子様ランチをお願いします」
「え、特製?・・いえっ!特製お子様ランチとキノコのクリームパスタですね。かしこまりました!」
そして来た時と同様に、再びシュピッと厨房に飛んで帰っていった。
おおっ、今のでこちらの意図を察してくれるとは、素晴らしいですねローズさん。
そうして10分ちょっとで料理が運ばれて来た。
「わぁ〜っ!見てみてっ、すごいよシルヴィーお姉ちゃん!果物もこんなにっ!?」
「ええ、凄く美味しそうですね」
運ばれて来たお子様ランチは、それはもう豪勢なラインナップだった。
ロベルタ牛のハンバーグに、十回芋のフライ、レインボーバードの卵、季節の果実などなど。
おそらく、これらはハンナさんの好きなものばかりで構成されたメニュー。
「きっと店長さんから、毎日お仕事を頑張っているハンナさんへのご褒美ですよ」
「そうなのかな?これ全部食べていいの?」
「もちろんです。むしろ残してしまったら、店長さんもガッカリです」
「うん!いっただっきまーす!!」
ニコニコとお子様ランチを美味しそうに食べるハンナさん。
これは店長に大きな借りが出来てしまったようだ。近いうちに迷宮産の特選食材でも差し入れるとしよう。
「一緒に食べるご飯は美味しいね〜〜」
「私も、ハンナさんとお食事出来て楽しいです」
私にとっても、この時間は至福の時である。
それにしても、こんなに可愛い子の旦那様になる人は、とんでもなく幸せ者だ。ぜひこの子には幸せになってほしい。
そうだ。
ここは一つ、私がお相手の方を見極めて上げる、というのはどうだろうか?
こ、これは名案だ!
ふ、まだ見ぬ運命の方。この私を認めさせなければ、手すら繋げないと知りなさい。
「クックックッ・・・」
「?」
突然笑い出した私を、ハンナさんが不思議そうに見ている。
ご安心をハンナさん。私がきっちりと調教してお届け致しますよ。
こうしてとんでもない邪魔者が現れた事など、まったく知らないハンナとシルヴィアによる、楽しいランチタイムは過ぎていった。
◇
久しぶりの癒しを得た私は、足取りも軽く次の目的地へと向かう。
ーー今日は後一つだけ済まさなければいけない用事があるのだ。