私の日常②
サポーターについてのお話です。
良かったら暇しているシルヴィアさんにお付き合いしてあげてください。
私はハンナちゃんが休憩に入るまでの時間を、いつもの席で潰すことにした。
この冒険者ギルドでは、ホールの一部を使い、昼は飲食店として、夜は酒場として営業している。
私がよく座っているこの席は、店内でも一番日当たりが良く、窓から大通りの景色が楽しめる最高の席だ。
そんな最高な席のはずなのだが、何故かここだけはほとんど空いている気がするのだから実に不思議だ。
他の人にもぜひここの良さを知ってもらいたいものである。
今日もいつも通りに空いているのでさっそく確保すると荷物を横に置く。顔を上げるといつの間にか可愛い店員さんが近くに立っていた。
「い、いらっしゃいませ!シルヴィア様でいらっしゃいますよね?私は3日前から働かせて頂く事になりました、ローズと申します。以後お見知り置き下さいませ」
「これはご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いしますね」
私から注文を取り終えると、ローズさんはキビキビとした動きで戻っていく。
すごく緊張されていたので、怖い顔でもしていたのかとすぐに手鏡を覗いてみる。この手の小物は中々高価だが、一般的な婦女子として必須のアイテムなので、当然わたしも持っている。
ふむ、特に変わったところはなさそうですが・・・、はて?
それにしても、私の名前もご存知だったみたいですし、今回の店員さんはとても勤勉な人みたいですね。
◇
さて、座って直ぐに注文をとりに来てくれたので、早くも暇になってしまいました。
せっかくなので、空いた時間に少し自己紹介でもしておきましょう。
私の名前はシルヴィア。
この街、ロベルタ・ガーデンを拠点に冒険者をしている可憐な乙女、華の◯歳です。
え?いまなにか・・歳が聞こえなかった?いやいやそんなまさか、気のせいではないですか?
気のせ・・、はい素直でよろしい。
こほん、まぁそんな事はどうでもいいのです。
私は所謂サポーターという仕事を生業にしています。
まぁ、早い話が荷物持ちというやつですね。
しかしただの荷物持ちと侮ることなかれ。サポートするという事は、食事から道案内までありとあらゆる技能を必要とする、意外と難しい役職なのですよ?
とはいうものの現実はなかなか厳しく、非常に残念な事ではありますが、世間でのサポーター職のイメージはあまりよろしくないのが現状です。
理由としてはサポーターをしているものの多くが、身寄りのない子どもだったり、怪我で戦えなくなった元冒険者だったりする事が、差別される原因となっているようなのです。
もちろん冒険者さん全員がそう思っている訳ではありませんが、『サポーター=冒険者になれなかった者』、という認識が広くなされてしまっているという事は事実なのです。
それに加えて、最近はタチの悪いサポーターもいるらしいとの噂を聞きました。
知り合いの話によると、なんでも男所帯の冒険者パーティが可愛いサポーターを連れてダンジョンに入って行くそうなのですが、その後悉くが重体で治療院に運び込まれるという事件が発生しているとか何とか。
おそらくは新しい美人局か何かだとは思うのですが、中には私の様にきちんとプロとして活動しているものもいるのですから、本当に迷惑な話です。
そのせいかどうかは知りませんが、実は私も探索中に男性からの邪な視線を感じる事があります。
どうやら、私は世間一般で美人と言われる分類に入るらしく、運が悪いとダンジョン内で、『夜の相手もサポーターの仕事だぜ、げっへっへ』とかほざく馬鹿が、ごく稀に出現したりもします。
まったく、ダンジョンで出現するのは魔物だけで充分だというのです。
もちろんそういう輩は、私の手によって例外なく潰して来たので、見知らぬ女性サポーター諸君、安心して欲しい。
握・即・潰である。
だからサポーターも多少の武術の心得は必要だと、私は思うのですよ。
ーーおや、気がつけばもうこんな時間ですね。
少しお喋りがすぎてしまいました。そろそろハンナさんが来る頃ですので、話の続きはいずれまた機会があればという事で・・・。