だって私、サポーターですから
皆様こんにちは。
今回はダンジョンものにしてみました。
キャラの魅力を全開にして書くつもりの今作、拙い文章ではありますが、何とか頑張って行こうと思いますのでよろしくです。
世界感などは追々広げて行きますので、長くゆっくりと読んでいって頂けたらと思います。
『「ぐァぁあああアアアアアッ!!!』」
激痛による絶叫とモンスターの叫び声が重なり、空気を震わせながら薄暗い洞窟の中を反響する。
モンスターによるバックアタックを受けたパーティ一行は、善戦したもののとうとう頼みの綱である、盾職の防御を突破されてしまった。
「ケイン!!」
「君はもういいっ、逃げろっ・・・・、がはっ!!」
その状況を見て立ち止まってしまった少女に、“逃げろ”と告げた槍使いの少年は、このパーティで中衛の一翼を担っていた。
しかし今、オークの棍棒を受け止め切れずに吹き飛ばされ、リーダーである大剣使いも、盾職のケインを助けに行って、やられてしまった。
唯一の魔法使いは、あっという間に魔力切れを起こし、早い段階から戦闘不能に陥っていた。
「・・・全滅」
初めは順調に進んでいた一行であったが、10階ボスを目前に挟撃を受けて、総崩れになってしまったのだ。
パーティメンバーが敗北するのを最後まで見届け、その場に立ち竦んだままの少女に、モンスター達が挙って迫ってくる。
敵はゴブリンとオークの混成部隊。
残されたのがたった一人の少女である事を考えると、大凡最悪の展開が予想出来てしまう。
ジワジワと間合いを詰められ、絶体絶命の彼女が声を発しようと口を開く。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ・・・情けない」
しかし、その小さな口から飛び出したのは、悲鳴でもなければ、助けを乞う懇願でもなかった。
「ここに私を誘った時の威勢の良さは、一体どこへ行ったの?」
その声に含まれるのは、僅かな失望に8割の呆れと、1割の怒り。
「でもまぁ、最後の最後で私の身を案じたランサー君に免じて、今回は許してあげます」
そして1割にも満たない、情けであった。
「あぁ、あなた達もなかなか良いタイミングでしたよ?でもそろそろ退場してください」
依然ただの獲物であるはずの少女は、まったく動じた様子もなく、それどころかモンスターたちにまで話しかけた。
モンスターたちも本能的に違和感を感じたようだが、彼女の口調と態度から馬鹿にされた事だけは理解出来たようで、殺気を漲らせながら一斉に襲いかかってきた。
「もう暑苦しい人たちですね。女性には優しくしないと嫌われてしまいますよ?」
彼女はやれやれとため息を吐くと、そのシルクの様にきめ細やかな髪を掻き上げ、深紅のルビーを想起させる瞳でモンスターたちを一望した。
しかしすぐに興味を失うと、そこらに倒れている仲間たちに応急処置を施しはじめた。
それが終わるとそこにあった小型の荷台に、縦横縦と重ねるように積み上げていく。
「か弱い婦女子に力仕事をさせるとは、なってませんね・・・やっぱり減点!」
そういうと、彼女はガラガラと音を立てながら、出口へと帰って行った。
◇
ーー誰もいなくなった、第10階層ボスエリア前の広場。
そこは広範囲に渡り真っ黒に焼け焦げ、岩肌の一部が完全に炭化してしまうほど、激しい戦いの痕跡だけが残されていた。