学校での認識
どうもー。少し遅くなりましたがこうして性懲りもなく投稿しました。
なにげに今回は書いていて個人的に上手く出来たお話です。主人公のクソチートっぷりもここからポンポン出してエンジンを回していきますので楽しみにしてください。
コメント、感想、指摘等、気になった点がありましたらポンポンコメント(罵倒)ください。
俺のアクセス権には明確に弱点がある。
それは知覚外からの攻撃、そして不意打ちだ。
それから弱点と言えなくても難点といえることは一々番号を打ってアクセスする過程が存在することだろうか。
例えばそのアクセスをする段階で、何かしら口にしようにもできない状況、改変しても効果が薄い状況、それらの状況に対して、俺が『アクセス権』だけで乗り切れるなんてことは一切ない。
どうしたって、それだけでは対応しきれない部分や、俺自身の問題で対応を間違えることもある。
それらをカバーするためには、当然万能とも思える『アクセス権』だけじゃ足りないのだ。
そう考えて、俺はよく使えると思った能力者の能力を『アクセス権』を行使して解析する。
それを脳内にデータとして保管しておき、そこからまた『アクセス権』を行使し保管した能力をデータを元に模倣することで元の能力者になんの影響もなく、その能力を使うことができる。
つまりは『アクセス権を使ったコピー』だ。
ただ、個人を解析するためには明言するために名前が必要なので、あらかじめ知っておく必要があるというのは難点と言えるだろう。
模倣した能力も解析したデータとは別で分ける必要があるため、数が多くなるにつれて模倣した能力を忘れてしまうことがある。だが、アクセス権を行使し解析したデータとともに模倣した能力を読み込めば難なく能力を行使することができるのだ。
「まぁつまりは、忘れたりしたらまた読み込む動作が入るから、よく使う能力は覚えるようにしてるんだよ。それを利用して、学校では<能力コピー>として認識させてある。」
「……聞けば聞くほど超チート。なんでもできそう……。」
「実際なんでもできるしな、この能力。」
そう、なんでもできる。
「ただ、生物を直接殺すこと以外は、とつくけど」
「……? ……生物を直接殺すこと以外ならなんでもできるの?」
「経験からしてな。」
「……そうなの?」
「ああ。ただ、模倣した能力の方はきちんと練習しないといけないがな。」
「……能力を模倣しても、使用者の能力経験までは模倣できないの?」
その質問に俺は内心驚嘆した。やはり静城の理解力は素晴らしいと思う。一見当たり前のことだろうと思うだろうが、意外とそのあたりまえが出てこないものだ。
静城の<空間操作>さえトンデモチートだが、その理解力も合わせれば鬼に金棒といえよう。
相手の能力を即時理解し、<空間操作>によって対策を立てつつ一方的にこちらの攻撃を当てにゆく。スタイルで言えば所謂ワンサイドゲームというスタイルに当てはまる。おっそろしいことこの上ない。
「そういう事だ。だから俺は能力を教える代わりに静城の能力経験を聞かせてもらいたいのさ。」
「……そう」
静城は端的に答える。
それを皮切りにするわけではないが、いい時間だし今回の能力説明はここまででいいか。
「じゃ、<空間操作>のことはまた今度聞かせてくれればいいから、さっさと昼飯食っちまおうぜ。」
今まで長々と能力説明をしていたから昼休み終了の予鈴まで残り十分。残りの弁当は約三分の一といったところ。静城はあと半分くらいだから、どうにか予鈴までには全部食えそうだ。
俺は食べ物を残さない主義なのである。
少しでも米粒が残っているとモヤモヤとしてしまうこの気持ち、共感せずとも理解は示して欲しいもんだ。
「……あ、あと十分……。」
「食えなさそうなら手伝うけどどうする?」
「……お願い。」
そう言って静城は自分の弁当を俺に向けて差し出してくる。
………え?
「え? まさか全部食べろとおっしゃいます?」
「……私じゃそんなに早く食べれないから。」
「…………。」
「……お願い。」
そういって、まさにあざとく顔の前で手を合わせおねだりを開始する静城。うん、すっごく可愛い。
だが、半分食べるから半分は食べてーというお願いならわかる。譲歩するにせよ急いでいるのに食べて欲しいとお願いをするなら、その辺りなら許容できる範囲にはなるだろう
だが、だ。三分の一残った俺の弁当を高速で食べてから、半分残った他人の弁当をも残り十分以内に食えと?
いくら静城の弁当が俺の弁当よりも少ないとはいえ、それは流石に無理な相談では?
「……ダメ?」
「……………。」
そこから始まったのは、純粋に己の胃と予鈴までの時間との闘いであった。
食べるだけでなく、高速で口を動かして次へ次へと進めなければ、俺の分は勿論、後ろに控える静城の半分残った弁当を完食する前に予冷が鳴ってしまう。
何か、「我々の業界ではご褒美です!!!」という空耳が聞こえてきそうである。
それから、弁当を食べ終えたあとに残ったのは静城の笑顔満点のありがとうという言葉と早食い及び食べ過ぎで吃驚し気持ち悪くなった俺の胃だけであった。
そこで丁度授業開始五分前の予鈴が鳴る。
「……じゃあ、またL○NEで呼ぶね。」
「そんときゃきちんと食べきれる量の弁当を持って来い……。」
「……あ、うん。」
そして静城は屋上から出て行った。
さっきの了承の言葉は信用なるのだろうか。
「さて、俺も戻るかね。」
まだ若干の気持ち悪さを残す体を極力揺すらずに、教室へ戻る。
あれ、何か忘れてる気が……しないでもない。
果たして、その感は正しかった。
「来たな黒谷、さあ聞かせてもらおうか。因みに、屋上で静城さんと一緒にいるのが観えたんだが、そこも含めて、聞かせてもらおうか!!」
教室の前で仁王立ちし、立ちふさがっていたのは遠見だった。
それも、遠見の能力である<千里眼>によって、どうやら屋上での一部始終を収められたらしく、それも相まって、俺は初めて遠見の顔が般若の様に見えた。
「さあ!!」
更に、遠見の話を聞きつけた多くのクラスメイトが多数俺の前に立ちふさがる。主に男子。
もしも捕まれば根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。実に面倒なことだ。
キーンコーンカーンコーン~
「三十六計逃げるに如かず! チャイム鳴ってんぜ!」
こういう時は、逃げるに限る。
そう言うやいなや、俺は神速で席へつき授業の姿勢をつくる。
他は当然置いてけぼりを食らって俺を追ってはこれていない。
「いつの間にっ。取り押さえろ! 尋問の刑だ!」
だが遠見を含むクラスメイト達がそれを許すはずもなく、俺を取り押さえようと走る。
だが生憎、この勝負はこちらの勝ちが確定しているのだ。
「お前ら何をしている。今は授業中だ。」
そう言って雰囲気タップリに教室へ入ってきたラスボス臭漂う見た目三十過ぎのおじ様は二年三組の古典担当、鳴沢國秀先生。
先生が入ってくるということは既に授業の時間へと移行している。
そう、なんといっても授業中なのだ。
我々が学校の生徒である以上、先生の言葉は絶対である!!
「フフフ……。」
勝ったぞ遠見。この戦い、我々の勝利だ!!!
生徒が何をしようが、学校という場に置いてルールに反することはできないはずだ。
「やるなら騒がずにさっさとにやれ。その間、自習にしておいてやる。」
「國秀センセー……ありがとうございます!」
「な……。」
酷い裏切りを見た。俺氏、唖然である。
鳴沢先生よ、それでもアンタ教師なのか。
「さて、黒谷ぃ。覚悟はいいかぁ……」
「先生!? それは教師として如何なものかと―――――――」
「捕らえろー!!」
「「「うおおおおおおおおお!!!」」」
遠見の号令に男子生徒は類を見ぬ一致団結をみせ、俺は即座に捕まることとなった。
この人数を相手に、流石にコピーした能力では対抗する事なんざ無理だった。
「じゃ、十分で終わらせてきます!」
「どの道中間テストまでの範囲は終わっている。もう少し長くなったとしてもかまわんよ。」
「ではー。」
そう言って遠見は國秀に敬礼をした後に黒谷を連れ去ったクラスメイト達の後を追った。
残ったのは一部の男子とクラスの女子、そして鳴沢國秀のみとなり、教室には何とも寂しい沈黙が訪れる。
「さて、一旦授業は自習とするが覚えておけ。ああいう馬鹿な出来事は、時に能力者として生きていく中でけっして少なくない。他人に協力を仰ぐなどして、自らの情報を必要最低限以外、極力秘匿するのだよ。そうすれば、ああいった事に巻き込まれる可能性が減る。一足先に勉強になっただろう?」
そう生徒達に自らの情報の大切さについて語る教師の顔には心底楽しそうな笑みが張り付いていた。
「ぶっちゃけ先生は面白そうだから許可したんじゃないんですか?」
「うむ、実際楽しさ八割授業二割だ。こういったことが起こるたびに、私は教師になって良かったと思っているよ」
黒谷蒼太の敗因。
それは二年三組古典担当の教師、鳴沢國秀は”面白いこと主義”であることだろう。
「チクショー」
そして黒谷はクラスメイトにこってりと尋問されたのであった。
先生やクラスメイト達をちょくちょく出しながら次の展開を考えるのはなかなか難しいですなぁ。
先生だって強いところ見せたいしまずは何をしようかと夢がひろがリングしております。
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2018/8/13、気になる所を少し修正
2019/8/13、加筆と修正