最後の木曜日
はい、連日投稿最終日の3話目です。この話以降はリアルの方で何かなければいつも通りの更新頻度となりますのでご了承ください。え? いつもいつ更新するのか分からないって? ああ、作者も知らない。
「あれ、お兄ちゃん?」
その声を聞いて、俺は言及を取りやめ、すぐさま声の方へ振り向いた。
案の定、そこには紅葉の姿が目に入る。
「……紅葉」
学校帰り、という訳でもなく、普通に私服だった。
ダメージジーンズに上はシャツとかなりラフな格好で、見る限り特に行く先を決めずにぶらぶらと街歩きをしていたのだろうと推察できる。
何せ、他に友達と予定があるのなら、今よりももっとおしゃれをする。そんな人間だ。
そんな突発的と言っていい紅葉の出現に呆けていると、まず最初に俺と遠見を見て、一言。
「……いじめ?」
「違う」
すぐさま否定した。即答だ。
すると、特徴的なツインテールを揺らし、今度は訝しげに俺をみる。
既に遠見の方を疑う線は消えているらしい。
「えっと……」
当然、これに置いて行かれているのは遠見だ。
多分、まず今の状況が分かってないんじゃないだろうか。
だがそんなことを気にしている程俺に余裕はない。兄としてこのまま妹にあらぬ誤解を持たれ続けるのは沽券に関わる。マジ、ヤバイ。
「……ん? あれ……? どこかで見たような……」
「あ、そこの蒼太の妹の黒谷紅葉です。兄がどうやら世話……? になってます」
「あ、こちらこそお世話に……紅葉? え、あの!?」
さて、どうやって疑いを晴らそうかと考えていると、挨拶を交わし始めた紅葉に遠見がなにやらおかしい反応を見せる。まるで有名人とどこかで鉢合わせたかのような、そんな反応だ。
いや、疑問に思うもよくよく考えてみれば、それほど不思議じゃないのかもしれない。
「前回日本マッチ初出場でベスト十六に入った化物新人!!」
この妹、やる気はない癖に結果を残す才能人なのだから。
だが、納得はしてもまさかここまで驚かれる程有名だとは知らなかった。思えば去年も紅葉と同じ黒谷の苗字を持つことから話のネタにされたかもしれないし、されなかったかもしれない気がする。
まあどちらにせよ、紅葉が話題性に富んでいることは確かであり、今この場は決して人通りが少ないとはいえない。それに遠見はそれなりに声を張って驚いた様子で、それは勿論周りに丸聞こえな訳で、言わずもがな目立つ訳で。
「紅葉……? え? ホントに?」
「えっどこどこ!?」
「は? 嘘だろ?」
「ホントだ! あそこにいる!!」
「お、俺と一回でもいいから勝負してくれー!!」
こういう鬱陶しいことになるわけである。
野次馬感覚の人間というのは、酷く度し難いものだ。人は好奇心一つで如何様にも醜くなれる。
それを体言するかのように、辺りを歩いていた人物の視線の大半は紅葉へと集まり、群がり始める。
「……しまった」
その様子を見て奇しくも原因となってしまった遠見はすぐに自身の過失に気づいていた。
それだけは評価できるが、どうせなら声をあげる前に気づいて欲しかったと心底思う。
「あーごめんね、今日持ってきた分しかやらないって決めてるからどれだけ頼まれても勝負しないし相手もできないよ」
「いやそれくらいなんて事ないよ、俺のフィールド使うからさ。一回だけ!」
「いやー……怒られるし……」
そう言って紅葉は俺を見る。それが何を意味するのか、嫌でもわかってしまう俺は露骨に顔をしかめる。
なんせそれをしたらほぼ確実に集団のヘイトは俺へ向くに決まっているからだ。
「誰? いいじゃん別に」
「しつこい、道空けて」
案の定視線が集まるが、紅葉に絡む男は一向に引く様子はない。
紅葉が強く言うも、変に頑なとして話を聞いてくれない。
「ね、頼むよ……少しだけでいいからさ」
「だから、今日はもう終わりです。諦めて帰ってもらえます? 警察呼びますよ」
「……おいおい、そうじゃないだろ……? そこは快く受けてくれるところでしょう?」
……なんだか、可笑しな方向に話が進んでいる気がする。
「お、おい黒谷、いいのか? 妹なんだろう? 何か可笑しいことになってきてる気が……」
「問題ない」
「は? おい妹だろ、放っておくってのかよ!」
「……違う」
確かに遠見の言う通り、あの可笑しな男が妹に何か危ない雰囲気を纏いながら近づいて行く様は、兄である俺にとって看過できるものじゃない。
普通なら、だ。
紅葉に限って、俺はその心配を殆どしていない。
これが薄情だと言うのなら、好きに言ってくれて構わない。
これを見ても、そう言えると言うのなら。
「はぁー……、最後の忠告でーす。マジでうざいんでやめてもらっていいですか?」
「はあ? 何言ってくれちゃってんの? 俺に向かって……ただ能力が強いだけで!? 去年の日本マッチでたった一回、好成績だったからって変な自信ついちゃってんじゃないの!?」
紅葉の酷く冷たい言葉は男に届かず、ただ自身の願望と幻想の混じった歪な、意味不明な言葉を羅列するにとどまる。
その瞬間から、紅葉にあった温度は忽然として姿を消した。
「あぁ、そうですか」
ただ一言。
それと共に、恐らくこの場の全員が耳にしたであろう低く大きな耳鳴り。
そして全く同時に、目の前の男は糸が切れた人形のようにパタリと倒れ動かなくなる。
この一連の流れを見て、心配する気など起きるだろうか。
「手を出す必要がないからな。あいつを心配する時なんてそれこそ死人が出そうな事件くらいなもんだよ」
そう言いつつ、俺は紅葉の方へと足を進める。思えば人ごみが増えてからかなり流された。こういう時程偶に滅んでくれねぇかなとアホはことを考えてしまうのはどうしてなのか。
「あーはいはい、どいてどいて、いまから兄と一緒に帰るんで」
紅葉の衝撃の一言によりギョッとする集団、俺もギョッとした。
そんな目立つようなことを言わないで欲しい。
集まった人を掻き分け、紅葉が近づいてくるたびに視線がザクザクと刺さる気がする。
「とりあえずここから離れよう?」
こっちへ来た後にっこりと笑みを浮かべた紅葉に軽く殺意を抱きつつ、ついでに遠見を連れてひとまずこの場を離れることにした。
◆◆◆◆
人だかりを離れ、落ち着ける場所へと向かいひとまず腰を落ち着けた。時間は大体五時近くで夕方に向けて太陽が丁度良い傾き具合になってきたところだが、まだまだ陽は高い。
で、その落ち着ける場所というのが――――――、
「と、言うわけよ」
――――――俺の家だった。
遠見もまさか紅葉に連れられて俺の家に来ることになるとは思っていなかったろうし、俺もまさか学校の教師以外で初めて俺の家を知ることになったのが遠見だとは思っていなかった。
その遠見も紅葉を前にして始めはたじろいでいたが、三十分もかからずものの見事に打ち解けて見せた。
遠見と紅葉という高いコミュ力持ち同士が揃えばああも簡単に友好を深めることができるという証明を見てしまったような気がする。
「へぇー……また珍しいですね。このバカ兄が相談を受けるなんて」
それで、まず紅葉は家に着くなりどうして俺が物々しい雰囲気で遠見を言及していたのか、その訳を聞いてきた。あの変な男の所為で多少拗れたが、それで話を流せる紅葉じゃなかった。
結局、遠見が事の顛末を一から話し、今に至った。
「ああ、だから俺も何か嬉しくてさ。色々したんだけど……」
「あーダメダメ、お兄ちゃんはそういうの一番嫌う? というか苦手だから。」
やれやれと手を上げ頭を振って偉そうにのたまう。本人でもないのにどうしてそこまで威張ることができるのか一発分からせてやりたい衝動に駆られそうになるが、あくまで言っていることは正しい。
それに今何か口を挟めば、一度火をつけたガソリンの様に燃え上がった紅葉によって封殺されることがわかっているからだ。
触らぬ妹に祟りなしだ。いらん火の粉を振りまいてガソリンに火をつけるより、その注ぎ口が遠見の方へ向いている今のうちに、後先多少マシになる言い訳を考える方が圧倒的に建設的だと言える。
言えるんだよ。
「えっと、遠見さんってお兄ちゃんの過去についてどのくらい知ってるんですか?」
「え? んー……っと、いや全然だな。シロちゃんのことは聞いてるけど」
「あぁ、シロちゃんのことは聞いてるんですね。そこまでしか知らないなら、お兄ちゃんがどうしてこんな悲しい生物になったのかは知らないですよね」
どんどんと、俺の話が暴露されていく気がする。が、止めようにもこうなっては止まらないだろう。
「ちょっと待て、それ以外の話を聞かせんなよ。それなりに時期が合えば俺から話すから」
だが、それ以上は駄目だ。どうせ、俺の性格がこうなった理由の引き合いに出すものは小学校の時の話に決まっている。
当然おいそれと話すような内容でもないし、それを知られれば俺が困る。
そうして弱みを握られ……いや、そういえば遠見が弱みを握ってもそれを利用しようとはしなかったな。
いやだからと言って、わざわざ聞かせる訳にはいかない。
俺は同情なんていらないから。
「……何の話?」
「……まぁ、こっちの話です」
「ふーん、まぁ黒谷……兄の方が聞かせたくないって言うんなら、俺は聞かないけど」
打倒な判断だ。こういう時、潔く引いてくれる遠見の性格、いや信条に近いものはよく役立っている。だからこそ、遠見との関係はまだしばらく切れることはないだろう。
「それで、えーっと……その塚野さんの相談でしたっけ。それに関してはお兄ちゃんならやれと言われればやると思いますよ。色々駄々をこねるとは思いますけど」
「おい待て、何だ駄々って、もうちょっと言葉選べよ紅葉。つうか決して駄々じゃない。歴然とした理由だ」
「な~にが理由なの。それはただの逃げだからね。全く、お兄ちゃんはそういうとこが弱すぎるよ」
こいつ調子に乗りやがって……と、思っても声に出さないのが兄妹仲が持続する秘訣。優しさである。
とはいっても、紅葉の言うことは大体事実なので、反論しても多分言い負けるのは俺だ。
コイツは誰よりも俺の本質、思考を真っ直ぐ見つめている。そんな相手にこの問題で勝とうなんざ土台無理な話なのだ。
「あはは……なんか、仲良いんだな。あーほら、兄妹って歳を重ねるごとに仲悪くなるってよく聞くから」
「ああ、確かに他の兄妹いる子とかとは違って、うちは結構仲が良いって近所でもちょっとした評判でしたね」
「まぁ、黒谷がこうなった話が聞きたい訳じゃないから、その辺はまた聞ける時に聞きたいとは思う」
「それが良いんじゃないんですか? どうせお兄ちゃんのことだから一生話さないかもしれないですけど」
「あー……有り得る……」
なんだ、そんな目で俺を見るな。大丈夫だ安心しろ、お前が思っているほど薄情じゃない。ただ単に核心は話さないだけだ。十分だろう。
「ま、こんなお兄ちゃんなんで、仲良くしてくれるのは素直に嬉しいです」
「いやこっちこそ、仲良くしてもらってるからお互い様だよ」
そう言いつつ、遠見は今まで座っていた席を立つ。
「帰るのか?」
「まあな、いつまでいても邪魔だろうし、妹さんの目的も達成できただろうから長居しても迷惑だろ?」
「そんなことないですよ! よかったら夕飯でもどうですか? 二人分だけ作るの大変なんですよ」
「え! いや、流石に悪いって、黒谷怖いし!」
紅葉の誘いにたじろぎながらも遠見はこちらに目線を向ける。
今その目に何が映し出されているのだろう。常時鋭い目つきなのは変わらないだろうが、俺としてはどうでもいい。
だが、正直邪魔なのは確かだ。
「別に、遠見と紅葉の好きにすればいい。俺は気にしないから」
上辺ではこう言っても、受けのいい言葉を並べただけに過ぎない。だが、遠見自身がそうしたいというのなら、俺が拒否をするというのも可笑しい。
俺は確かにこの家の主だと言えるが、だからといってクラスメイトを邪魔だからと追い出すほど薄情者でもない。
俺はあいつらとは違うのだから。
「その言葉は嬉しいけど、今日はやっぱ帰るよ。黒谷の答えは明日聞かせてくれればいいから」
にっこりと、気持ちのいい笑顔を浮かべそのまま遠見は玄関へ向かう。
「そうか、ならまた明日」
俺はそれを手を振って見送るだけだ。
結局、俺の聞きたかったことは紅葉の乱入によりなあなあになって聞けず仕舞いだったが、時間だけはいくらかの猶予ができた。
それに、一番知られたくなかった相手に知られた時点で、明日を待たずに今日の時点で決めなければならないだろう。
「で、どうするのお兄ちゃん」
紅葉は選択を迫る。
一度俺が手をこまねいているのを見れば、選ぶことを強要しにくる。
それが鬱陶しいと思ったことは数知れず、だがそれでもそれに助けられたことも少なくないからか、俺は紅葉の行動を咎めはしない。だがいつしか紅葉の前でそういった迷いをしなくなった。
だが、今日はそういかなかった。
この責任は誰にあるのか、と問われれば、言い訳もあえなく切り捨てるがごとく、いつまでもうじうじと考えを巡らせ続ける俺にあるだろう。
そう、簡単に言えば俺はただ逃げていただけ。
選びたくないから、様々な考えを巡らし、選ばない方向を考え続け問題自体を曖昧にしていた。
だがそれも今日、これまでの話。
俺はこのまま呆気なく紅葉に詰め寄られ選択するだろう。
自分の中で納得のいく形で、文句ひとつも無く、ベストな回答を、いつまでも選ばない俺に代わり、紅葉が押し付ける。
背中を押してくれる。
「なら言い方を変えるよ。お兄ちゃんはどうしたいの?」
「……どうしたい?」
「そう、お兄ちゃんが現実的に考えたものじゃなくて、理想的に漠然と考えてること」
「……どうしたい、か」
そう、この感覚。
俺の奥底にある、真っ直ぐな少年だった頃の心に問いかける、一種の自問自答。
人を信じられない俺が、信じられなくなった前の俺に理想を語らせる感覚。可笑しな妄想。
そんな空想を、他でもない身内であり妹である紅葉に掘り返される感覚。
だからこそ、そうだ。俺はこの世でただ一人。ただ一人の大切な妹の前では、人間で居られる。
能力者でもなく、無能力者でも、<アクセス権>を持った黒谷蒼太ではなく、黒谷紅葉の兄である黒谷蒼太という一個人の人間で居られる。
ただの兄で居られる。
ただ純粋に、妹の事を考えられる、良い兄で居られるのだ。
「逆に、お前はどうして欲しい?」
「聞いてるのはこっち、質問を質問で返しちゃダメなんだって」
「そうじゃないよ、俺の中じゃ、今ので答えは出てるから、次はお前の答えを聞いて初めて意見をすり合わせられるだろう」
「……はぁ、まあそう言う事にしとくよ。私は当然、朝野さん静城さん、そして塚野さんの三人がしっかり仲直りして、笑顔になれるハッピーエンド」
「……ま、だよな」
俺が優しいというのなら、紅葉はもっと、俺の何倍も優しい女の子だ。
そんな自慢の妹が、誰かが一切の被害を被るスケープゴートなぞ求めることなど始めから有り得ないのだから。
「な~にその『分かってましたよー』みたいな顔! めちゃムカつくんですけど!!」
「まあまあ、それより夕飯にしようぜ。今日は期間限定俺の気まぐれにより俺が作るからさ」
「えっ……それはそれで心配なんですけど……」
「おい待て、聞き捨てならねえ。こちとら本気出せばシフォンケーキくらいなら自作できるんだぞこら。何ならバウムクーヘンでも作ってやろうか?」
「どっちもお菓子じゃん! 私が心配してるのは料理の方だよ」
「何言ってんだ、お菓子は普通に料理するよりも難易度高いんだからな。対して甘いものが好きじゃないのに色々レシピやら味やらを覚えさせられたこっちの身にもなれ」
「それはあれじゃん、風間さんの話じゃん。料理関係ないじゃん」
「そんなことはねえ、アイツ人使い荒いから料理やらお茶出しやら、果てにはモーニングコールですら俺にやらせる奴だぞ」
「えぇ……」
提案が口論に、口論が愚痴に、次第に話が移り変わるが俺も紅葉もその時々にしっかりと応える。
そんな、どこにでもあるありふれた日常の一コマ。
その情景を二つに分割するようにして、一筋の輝きが煌めいた。
キラキラと、まるで恒星を思わせるような幻想的な煌めきが次第に大きくなり、一瞬で晴れると、それは姿を現した。
「ジャジャン! 超絶可愛い蒼太の神様!! シロちゃんのおなりーーー!!!」
まるで、その空間だけが白いかのような印象を受ける。髪、肌、服装、全てが透き通るような芸術的とも言える白色一色に沿えるようにして真紅の双眸を携えた、神を名乗る少女。
相も変わらず、周りを染め上げるかのように元気一杯なシロが、俺と紅葉の丁度中間に現れた。
「久しぶり? て程でもないか、あっでももみじんは久しぶりだなー! 二か月ぶりくらい?」
「うん久しぶり! 相変わらず元気だね」
再開と言うよりは少し早く、いつも通り遊びに来たという感覚が一番型にはまっていた。
だが、俺はそれ自体に何やら嫌な予感を感じたのだ。
そう、あのいつも通り、面倒なもの。
「私もとっても遊びたい気分ですが、残念ながらいつも通り『神託』があります!!」
きりっと、すぐにでも拳骨を飛ばしたいと思えるほどムカつく笑顔で、潔くシロはのたまった。
「チクショオオオ!! ただでさえ相談で面倒臭ぇのに、そこに『神託』までとかふざけんな!!」
「フハハハハ!! 今現在大いに面白いことになってるのは知ってるぞ。でもそれはそれとしてやってくれなきゃダメです」
そうだ、思い出した。
何で俺が静城のことを去年から知らなかったのか。
いつもいつも、対抗戦の日は授業がないからと決まってシロが『神託』を俺に出すのだ。
それにより、密かに俺は学校を抜け出したりして渋々『神託』の解決に勤しんでいた。
だからどう足掻いても静城を知るきっかけがニュースくらいしかない。
通りで知らなかった訳だ……。
「お前はもう少しタイミングを考えた方が良い……」
「ん? そうか? でも安心しろ蒼太。今回の『神託』は簡単だ」
「と、言うと?」
そう聞くと、シロはわざとらしく咳払いをし、俺に向き直った。
初めから威厳などゼロに等しいが、曰くこういうのは雰囲気が大事らしい。
だから俺も付き合って、面倒だと思いながらも正面に向き直る。
「『神託』を告げる。蒼太の学校に潜む、神の力を宿す人物をつきとめよ。さすれば――――――、さすれば……。うーん……うん。何かいい事あるかもな!!」
それってつまりいつも通りそこまでメリットがないだけじゃねえか。
だが、場所が学校で幸いだったかもしれない。これが他の場所、例えば工場、ビル、駅とかだと対抗戦そっちのけで行かなくてはならなくなったからだ。
まだ対抗戦に参加しながら探せる分、今回の『神託』は随分と都合がいいのかもしれない。
「ま、多分そっちの……対抗戦? をしながらでも探せると思うから、しっかりと見つけて報告するのだぞ? できればその能力まで分かるとなお良い。追加で私が喜ぶぞ!」
「あ、そう」
明日の仕事量の多さを考え、『頭痛が痛い』を芯に感じながら俺は冷蔵庫の方に向かう。
少しでも現実逃避をしようと、何か今日は豪勢にしてもいい。それだけ料理して、美味しいものを食べればこの気持ちにも少しは整理がつくだろうから。
ひとまず何か取り出さなければ始まらないと、メニューを組み立てつつ、食材に手を伸ばした。
明日の対抗戦は、いつもよりかなり忙しい事になりそうだ。
因みに、シロも食べていきたいらしいので、今日は本当に豪勢な晩御飯となったのは、ご愛嬌である。
よければ感想、ブクマ等お待ちしておりますので、よろしくお願いします。(主に感想!!)




