表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/50

遠見の真意

はい、連日投稿2日目であります。あとは明日の0時で最後の連日投稿となりますので、引き続きよろしくお願いします。

 それから、菱田と篠原とは挨拶の後解散し、俺は一人下駄箱の方へと向かっていた。

 視界に入るのはほんの数時間前と比べ明らかにスッキリとした、してしまった教室内とその近くでワイワイと話し込んでいる学生達の姿だ。


 教室の方は正にもぬけの殻の様で、椅子や机が教室一杯に所せましと置かれてただ机に向かって勉強をするだけの場所だった部屋は、見る影もない。

 

 明日の準備が滞りなく終了し、後は自由下校となった今の教室の様子と言えば、そんな下校を控えた生徒達のたまり場となっており、少しでも耳を傾ければその内容も聞こえそうな程であった。


 どれだけ興奮して喋っているのかと思うが、明日の事を考えれば気持ちが分からない訳でもない。果たしてどのような勝負となるのか、今回の勝者はやはり静城が連覇するのか。そんな期待に満ちた声が良く聞こえてくる。


 準備をした人の大半は今月の対抗戦の言わば視聴者であり、俺達メンバーはそんな彼らに対してエンターテインメントを提供する芸者。楽しみにする心境も理解できる。


 凄そう、今回はどうなる、新顔もチラホラ見かける、静城さん天使etc。


 大半の準備側の人間は明日の勝負を観戦する為に準備をしてきたのだから、そんな心境でクラスの友達やらに吐露して共有している今の状況は成るべくして成ったのだろう。


 こうして人の交流を見ていると、よくあの会話に意味はあるのかと考えてしまう。

 日々の近況を報告―――いや、垂れ流し、共感を求めて言葉を交わすことに、果たして意味はあるのだろうか。

 それを、本当の意味で友人と言えるのか。


 別に、意味のある友人、意味のある会話何てものは求めていないし、意義もそこには必要ない。友達は友達で、それ以上でも以下でもない。


 けれど、そうして上辺だけの付き合いで互いに接して、上辺だけの表情を張り付けあう関係は、果たして本当に友人だと言えるのだろうか。


 そんな上辺だけの関係なら、いっそ本心をぶちまけ合う関係の方がよっぽど友人らしいと、俺は思うのだ。

 勿論『親しい仲にも礼儀あり』という言葉が存在するように、最低限の気は使うべきだが、仮面を被りあって騙し合いの様な関係でいるよりはいい。


 身内以外の他人に本心を晒さない俺が言うのもなんだが、正直この場合そんな上っ面な関係よりは、色々と本心を言い合える関係の方を求めるだろう。


 ――――――そんなことが、できるのなら。


 「お、ここにいたか!」


 次に声のした方を見る。同時に、その聞き覚えのある声に、今の言葉を向けられたのは自分だと知った。


 声を発したのは遠見だ。


 「え? あ、ほんとだ」


 それから後ろについていた塚野。


 探していたのだろうか、どうせなら連絡すればその手間も省けただろうに。わざわざご苦労な事だ。


 「どうした? 何か報告でもあるのか?」


 「まぁ、そんなところだ。どうせ黒谷の方は静城さんと話せてないと思って、別れてから準備をしつつ塚野と合流して朝野さんと話してきたんだよ」


 流石コミュ力の化身、遠見真司。即日実行とは恐れ入る。

 

 「はははまじか。……ま、もう少し先だと思ったがそれならLONEで送った方が楽じゃないのか?」


 「そうはいくか、あのな、こういうのは直接話をしないことには始まらねえんだよ!」


 「え、そうかな……」


 「よし塚野ちょっと静かにしててお願いだから」


 ………こいつ、俺をどうにかして面倒事に首を突っ込ませようとしてないか?

 思えば、今回の騒動で一番乗り気なのは遠見だ。裏で何をこそこそとやっているかは知らないが、塚野と相談する時間長くないか?

 もし遠見が塚野と組んで俺を操ろうとしているなら、それはそれでどうにかする他ないが、目的がわからない。


 何も俺が面倒事に突っ込む姿を見て楽しむような性格を遠見はしていない。

 俺じゃあるまいし、人を顎で使おうなんざ遠見の信条的に有り得ないだろう。

 例え、相手が俺だとしても、遠見は平等に相手の事を真剣に思いやる。


 なら、コイツは一体何を考えているのだろうか。


 どうにも違和感がぬぐえないが、遠見の考えることだ。決して人を貶めるような考えはできまい。

 それがコイツの性格なのだから。


 「で、その報告ってのは?」


 「まぁそう急かすなよ。帰りながらでも話せるだろ?」


 「ああ……」


 そして、もう一つ。

 どうにも遠見は俺と会話したがる気がする。


 今の様になにかと話をさせる時が多い。今朝の時だってそうだ、コイツはわざわざ俺に解決法の選択をさせた。

 相談事において、俺よりも断然経験のある遠見が判断するのではなく、俺にだ。


 遠見は一体どうしたいのだろうか。


 「よし、そうとなれば一緒に帰ろうぜ。そのついでに明日の事も話しながら」


 疑いは晴れない。だが、遠見に限って後ろ暗い事を企む程の悪意は存在しないと、一年間と少しの間共にクラスメイトとして過ごし観察してきた俺には断言できた。


 例え誰かを陥れるようなことをするとしても、俺と違って、遠見の行動は必ず誰かを救う為に必要な選択をしているのだと。



 ◆◆◆◆



 突然だが、帰りたい時に限って外せない用事ややらなければならないことができて、その対処に追われる自分を想像して欲しい。


 例えば、帰り際にどうしてもと先生に頼まれて片付けの手伝いを頼まれた時。

 例えば、仕事上がり直前に後輩のミスを取り返すために、平謝りする後輩を尻目にせっせと作業を進める時。

 例えば、スケジュールの齟齬で明日以内に完成させなければならないモノができて、残業してまでやらなくてはならなくなった時。


 そんなやるせない、けれどどうにもならない理不尽に似た仕様が無い面倒なもの。

 それほど面倒とは思わなくとも、確実に心へダメージが入ってそうな、そんな場面。


 俺は今、そんなどうしようもなく、聞き逃す訳にもいかない解決すべきものと向き合っていた。


 時刻としては四時に差し掛かりそうな頃、学校を出て少しした通学路に溢れるのは、明日の対抗戦の準備を終えた我が秋原高校の生徒達。

 チラホラと、道の隅のスペースを見つけてフィールドを展開し、遊び感覚でランキングバトルをする者も見受けられる。

 

 それを観戦する者、意を介さずに足を進める者、それぞれ思うのは明日のことなのか、それとも別のことなのか。


 浮き足立っていることは傍から見ても明白であり、道行くサラリーマンとしてはさぞかし輝いて見えるだろう。


 そんな溢れるまでもない、それなりに多い人通りを進む俺達が話しているのは、勿論遠見が話してきたという朝野についてのこと。

 内容にもよるが、これを聞けば遠見から提示されている二つの解決方法を決定付ける、確かな判断材料になる。


 それがもし、結果的に俺の選択を狭めたとしても、朝野が今どう思っているのか聞いてしまえばもう後は、どう解決するかを決めるだけなのだから。

 

「そうだな……結論から言えば、朝野は静城さんの事を()()()()()()()()()()


 「………そうか」


 それを聞いて、俺は選択を確定させた。

 

 「なんというか、完全にすれ違った感じだったな。朝野さんいわく、嫉妬だとかそういう悪感情で言った訳じゃなくて、初めはただ純粋に心配して言っただけだった。」


 心配? あれがか?

 朝野がまず静城に言及したのは、辞退しようとしたことについてだったはずだ。


 「でもま、多分黒谷が思うように、朝野さんの言い方にだって問題はあった。あれじゃ責めてるって思われても無理ないしな。けど……――――――」


 「――――――……けど、すごく後悔してたよ。朝野さんは、あれで結構心配性らしい」


 その時俺は確かに、はっきりと『驚愕』した。

 それは明らかな、俺の思考との()()だった。


 「自分の悪い癖だってな。あまり言葉を選べる人間じゃないって言ってたよ。ただ、後悔はしているけど、()()()()()()()()()。これは念を押して言ってた」


 思考のズレ、一度は切って捨てた可能性が現実味を帯びる。無理だと捨てた選択肢、始めに考えた朝野を切り捨てるという選択。それが間違いであったのか、そういう()()だ。


 遠見の言葉を信じるなら、今初めて俺の思考と結果は乖離したのだから。


 「つまりだ黒谷、朝野さんは間違いなく話そうと思えば話せる人だ。割とどうにかなるんじゃないか?」


 それは、そうだろう。

 後悔しているのだから、それが解消できる手が開示されれば、それに飛びつかない人間はそれこそ人を捨てている。


 俺は、いや俺が、この件に関わっていいのだろうか。


 そう思わざるを得ない。だってこれでは、余りにも役立たずだ。


 「そうだね、思ったより何とかなりそうで安心したよ……私の所為で、二人の関係が終わっちゃうなんて嫌だから」


 「後は、静城さん次第なんだけど………」


 「そうだな……明日、対抗戦の時に何とか話してみる」


 口で言うのは簡単だ、だが、俺にはどうもこれが成功するとは思えなかった。


 「そうか! なら大丈夫そうだな、対抗戦だって無理せず黒谷のできる範囲でやってくれればいいからな。お前元々ああいうワイワイ騒ぐイベントって苦手みたいだし」


 ああ、そう言うところだ。そういう直ぐに人の嫌だと思うことに思いやりを持ってやること何て、俺にはできない。

 このいざこざだってそうだ、俺はこの問題がどうしたら最短で効率よく解消できるかというのが念頭にある。

 だからそもそも、話し合いで解決なんて綺麗事が浮かんでこない。


 けど、遠見は違う。

 はっきりと相手を気遣い、思いやり、よりいい結果になるようにという思考がある。だからそれがどれだけ回りくどいことでも、当人にとって最善であるなら迷いなくそれを選ぶ。

 そういうことが出来る人間だ。


 「あ、私は電車だからこっち。二人ともまたね」


 「あ、そっか。じゃあまた明日」

 

 「ああ、また」


 そう言って、塚野は駅の方面へ行く形となり、俺と遠見は二人残された。

 

 「なぁ黒谷、どうしてそんなに臆病になってんだ?」


 そして開口一番に遠見は核心を突いた。


 「……は? 臆病? 俺がか」


 完全に予想外だった。

 明らかに動揺する俺に、遠見は更に続ける。


 「だって、これだけやりやすいように、俺なりに手助けをしたつもりだった。けど、肝心なところでお前、逃げてるじゃないか」


 「……手助けだ?」


 柄にもなく、俺は遠見の発言に混乱を隠せなかった。

 確かに、遠見は俺に感づかれないように動いていたのだろう。俺の知らないところでどうこうしていたということは分かっていた。なのにどうして、俺はこんなにも焦っているのか。

 

 遠見の考えがわからないから? 先週の様に核心を突かれたから?

 どれも違う。

 そもそも、それらは大して問題はない。どれも俺にとってマズイことではあるものの、今この場において責められても何の問題にもならないからだ。


 「俺は塚野の件を黒谷に解決して欲しい。少しでもお前が人を信じられるように、今より良い方向に進んで欲しい」


 「だから、お前は俺を手助けしていたのか?」


 「そうだよ……でも、肝心のお前が逃げちゃ意味がない。何時まで経っても、お前が変われない……」


 違う、そうじゃないんだ。

 焦っている訳でもない。

 感じていた違和感の正体はこれだ。

 俺は遠見に()()()()()()()んだ。頼んでもいないお節介を、当たり前のように押し付けたコイツに。

 頼った訳でもない。助けてくれと、変えてくれと頼んでも無い。だけどコイツはコイツなりに解釈をして、より良い方向に進めるように手助けをした。

 偶々それが塚野の相談という丁度いい問題が挙がって、宛がうことが出来たから、動いたのだ。


 ただただ、(おれ)の為を思って。


 「ハァ……そういうことか……。俺は、ずっと変に思ってた。塚野の問題を解決しようと思えば、お前が動けば、今頃とっくに解決してる。朝野と静城の仲直りっつう最善の結果でな。でも、お前はそうしなかった。どうせ塚野もそれを期待したんだろうが、大方一昨日の段階で俺に解決させたいって頼んだんだろう」


 「……ああ、概ね合ってるよ」


 バツの悪い顔をして俯くその姿は、言い方は悪いが滑稽だった。相手の為を思って動いていた事実を、誰でもないその()()に言及されているのだから。

 ここで『そんなこと頼んでいない』と責めるのは簡単だ。実際に頼んでもないことを遠見はやっていたのだから。言ってしまえば、善意の行動でも行き過ぎればそれは悪意にもなり得る。


 『お前の為に』そんな綺麗事を並べて、あたかも自分のやることが正義だと言うように、酔うように正当化して、いらないことをする。

 本質的に、いじめと同じだ。


 「だからって、それで良い方向に進むとは限らない。俺は俺で、どうしようもない、ただのガキで、クズだ」


 「お前はクズなんかじゃ――――――」

 

 「クズだろ、どう考えても。()()()()()()()()()し、お前が思う程()()()()()()()()()()()。いつだって、嘘まみれだ」


 あれも、これも、俺が学校で流すことなんざ、嘘ばっかりだ。

 静城に言った、<アクセス権>に関する縛りの数々、その大半が嘘だ。

 シロに言われ、問題解決に動くのも、仕方がないから。


 そんな人間がどうしてクズじゃないと言える。


 「じゃあ、何で嘘をつくんだよ。嘘をつくのは別に悪いことじゃない、生きていく上で、誰だって嘘をつくんだから」


 「どうして、か。お前はまだ俺が優しい奴に見えるのか?」


 「だって、そうじゃなきゃ、お前の行動はおかしいよ……」


 「俺はな、そんな風に考えれるお前みたいな人間が、心底羨ましい。んで、同じくらいに利用しやすいと思ってる」


 喋っている内に、熱が溜まっていた頭は段々と冷静さを取り戻し、いつもの思考を取り戻していく。

 俺は、関わるなと言いたい訳でも、やめろと言いたい訳でもない。

 

 「そんな人間のことを、お前は変えられると思うか?」


 これを聞いて単純に、遠見がどうするのか。ただそれを聞きたかったのだ。


 大通り、そのど真ん中。道行く人はこんな会話二割も聞いていないだろう。そういう人の目に映るのは、単純に学生が立ち止まって喋っているだけの図、声を掛ける者は、横槍を入れてくるような人物は存在しない。


 ()()()()()


 「あれ、お兄ちゃん?」


 唐突に訪れた、他でもない身内によって、その答えは先送りにされたのだった。

どうか、どうか私めに感想をお恵みください! 第三者のコメントが気になりまくリング症候群なのです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ