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勝負

 本当にこんなものでいいのか不安になりながらも3話目の投稿です。

 徐々にこの作品の世界観の情報を出していく予定なので「なにいってるか全くわからん」とか思っている方はもう少々待っていてください。

コメント、感想、指摘など、じゃんじゃん募集中です。

 そこはどこか全く別の空間に見えた。

 仄かな哀愁と、どこか寂しさを覚えるかのように、まるで漫画のようにそこだけを切り取ったみたいに、車の走行音、人の喋り声はどこか遠くに感じる、とても静かな雰囲気を持つ独特の空気感。


 ただ居るだけで、ただ自然と心が落ち着くような空間の中心点。そこに一人野良猫一匹と戯れる彼女の姿は、先ほどあった戦闘の香りを全く感じさせない。


 まるでそのまま消えゆくような小さな背中を前に、俺は自らのために声を掛ける。


 「静城風香だろ? 俺は黒谷蒼太だ。ひとまずよろしく」


 確実に好印象は与えられないだろうとと自覚しつつ、あいさつを静城にかける。 

 もう少し言葉を選んで話しかければよかったと後悔しても、言ってからではもう遅い。


 「……ふーん。で? バトル? それともファン? ……ファンなら、サインなんてお断りだし、バトルなら分を弁えて出直して」


 猫から目を離さずに冷たく言い放つ。

 うん、まぁ知ってた。

 半ば心に傷(確実に自爆)を作りながらもめげずに声をかける。


 「いやいや、バトルでも熱心なファンでもないよ。誤解するような言い方して悪かったと思ってる。あー……俺はただあんたと世間話がしたいだけだ。」


 「へー……それで?」


 静城は俺を疑うように冷たい視線をこちらに向ける。おっとりとしているのに射抜くような視線は正直結構怖い。

 それはランカーとしての当然の矜持なのか、それまで静謐を貫いていた空気が一気に変化する。


 「悪かったって、別に何か企んでるわけじゃない。なんならお詫びにこれやるから。」

  

 そう言って俺が鞄から取り出したのは今俺が片手に持ってるジュースと同じジュース。自販機の「当たり」で手に入れたジュースだ。


 「………」


 しかし静城はそのジュースを訝しげに見つめるだけで手に取ろうとしない。


 「まだ疑ってんのか? 謝るって、ほんと。それともこれいらないとか?」


 「いらないとは言ってない。ただあなたが怪しすぎるだけ」


 グフッ。


 心の中で吐血した。いやほんとにやってしまった。人間、第一印象が大事というが今まで生きてきて一番痛感した瞬間であった。

 ハァ、とため息をついて俺と静城の間に鞄からだしたジュースを置く。


 「……で、ほんとの目的ってなに? 世間話しにきたって言っても今時そんなこと信じる人、少ないよ。」


 痛いところを突いてくる。確かに、俺の目的は静城の<空間操作>()()()()()()()()()()()()()()()だ。それに、そんな大事な事をそう易々と教えてくれるものではないと思い、ある程度親しくなったら教えてもらおうとか考えてたある種のクズ的思考のもとに行動していたのだから。

 

 「どうすれば警戒を解いてくれる?」


 「……じゃあ、私と勝負をしよう。なんでもあり、非公式のランク外バトル。」


 「ははっ、ランク外バトルならもし俺が負けてもランクが落ちないからってか?」


 「あと刺客の可能性の有無」


 刺客ね、なるほど。静城は俺を命を狙う刺客の可能性を疑っていたわけだ。ランカーで二位という超上位に位置する能力者なのだから、数多の勧誘の声とともに挙がってくるものが能力を危険視し怯え切った権力者の刺客の数であろう。過ぎたる力は害をなす、というものを本気で信じ込んでいる奴らのことを警戒するのは当たり前か。


 「わかった。勝負を受ける。」


 ここで勝負を受けない選択肢はない。なぜならこの提案を受けなければ何か理由があると勘ぐってしまうからだ。よって勝負を受ければ信用してくれるだろう。あとはそれこそ死ぬような攻撃をしなければいいだけだ。


 「範囲はこの路地のみ。……いいでしょ?」


 「ああ。」


 了解の声を上げる。

 静城は猫を逃がすと俺の正面に立つ。


 「どのタイミングでやる?」


 「コインが地面についたら」


 そう静城が言って、制服のポケットから財布を取り出しコインを出す。

 と、そこである重大な事に気が付いた。

 よく考えたらランカーと同じ学校だった。何故今まで気付かなかったんだろうか。……あぁ、静城があんまり学校へ来ないからか。

 ランカーは人気あるからモデルの依頼とかCMの出演依頼とか来るし色々大変そうだしな、それも静城の場合特にその手の声は多いだろう。学校へ来れない時があるのも無理はないか。


 ……そろそろ思考を元に戻さねば。


 「わかった。」


 「勝利条件はどちらか一方が先に有効と思われる攻撃を当てること」


 静城が最後にそう言った後、コインを弾く。コインはまっすぐ上へのぼり重力に従って落ちてくる。


 別にこの勝負に勝たずともいいのかもしれない。だが、それで静城が信用しますと言って俺の要求を呑んでくれるとも思わない。

 使わないならそれに越したことはないが、こういう場合に手段を選べる程、手数が多いわけでもない。


 ここはもう仕様が無いものとして、覚悟を決めるしかない。


 そして、そろそろコインが落ちるかというところで俺は制服のズボンポケットにあるスマホを手に取りそのまま出しておく。


 コインが落ちた瞬間、目の前の空間が歪んだ。


 俺はあらかじめ起動させておいたスマホの電話に番号を入力する。

 0、0、1、1、4、5、1、0。その番号はまるで日常的に打っているかのようになめらかに、手早く打たれる。

 そしてスマホを耳にあて、『ピーピー、ピーピー、プルルル、プー』という独特のコール音ののち、言葉を紡ぐ。だが目の前に迫るは歪んだ空間。それが――――――


 『静城風香の能力を完全に無効化。静城風香の動きをその場で固定。』


 黒谷蒼太(おれ)がそう言った瞬間、目の前で歪んでいた空間は消え失せ、静城風香はその場から完全に固定され体が動けなくなる。静城は空間を操作し、その場から動こうにも能力が全く使えなくなっていることに驚愕を隠せなかった。


 この瞬間、黒谷蒼太の勝利が確定した。

 

 

 次回で主人公の能力を明かしますんでこの糞チートには目をつむってください。チートじゃないと主人公この先生きていけないんで。

コメント、感想、指摘など、じゃんじゃんウェルカムです。

2018/8/13、気になる所を少し修正

2019/8/8、気になる所を少し修正

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