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神託

「能力三つも使えなかったな」


 学校を出た後の帰り道で静城との対戦を思い出していた。


(いくら能力の運用を聞いていなかったからって、流石に油断が過ぎるな)


 さっきの対戦はあまりに酷かった。相手の能力の考察を怠った結果があれだ。予想に予想を重ねさえすればもっと粘れたかもしれないのに。


「聞くことばっか考えすぎて<空間操作>に無策といっていい策で突っ込んでいこうとしたことが今回の敗因だな」


「別に、あれでもよくやった方だと思う」


「……」


 静城がすぐ隣にいた。

 いきなり隣から声をかけられてちょっと肩がビクッってなるくらいには吃驚した。

 やはり<空間操作>はチートだと思う。

 さっき校門前にいたはずだから静城はおそらく空間転移か何かで俺の隣まで来たんだろう。


 「まだ私の能力の運用は雑だけど、他の能力はきちんと正確に運用してたし十分だと思う。」


 「そうか?<空間操作>だって、ここに転移したいって思って能力を使っても上手く転移できてないんだが?さっきの転移だって本当はお前の目の前に転移したかったし。」


 「それはまだイメージが足りないんだと思うよ?」


 「イメージねぇ」


 「うん。しっかりイメージして使い分けることが大事。」


 「そうか」


 もはや慣れるしかあるまい。転移してきたって次は驚いたり無言になったりしないね。

 にしても、極論だな。でもだからってほかの能力だってしっかりとしたイメージが必要なので正論でもあるんだよなぁ。


 「まぁまた試行錯誤の繰り返しで俺にあうやり方を探すしかないか」


 「ん、一番大事」


 『プルルルルルル、プルルルルルル』

 

 「悪い、電話入った。」


 「気にしない。」


 静城と話している時に俺の携帯からコール音が鳴る。

 そして相手の欄を見てみると『シロ』と書かれていて、番号は全て黒丸で表示されている。

 これだけ見ると本当に不気味なのだが悲しいかな、親友ともいえる相手だったりする。

 長く待たせるのも悪いと思い、おそらく寄越すであろうしごと(・・・)にテンションを落としつつ通話のボタンを押す。


 「どうした?」


 『おお!蒼太。久しぶりだな。最近会えなくて私は退屈だぞ』


 返事を返した瞬間、声だけでも分かるくらい嬉しそうにしながら話す少女とおもわしき声。

 この声の主こそ、俺を能力者へと仕立て上げた張本人であり、その際に”神”を名乗った『シロ』という少女だ。

 話す内容だけをみれば恋人とかそっち方面に持っていかれそうだがコイツの容姿的にそれは無いだろう。

 その身長と顔立ちは小学校高学年若しくは中学生に成りたての子供にしか見えず、『シロ』という名に相応しく髪の毛が真っ白なのが特徴の紅眼の少女なのだ。


 「知るか。それより、はやく本題に入ってくれ。正直さっさと済ませたい。」


 『え~。もう少し付き合ってくれても良いだろう!最近の鬱憤がすごいのだー』


 そしてことあるごとに俺へ愚痴を聞かせにこちらへ押しかけてくるやつだ。


 「うるせぇ。今度はどうすんだ?前は夜道を歩けとかいわれていざ歩けば何かしら起きるまで約三時間歩きっぱなしだったんだが。」


 『心配するな!今回はちょう簡単だ。』


 「それ前回も言われたんだが?」


 『そそそ、そんなことはどうだっていいのだ。大事なのは今このとき!』


 ごまかしやがったなこいつ。


 「ちょっとは過去もふりかえれよ。」 


 『そ、そういうツッコミはひとまず置いて、神託であーる。』


 (おいおい、そんな強引でいいのかよ。)


 シロは俺を能力者にした後、度々こうして俺に指令のようなものを連絡することがある。

 その内容のおおよそは俺の行動を操作することだが、問題はこの後だ。


 それはこの『神託』の通りに行動すれば必ず何かしらの面倒事が俺を襲うことだ。

 シロはこの一連の出来事をまとめて『神託』と呼んでいる。シロは”神様”らしいので一応理にかなっている呼び方なのだがやることはまるで会社の上司が寄越す指示・命令のように感じることから個人的に仕事だと思っている。


 こうして「仕方がない」と渋々暖かい気持ちでこれを受けなければは寄越す『神託』のストレスから自分でもなにをするかわからない。それほど面倒なのである。ほんとに。

 今回もまた、なるべくストレスがたまらないことを祈りながら指示を待つ。


 『明日の学校は一時間遅れて行け。』


 「おいちょっとまて!それ言外に遅刻しろって言ってない?」


 どうやらストレスが溜まることは確定だったらしい。


 『細かいことはきにするな。それから、私も近いうちにそっちへ行くから頼んだぞ。』


 「ファ!?おい待てここでさらにお前まで来たらすさまじく面倒なことに――――ってきれてやがる……。」


 因みに俺の周りをかき乱すことが大好きだとシロはいう。胃が……。


 「おわった?」

 

 俺の通話が切れることがわかったのか静城が確認の声をあげる。


 「ああ、終わった、一応。」


 「なにかあった?」


 静城がそんなことを聞いてくる。俺はそんなに絶望した顔を晒しているのだろうか?


 「今すぐにでも人を殺しそうな目つきしてる。」


 「悪かったな目つき鋭くて。骨格的にどうにもならんわ。」


 「そう?私が曲げてあげようか?」


 そういって静城はその両手を自身の胸元近くに持ってきて提案する。


 「やめとく。なんか直感的に怖い。」


 「……残念。」


 一体なにが残念なのか皆目見当がつかないがその無機質な瞳と表情では本当に残念がっているのか冗談で言ったのか分かりませんよ?

 

 僅かな時間だが静城と一緒に行動して分かったことは結構表情が変わることだ。その容姿と口数の少なさから第一印象はとても静かで孤高というものだった。

 確かに静かなのは静かなのだがその表情はある意味口より喋る。それは孤高とは言い難く、柔らかな雰囲気を出す。今も口数は少ないもののその表情には笑みを浮かべていて、なんとも楽しそうな印象を受ける。

 やはり友達は少ないのだろうか……。


 「今何か考えた?」


 「イエナニモ」


 とかなんとか考えてたらいきなり静城が初めて会った時のような冷たい声で聞いてきて俺の心臓は凍りかけた。

 女子ってこういうとこあるから怖いナ。……やめよう。


 「………そう。私こっちだから。」


 「あ、そうか。」

 

 そういって静城は自分の帰路へ歩を進める。体感では結構早かったのだが距離的には結構歩いていたらしい。やはり一人で歩くのと二人で歩くことの違いか。

 おいそこボッチとか言うな。教室での俺を見ただろ?人気者じゃねえの。え?違うって?言うな。


 「じゃあ、また。」


 静城が歩を進めて二~三歩のところで振り返り言った。


 「ああ、またな。」


 その顔には柔らかい笑みを浮かべていて実にリラックスしている様子だった。

 それは絵画から飛び出したかのような錯覚を覚えるほどに芸術的であり、神秘的であった。

 それから静城が帰路についたことを横目で確認し俺も歩を進める。


 「昨日はあんな打算で近づいたってのに、今はあいつを心配してるとか本人にばれたら恥ずかしくなりそうだな。中二病患者かよ・・・」


 微笑を浮かべながら独り呟く。端からみれば完全におかしな人だが今見る限り人通りは少なく俺の呟きも小さいので聞こえていないだろう。




 俺も情が湧きやすい。



 その後、偶然紅葉に静城との下校を見られ問い詰められたがそれはまた別の話。

 

 

こんなにも遅くなってしまってすいませんでした。

本当なら8月くらいに投稿したかったんですが軽く詰まってしまったりリアルの都合だったりで書けない日が続いた結果こうなりました。

次はもしかしたらもっと間があいてしまうかもしれませんのでその辺の覚悟をば。

趣味で書いてるようなものなので投稿ペースに関しては目を逸らしてくださいお願いします。

気づいたことがあればどうぞコメントください。 

2018/8/13、少し気になる所を修正

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