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ネタツイから勢いだけで書いたタイムリープもの

作者: はむ
掲載日:2017/06/12

※原案は下記ツイートです。

https://twitter.com/tatamin_ttmn/status/874223376318971905

 東京五輪が目前に迫った2020年7月12日。


 僕は飛んでいた。


 飛んでいたと言っても、別に羽が生えて空を飛んでいるわけではなく、定期テストの帰りに、不幸にも黒塗りの高級車に追突されてしまったのだ。

 死の直前に走馬燈のように世界がスローに見えるとは聞いたことがあるけども、まさかこんなにゆっくりだとは思わなかった。


 そして地面に叩きつけられる瞬間、怖くなった僕は目をつぶった。







「首相は説明責任を果たしていませんっ!」

「総理! 総理!」


 ……何故、国会?

 恐る恐る目を開くと、僕の前には朝食の乗った食卓があった。


「……は?」


 台所の端っこに置かれた4K非対応の旧型液晶テレビからは、毎日同じようなコトばかり垂れ流しているクソつまらないニュース映像が流れていた。

 制服のシャツをめくって、車にぶつかられた場所を見てみたけど、何ともない。

 地面に叩きつけられたはずなのに怪我ひとつしていない。


「???」


 首を傾げていると、妹がジト目でコチラを見ていた。


「何ヘンな動きしてんの? ただでさえキモいのに、それが悪化とかマジ勘弁してほしいんだけど」


 いつもなら文句の一つでも言いながら妹を睨むところだが、今はそれどころではない。

 全く状況が理解できない。


「……ちぇっ」


 僕から相手にしてもらえなかった妹は、つまらなそうにランドセルを背負って玄関を出て行ってしまったので、僕もさっさと登校することにした。


 腑に落ちないまま学校へ向かっているものの、何となくいつもと雰囲気が違う気がする。

 言葉に表せないのだが、通行人ひとりひとりの表情……というか、何かが違うのだ。

 何かとは何か? と言われても、やっぱり分からないのだけど。


 そんなコトを考えながら徒歩8分、僕は学校へ到着した。

 さすが定期テスト直前だけあって、悪友連中は必死に教科書の試験範囲を凝視している。


「お前らー、そろそろ席に着け~」


 教師が入ってきて黒板に書いた文字は……


『一限目 数学』


 そんなバカな!?

 だって数学テストは今朝、終わっ……。

 そこまで思い出した瞬間、今までぼんやりしていた思考が急にシャープになり、頭が冴え始めた。


 間違いなく、僕は今日の一限目に数学テストを受けたのだ。

 二限目は物理で、三限目は現代文。

 そして、一日目のテストを終えた帰り道に……交通事故に遭ったはずなのだ。


 だけど実際に僕は今「二度目の一限目の数学テスト」を受けている。


「まさか……死に……戻り?」


 去年ハマってウェブ版を全部読んだにも関わらず原作本まで全部揃えてしまったアレの主人公のような能力が、僕にも……?

 思わず身震いしながらテスト問題を見た。


問1

x+y = 3

2x+5y = 9

x( ) y( )


 なんで今更、連立方程式っ!?

 僕がさっき受けていたテストでは問1は三角関数だったはずなのに、いきなり中学レベルの問題って……。

 問2以降も明らかに内容が異なっており、逆に懐かしすぎて公式を思い出すのに苦労してしまった。


 訳が分からないまま問題を解き、1日目のテストが終わった。



◇◇



「いやー、今日のテストはマジでムズかったなー!」


「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」


 僕のツッコミに対して、悪友がいぶかしげにコチラを見た。


「何だよ、いつもならお前も死んだ魚の目をしながら落ち込んでるくせに、今回はヤマが当たったのか」


「いや、連立方程式と一次関数なんざ、懐かしすぎて思い出す方がムズいよ」


「何言ってんだ、先月習ったばっかじゃねーか」


 ……なんですと?


「いやいや、中学で……」


「こんなクソ難しい問題、中学で出されてたら俺ら高校受からねーべww」


 ダメだ、まるで会話にならない……。



◇◇



 何だか疲れてしまったので、寄り道せずに家に帰ることにした。

 ただ、黒塗りの高級車にまた衝突されてはたまらないので、学校の裏門から商店街を抜けるルートを選び、ひたすら車の通らない裏道だけを選び……


 イエロー&グリーンの変なカラーリングのスケボーに乗った少年に衝突された僕は、再び空を飛んだ。







「首相は説明責任を果たしていませんっ!」

「総理! 総理!」


 また同じ朝だ……。

 台所の端っこに置かれた4K非対応の旧型液晶テレビからは、やっぱりクソつまらないニュース映像が流れていた。

 制服のシャツをめくって、少年にぶつかられた場所を見てみたけど、何ともない。


「………」


 突然シャツを脱ぎ始めた僕を見て、妹が変な顔をしていた。


「にーちゃん、何やってんの?」


「……いや、ちょっと、ね」


 僕をいぶかしげに見た後、妹は何事も無かったかのように手提げバッグを持って玄関を出て行ったので、僕もさっさと登校することにした。


 さっきに比べて、さらに周りの雰囲気が違う気がする。

 通行人ひとりひとりの歩き方や口調が、何だかおかしい。

 バス停にいるおじさんが、傘をスイングしながら「チャーシューメーン!」などと叫んでいるにも関わらず、周りの人が何事も無かったかのようにスルーしているのだ。


 その姿を横目に見ながら徒歩8分、僕は学校へ到着した。

 やっぱり悪友連中は教科書とにらめっこをしているが、その表紙には懐かしすぎる文字が書かれていた。

 まさか……!!


「お前らー、そろそろ席に着け~」


 教師が入ってきて黒板に書いた文字は……


『一時間目 算数』


 算数! 算数ですよっ!?

 というか一時間目って、何それ!?

 ツッコミどころだらけで困惑する僕の前に問題用紙が配られてきた。


問1

3時間で120km走る自動車の平均時速は何kmでしょう。

答え____


「アイエエエ!?」


 もはや突っ込む気も失せるほどの学力レベルの低下に、テスト中に叫んでしまった。


「おいおい、難しいからって叫ぶなよw」


 周りの連中が爆笑しているが、コレは洒落にならない。

 つまり「死に戻りするごとに世界がバカになっている」のだ。

 そして今、僕の頭に浮かんでいるのは、あの某ロボットの名台詞。


『日本じゅうがきみのレベルに落ちたら、この世のおわりだぞ!!』


 このまま死に戻りを繰り返すとマズイことになる!

 僕はさっさと問題を解くと、帰り道に死なないパターンを模索し始めた。



◇◇



「いやー、今日のテストはマジでムズかったなー!」


「たぶん100点だわ」


「すげーな! このレベルで100点とかマジ天才じゃねっ!?」


 悪友の会話を冷静にスルーしつつ、僕はスマホで念入りにルートを考える。

 校門からの通常ルートはアウト。

 裏門からの商店街ルートはアウト。


 だったら……!



「なんで野郎と2ケツしなきゃならねーんだよ……」


 というわけで、悪友の自転車の後ろに乗せてもらうことにした。


「まあまあ、うまく行ったらアイスおごってやるからさ」


「何がうまく行ったらだよ、意味わかんねーよっ!」


 自転車はスピーディに商店街を抜け、ひたすら坂道を下る。

 この先には遮断機があるのだけど……。


 スコッスコッ


 悪友が何だか必死にブレーキを握ったり離したりしているが、全くスピードが落ちない。

 まさか……


「やべえ! ブレーキ効かねえっ!!」


 このパターンですか!

 アレは7月13日だっただろっ!!?

 心の中でツッコミながら足で強引にブレーキを掛けようとしたが、地面に足を付けた瞬間、靴が脱げて飛んでいった。


「あー…、そこまで完全再現しなくても良いのに……」


 そこで意識が途切れた。







「首相は説明責任を果たしていませんっ!」

「総理! 総理!」


 なんで世界がバカになってんのに、ニュースの内容がずっと同じなんだ……。

 呆れながらテレビを見ていると、妹がやってきた。


「なんだよ?」


「にーちゃん、大好き!」


 ……この世界はアリかもしれない。

 僕に敬愛の言葉を投げかけつつ、妹は笑顔で"てさげぶくろ"を持って玄関を出て行ったので、僕もさっさと登校することにした。


 世界の雰囲気は、もはやカオスとしか言いようがない。

 もしも赤塚先生が御存命であればきっと喜んでスケッチしたであろう奇天烈きてれつな空間がそこにあった。


 ちょっと早足に徒歩6分、僕は学校へ到着した。

 悪友連中の眺めている教科書には「さんすう」と書かれていて……いや、もう何も言うまい。

 テスト問題は恐らく四則演算……いや、数字の書き取りかもしれない。

 何故かちょっとワクワクしながら僕は「とうあんようし」を待った。



◇◇



 「さんすう、りか、こくご」の三教科のテストを終えた僕は、真っ直ぐに保健室へ向かった。


「ちょっと気分が悪いので休ませてください」


「どうぞ、ここはほけんしつです」


 まるでブームくんのような喋り方をする村人……じゃなくて保健の先生の許可を得て、僕は保健室で眠りについた。







 夜になっても迎えが来なかったけど、気にせず僕は目をつぶった。







 そして朝がやってきた!

 前日の夜から何も食べていないのでかなり空腹だけど、そのまま僕は教室へ向かった。


「おはようー」


 教室に入ると、悪友連中が必死に教科書の試験範囲を凝視していた。

 その教科書の表紙に書かれている文字を見て、僕の目は一気に覚めた。


「お前らー、そろそろ席に着け~」


 教師が入ってきて黒板に書いた文字は…


『一限目 世界史』


 その文字を見た瞬間、涙が溢れてきた。


「うっうぅ……」


 思わず嗚咽を漏らした僕に、周りの皆が心配そうに駆け寄ってきた。


「どうしたの?」


「大丈夫かオイっ!?」


 クラスメイト達が僕を心配してくれる姿を見て、僕は嬉しくて袖で涙を拭った。


「ありがとう、大丈夫だよ。ありがとう」





 そして僕が窓から空を見上げると……





 そこにあったのは……




 航空機の機首だった。




「ははは、わろす」







「首相は説明責任を果たしていませんっ!」

「総理! 総理!」


- THE END -

この物語には「一カ所だけ絶対に学校モノとしてはありえない設定」が含まれています。

分かった方は感想欄に解答を書いてくださいましまし。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは。拝読しました。赤塚先生が興味を持ったであろう世界の描写が欲しかったです~!  ほかには、なぜラストで世界の知能レベルがまともに戻ったのでしょうか?  高校で算数やるレベルで…
[良い点] 世界がどんどんバカになっていくという設定が面白かったです。某ロボットの名台詞などを入れるパロディのセンスも良かったです。 [一言] 某ロボットの名台詞って、あまりに辛辣だなあと笑ってたん…
[一言] 訂正します。2020年7月12日は日曜なのに定期テストをしていることですか?
2017/06/13 20:28 退会済み
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