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Galactic shiny shiny star   作者: 沢城据太郎
3/11

絶対なる勝利の象徴とジャンケンの親和性

 近年、ギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターとジャンケンの親和性の高さが注目されている。ギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スター使用時にかなり高い確率で毛細炸裂を発生させる方法の一つがジャンケンなのだ。

特別な指の形を組む点、そして純粋に勝者を明確にするために行われる点で両者の潜在的な関わりの深さが半世紀以上前から注目されており、ゲーム中にギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを取り入れる方法が検討されていた。 初期の頃(戦後間もなくと言われている)は形の似た『チョキ』をギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターに置き換えて行われていたらしいが、そうすると毛細炸裂が発生した際の体力消費で肉体に深いダメージを与えてしまう可能性があるので必然的にチョキ(ギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スター)が出し辛くなってしまいパーしか出せないゲームになってしまう。パーのあいこで様子を見つつ隙を見計らって決死のチョキを出し、そのチョキを出されるタイミングを読んでグーでカウンターする、という様なジャンケンとは違う異次元の駆け引きが要求される別のエキサイトなゲームと化し、それはそれで面白いとする考え方もあったが、グー・チョキ・パー三竦みの大原則が完全に破綻している事から定着する事無く廃れていった。

 次に考え出されたのが、グー・チョキ・パーに加えその三つに打ち勝てる四つ目のギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを出しても良いとするルール。言うまでも無くのギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを出し続けていれば確実に勝ちかあいこになるのだが(双方がギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを出した場合はあいこ扱い)、毛細炸裂による体力消費でそうもいかない。必然的にギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを出すことが出来る回数は限られ、対戦相手がどのタイミングでギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを繰り出してくるのかを予測しながら出す型を決めなければならず、ジャンケンの基本ルールを崩す事無くまた違った駆け引きを愉しむことが出来る。ただこのルールの最大の問題点は、ギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターを最低一回は出す事が出来る者限定のルールーだという点だ。ギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターを継続して出し続けるためには肉体鍛錬が必要なのは当然だが、一回出すだけでも身体の弱い者だとそのまま失神したり最悪の場合死亡する場合さえある。慣例、というより安全策としてギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターを出して勝ったとしても立ち上がって再度ジャンケンを継続できない状態であれば勝利とは見做されない事になっている。普通の人間にはスタートラインにすら立てないルールになってしまうのだ。

 そこで考え出された三つ目の方法、ギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターが使用できるジャンケンで最も一般的に利用されているルールは、ゲームの『親』を一人決めてその人物が出す型に負ければ脱落させて最後まで残った者を勝者とする『勝ち抜き戦』だ。親が出す型はグー・チョキ・パーの三つだけでギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターは出してはいけない事になっている。各人はギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターを出す相手と直接対決する必要が無いので、ギャラクティック・シャイニィ・シュイニィ・スターを出せない者にも(アドバンテージ差は大きいけれども)勝つチャンスは残されているのだ。

 『フール・オン・ザ・ヒル』の店長・石崎祐介が余ったポスターを誰にプレゼントするかを決める際にとった方法もこの勝ち抜きジャンケンだ。勝利者を一人、或いは少数だけ決定する場合、各々が二人組みでジャンケンをするよりも圧倒的に場が盛り上がる。それなりに多くの人数が注目する中で勝者を決めるシチュエーションがギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターの持つ力をより強く確実に発揮させる恰好の状況のため、今となってはギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターでジャンケンと言われればほぼ真っ先にこの『勝ち抜き戦』が連想される。

 ジャンケンにギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを用いるルールの注目度に反してそれでトップを争う大会というものが行われた例はあまり無い。いくつか理由があるが一番大きい理由はやはり安全性の問題だろう。ゲームの性質上参加者の健康面・安全面には十分に注意されはしても、究極的には自身のコンディションを一番把握している当人達の自己判断・自己責任になる。その手の大会で被った肉体的なダメージは参加者自身が処理するべきリスクでそういった旨の誓約書を書かせるのが通例となっているが(本大会で被った被害は大会主催者側は一切責任を負いません云々というアレ)、同意の上なら何をやっても許させるかと言えばそういう訳にもいかず、危険と自己責任の問題でしばしば各方面で議論される。特に近年には、大学生がサークルの後輩にギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを強要する事件が社会問題になった事もあり(この手の『大学生の引き起こす社会問題』は未成年の飲酒やら麻の栽培の様な話同様昔からその存在が認識されていたが、ひとたび大きな事件が発覚すると隠れていた無数の小規模な事案も瞬間的にマスコミで連続して大きく取り上げられるようになる)、人前でギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを行うということ自体が何となく後ろめたい行為として移ってしまう時期があった。各国でもその使用を規制しようとする動きがごく稀に見られ、ジャンケンとギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを巡る状況は決して明るいものだとは言えない。しかしもちろんそれはギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターの持つ抗えないほどの強烈な魅力の裏返しで、厳しい風当たり中で、勝利に飢える数多の勝負者デュエリスト達は己が牙を磨き、その業を発揮する機会を窺っているのだ。


 とにもかくにも、『フール・オン・ザ・ヒル』主催のゲーム大会で、店長・石崎祐介の提案により(勿論冗談ではあったが)ギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを組み込んだルールでのジャンケン大会が行われかけたという事実が無自覚な善人の手によりインターネットという荒野の真ん中に解き放たれてしまった。

 前述の通りギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スター、そしてそれを利用したジャンケンは注目度の高さに反して安全性等の問題から世間の表舞台にはその名が浮かび上がる事は稀。それ故にギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターの勝利の顕在に魅了された者やただ単にギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを巡る事件や現象におかしみを見出す物好き達は日夜ネット上でその情報を探し、真贋・玉石問わず吟味され議論されている。

 『フール・オン・ザ・ヒル』で行われたゲーム大会について書かれたプレイヤーのブログも当然彼らの目に留まったはずだ。しかし本来なら、この時点でこのブログを読んだ者ならばただの一店員の悪ふざけの発言として切って捨てられて終わるだけの話なのだ。それが何故かあの八十人もの猛者が集う第二回大会へと繋がった。

 『フール・オン・ザ・ヒル』の店長・石崎祐介とギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターを繋ぐ細い糸、僅かな接点について初めて言及された某掲示板サイト上の書き込みがどういった経緯で書き込まれたのかは不明である。ゲーム大会での石崎祐介の一言とその本人の素性を知る内部の人間が面白半分で書いた可能性もある。

 ――これは単なる想像なのだが、ネットの掲示板に書き込んだ人物が『あの事実』にたどり着いたのはただの偶然ではなく、ギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターに強い羨望を持つが故に見出すことが出来た執念の結実なのではないかと思う。一応、『フール・オン・ザ・ヒル』の問題のゲーム大会を紹介したブログには開催した店舗のホームページへリンクできるようになっているし、そのリンク先には『フール・オン・ザ・ヒル』の店長の名が実名で掲載されている。ヒントは出ている。しかしたった一言の冗談から『あの人物』の存在を数日という短期間で手繰り寄せる諜報員さながらの情報分析力と執着心は驚きを禁じ得ない。 果たしてイチ店長の冗談から、その言葉の主を調べてみようと思う物好きはそれ程多いものなのだろうか? 

 ともかくネット上の闘争と勝利に飢えた獣たちは『石崎』の姓に出会ってしまった。『石崎』という名字はギャラクティック・シャイニィ・シャイニィ・スターに絡め捕られた者達には未だに忘れ得ぬあの人物をまず連想させる。

 そう、石崎祐介は『あの』石崎尽一郎(じんいちろう)の甥なのだ。

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