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第八話 クロックアップ

月を見ながら、缶ビールを飲む。

何から何まで、感慨深い。


このまま、穏やかな時間を過ごして逝けるならそれもいいかもしれない。


月灯りに導かれるように、散歩に出る。

街灯もまばらな道だが、今夜は月の明るさだけでも足元が十分見える。



残るは58時間、どこにでもある平和な日常とすれ違いながら河川敷にたどり着く。

人気のない土手に座り、月を見上げる。


「これが見納めかと思うと、感慨深いな。」


すると、何かもめているような声が聞こえる。・・・しかし、何かおかしい。

たしかに聞こえる。だが、声など聞こえないような遠いところから聞こえるような気がする。


『我と同調(シンクロ)した影響だ。』


頭の中に竜の声がする。

「どういうことだ?」

『我と精神を連結(リンク)した事により、お前の感覚も我のそれに近くなったのだ。』

「それじゃ、この声は・・・。」

『そうだな、ここから1500メートルのところに男が3人と女が1人。もめているようだな。』

「参ったな。・・・どうするか。」

『普段なら、見て見ぬフリであろうな。』

「どうせ死ぬなら、少しは役に立つか。」


耳を澄ます、おおよその方角と距離が知覚できる。


『行くか?念じろ・・・そこに早くたどり着く事をイメージするのだ。』


こんなに真剣に走るのは、久しぶりだ。・・・しかし、体が軽い。

周りの景色がスローモーションのようだ。段々、色を失っていく。

まるで、時間が止まった世界を自分だけ走っているようだ。


『着いたぞ。』

竜が得意気に言った。


「・・・どうなっている?」



目の前には男が3人、1人の女性を押し倒している。

男たちは状況が把握できずに困惑していた。

いきなり現れた(たかし)の存在を認識しきれない。


「まるで漫画だな。」

苦笑いをしながら、男達の注意を引き付ける。


ここは普段、人気のない場所だ。だからこそ、拉致した女をここに連れ込んだ。

これからというタイミングで現れたこいつは一体なんだ?

見かけは決して強そうではない、だが何か言い知れぬ不気味さを持っている。


三人は全員で天に向かってきた。

逃げるように目で合図をしつつ、逃げて追いかけさせる。


女が逃げていくのを確認しながら、自分の中に浮かんだ仮説を実証することにする。

・・・イメージだ。こいつらよりも早く動く。

脳に軽い電流が走るような感覚の直後、目の前の世界から色がなくなる。

男達の動きが止まる、いや仮説が正しいなら止まっているように見えているのだ。


やはり、そうか。俺は今、こいつらの知覚できない時間軸で動いている。

今、自分は常人をはるかに超える感覚と身体能力を持っているのだ。

本気で殴れば、相手を破壊しかねない。加減をしつつ、急所をついて感覚を解く。


色を取り戻す世界。男達は、訳もわからず倒れていく。

足早に現場を後にしようと振り返ったその時、背中に熱い感覚が。


「・・・加減し過ぎたかな?」


男たちの1人が背中にナイフを突き立てている。


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